認知機能
ガイドラインにおける記載
各ガイドラインでは、薬剤のリスクについて、どのような記載がされているのか
詳細は各ガイドラインを参照
認知症疾患診療ガイドライン2017
ガイドラインの中で、認知機能低下を誘発しやすい薬剤のカテゴリーと薬剤リストが示されている。
- 認知機能低下を誘発しやすい薬剤のカテゴリー
- 向精神薬
- 抗精神病薬
- 催眠薬
- 鎮静薬
- 抗うつ薬
- 向精神薬以外の薬剤
- 抗パーキンソン病薬
- 抗てんかん薬
- 循環器病薬(ジギタリス、利尿薬、一部の降圧薬など)
- 鎮痛薬(オピオイド、NSAIDs)
- 副腎皮質ステロイド
- 抗菌薬
- 抗ウイルス薬
- 抗腫瘍薬
- 泌尿器病薬(過活動膀胱治療薬)
- 消化器病薬(H2受容体拮抗薬、抗コリン薬)
- 抗喘息薬
- 抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)
青文字は、GLには掲載されているが、「在宅医療で遭遇しやすい薬剤起因性老年症候群の原因薬の一覧」には含まれていない薬剤
「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」
「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」の中で、認知機能低下を引き起こす可能性のある薬剤一覧には、以下の薬剤が挙げられている。
- 降圧薬(中枢性降圧薬)
- 降圧薬(α遮断薬)
- 降圧薬(β遮断薬)
- 睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン作動薬)
- パーキンソン病治療薬(抗コリン薬)
- 抗うつ薬(三環系)
- てんかん治療薬
- 抗精神病薬(フェノチアジン系)
- 抗ヒスタミン薬(第一世代のみ)
- ヒスタミン H2 受容体拮抗薬
- 「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」
「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」の中で高齢の患者に使用すると認知機能障害(せん妄・認知機能低下・認知症)をきたす可能性のある薬物として挙げられている薬剤には、以下のものがある。
- 抗コリン作用を持つ薬物[フェノチアジン系などの抗精神病薬、三環系抗うつ薬、パーキンソン病治療薬(抗コリン薬)、第一世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、頻尿治療薬など]:減量または中止を検討(エビデンスの質:中、推奨度:強)
- 向精神薬(抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬、抗うつ薬):抗コリン作用と同様、認知機能障害と関連する可能性がある(エビデンスの質:低、推奨度:弱)
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬、オキシブチニン:せん妄・認知機能低下・認知症発症に関連することが強く示されている(エビデンスの質:高、推奨度:強)
この中で特に注意すべき薬剤は、抗コリン作用をもつ薬物
「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」
「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」の中で高齢の患者に使用すると認知機能障害(せん妄・認知機能低下・認知症)をきたす可能性のある薬物として挙げられている薬剤には、以下のものがある。
- 抗コリン作用を持つ薬物[フェノチアジン系などの抗精神病薬、三環系抗うつ薬、パーキンソン病治療薬(抗コリン薬)、第一世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、頻尿治療薬など]:減量または中止を検討(エビデンスの質:中、推奨度:強)
- 向精神薬(抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬、抗うつ薬):抗コリン作用と同様、認知機能障害と関連する可能性がある(エビデンスの質:低、推奨度:弱)
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬、オキシブチニン:せん妄・認知機能低下・認知症発症に関連することが強く示されている(エビデンスの質:高、推奨度:強)
この中で特に注意すべき薬剤は、抗コリン作用をもつ薬物
薬効群ごと
降圧薬
CQ. 降圧薬治療は認知機能低下リスクがあるのか?
A. 降圧薬治療と認知機能低下リスクについては、誤解されていることが多いです。
現在では、高血圧がアルツハイマー型認知症のリスクであるため、降圧薬治療をすることによって、認知症を予防するメリットの方が高いと考えられています。
ただし、高齢者においては、他の副作用が出現する可能性を考慮して、使用する降圧薬の種類・用量を考慮した上で使用されています。
「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」
- 降圧薬治療による認知機能低下リスクについて、記載なし
高血圧と認知症
- 高血圧は脳血管性認知症のリスク因子であるほか、アルツハイマー病も高血圧との関連性が報告されている(高血圧ガイドライン)
- 降圧薬治療と認知機能の関連について
- 降圧薬治療によって、認知機能低下を抑える可能性が示唆されている
- メタアナリシスによって、降圧薬使用者は、アルツハイマー病リスクが6%低下していた。この効果は、特にARBでは顕著であり、22%低下していた。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36281676/
- 一般の高齢者を対象としたコホート研究(オランダ、133,355人)において、1988年から2022年の期間において、133,355人の降圧薬使用者のうち、4.4%が認知症を発症した中で、ACE阻害薬と比較して、ARB(HR=0.86)、CCB(HR=0.77)、サイアザイド利尿薬(HR=0.65)が認知症リスクを有意に低減させた。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38800111/
- 高齢者には注意が必要な降圧薬
- 中枢性降圧薬:
- α遮断薬:高齢者では起立性低血圧に特に注意
- β遮断薬:高齢者において禁忌や使用上の注意が必要な場合が多いため、慎重に投与
- 呼吸器疾患の悪化に注意
抗てんかん薬
CQ. 抗てんかん薬治療には認知機能低下リスクがあるのか?
A. てんかんは、神経細胞が過剰に興奮して、異常放電しているため、てんかん発作をきたす病態です。抗てんかん薬は、神経細胞の過剰な興奮を抑制することで、てんかん発作を押さえる薬です。
そのため、抗てんかん薬は中枢神経を抑制するため、眠気やふらつきの副作用が出現する可能性があります。この作用から、認知機能に影響する可能性がある薬剤もあります。
対策として、副作用を最小限に抑えるため、飲み始めは少量から徐々に増量していき、効果のでる最小限の量で治療します。
「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」
- ガイドには、てんかん治療薬について、認知機能低下リスクがある薬剤として以下のものが挙げられている。
てんかん診療ガイドライン2018
CQ3-6 内科疾患の合併時の選択薬はなにか ③・・・フェノバルビタール、ゾニサミド、カルバマゼピン、トピラマートでの認知機能の低下・・・が報告されている (該当部分のみ抜粋) てんかん診療ガイドライン2018
原因薬剤
「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」に記載されている原因薬剤一覧