オレキシン受容体拮抗薬
オレキシン受容体拮抗薬の特徴
メリット
- 依存性のリスクが極めて低い
- 筋弛緩作用が少なく転倒のリスクが少ない
デメリット
- 深睡眠が得られるものではない
- 悪夢・・・オレキシン1, 2受容体はレム睡眠を抑制するため、オレキシン1, 2受容体を強く阻害するとレム睡眠が増加し、夢が多くなる
- ベルソムラは他の睡眠剤と比較し悪夢の副作用が多い(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31702558/)
- デエビゴは、t1/2 が長いため、持ち越し効果に注意
スボレキサント | レンボレキサント | ダリドレキサント塩酸塩 Daridorexant | ボルノレキサント水和物 vornorexant/TS-142 | |
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ベルソムラ錠 | デエビゴ錠 | クービビック錠 Quviviq | ||
PMDA | PMDA | PMDA | ||
効能又は効果 | 不眠症 | 不眠症 | 不眠症 | |
用法及び用量 | 成人)1日1回20mg 高齢者)1日1回15mg 就寝直前に経口投与 | 1日1回5mgを就寝直前 (上限:1日1回10mg) | 成人)1日1回50mgを就寝直前 1日1回25mgの調節可 | |
9. 特定の背景を有する患者に関する注意 | ||||
ナルコレプシー又はカタプレキシー | 症状悪化の可能性 | 症状悪化の可能性 | 症状悪化の可能性 | |
呼吸機能障害 | 重度の呼吸機能障害を有する患者:臨床試験未実施 | 中等度及び重度の呼吸機能障害を有する患者:安全性は確立していない | 中等度及び重度の呼吸機能障害を有する患者:臨床試験未実施 閉塞性睡眠時無呼吸及び慢性閉塞性肺疾患患者:長期投与の経験なし | |
脳に器質的障害のある患者 | 脳に器質的障害のある患者:作用が強く出るおそれ | |||
腎機能 | 重度の腎機能障害のある患者:血中濃度↑ | |||
肝機能 | 重度の肝機能障害のある患者:血中濃度↑ | 重度の肝機能障害:禁忌 軽度及び中等度の肝機能障害のある患者:血中濃度↑ | 重度の肝機能障害:禁忌・血中濃度↑の恐れ 中等度の肝機能障害のある患者:血中濃度↑の恐れ | |
妊婦 | 有益性 | 有益性 | 有益性 | |
授乳婦 | 有益性 | 有益性 | 有益性 | |
小児 | 小児等を対象とした臨床試験は実施していない | 小児等を対象とした臨床試験は実施していない | 小児等を対象とした臨床試験は実施していない | |
高齢者 | 慎重 | 状態を確認しながら | ||
相互作用 | CYP3Aによって代謝される 弱いP糖蛋白(腸管)への阻害作用 併用禁忌あり | CYP3Aによって代謝される CYP3A阻害併用時:減量 | CYP3Aによって代謝される 併用禁忌あり | |
薬効薬理 | Ki ・OX1:0.55nM ・OX2:0.35nM | Ki ・OX1:8.1nM ・OX2:0.48nM | Ki ・OX1:0.47nM ・OX2:0.97nM | Ki ・OX1:1.05nM ・OX2:1.27nM |
PK | 20mg、単回 Tmax:1.0 (1.0-4.0) t1/2:12.5±2.6hr | 10mg、14日間 Tmax:1.5(0.5-2.0) t1/2:47.4hr | 50mg、単回 Tmax:1.42hr t1/2:6.92hr 食事の影響で血中濃度持続 | 消失半減期が1.32-3.25時間 |
P:オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント、レンボレキサント、ダリドレキサント)
調査対象:FAERS データベース(2014年ー2023年)
薬剤に起因すると考えられる副作用は、男性よりも、女性の方が高頻度で現れる可能性 (57.27% vs. 33.04%)
相互作用
オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサント(ベルソムラ (R))、レンボレキサント(デエビゴ (R))、ダリドレキサント(クービビック (R))は、いずれも、主にCYP3A4で代謝されます。そのため、CYP3A4 阻害作用を持つ薬剤と併用すると血中濃度が上昇する可能性があります。
添付文書の記載を見ると、スボレキサントおよびダリドレキサントは、CYP3A4 阻害作用のある薬剤は併用禁忌とされている一方、レンボレキサントは、「CYP3A を中程度または強力に阻害する薬剤との併用は、患者の状態を慎重に観察した上で投与の可否を判断すること」、さらに、「併用する場合は、1日1回2.5mgとすること」と、半量に減量することを推奨しています。
この相互作用を定量的に評価するため、CR-IR 法に基づいて、寄与度を算出しました。
計算には、添付文書「16.7薬物相互作用」に記載されている薬物動態の変化をもとに算出しました。併用薬は、それぞれ右に記載しています。
その結果、クリアランスへの寄与 CR は、スボレキサント 0.64、レンボレキサント 0.77、ダリドレキサント 0.71 と、レンボレキサントが最も、寄与度は高いことがわかりました。
CR-IR 法に基づいて寄与度を算出
CR、IR、IC 値をもとに、併用した時に AUC はどの程度変化を推算しました。
強い CYP3A4 阻害薬と併用すると3〜4倍程度に血中濃度が上昇する可能性があります。レンボレキサントは通常用量1回5mgですが、1日1回10mgを上限として、増量することも認められている薬剤です。
レンボレキサントを強い CYP3A4 阻害剤と併用した時の血中濃度
- ① レンボレキサント 1回10mg
- ② レンボレキサント 1回2.5mg +強い CYP3A4 阻害剤
- ③ レンボレキサント 1回10mg
- ④ レンボレキサント 1回2.5mg +中程度 CYP3A4 阻害剤
上記のように、上から高濃度、下にかけて低濃度、という順に血中濃度推移をとると考えられます。