めまい・転倒
副作用の機序
めまい・転倒の原因となる可能性がある薬剤について
中枢神経抑制作用があるため
運動機能に影響するため
血液循環に影響するため
筋肉を弛緩させる作用があるため
ガイドラインにおける記載
各ガイドラインでは、薬剤のリスクについて、どのような記載がされているのか
詳細は各ガイドラインを参照
「高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015」
CQ. ベンゾジアゼピン系薬剤は在宅高齢者の転倒リスクを高めるか?
A. ベンゾジアゼピン系薬剤は在宅高齢者の転倒リスクを高める。(エビデンスの質:低、推奨度:強)
CQ. 介護施設において、薬物有害事象予防のために特に注意を要する点及び薬剤は何か?
A. 介護施設では、多剤投与が高齢者に適切でない薬物の使用(PIMS)の処方及び薬物有害事象に関連する。介護施設における代表的なPIMSとしては向精神薬(抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬/睡眠薬、三環系抗うつ薬)が挙げられる。これらは、不穏・徘徊・尿失禁・転倒・便秘のリスクを増大させるため、使用を控える。 a. 定型的抗精神病薬は強い鎮静効果と抗ドパミン作用により、転倒・誤嚥のリスクが高くなるため、可能な限り使用を控える。(エビデンスの質:高、推奨度:強) 後略
CQ. 高齢者の睡眠薬治療で注意すべきことは何か?
A. ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬は、認知機能低下、転倒・骨折、日中の倦怠感などのリスクがあるので、可能な限り使用は控え、特に長時間作用型は使用すべきではない。(エビデンスの質:高、推奨度:強) 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にも、転倒・骨折のリスクが報告されており、漫然と長期投与せず、少量の使用にとどめるなど、慎重に使用する。(エビデンスの質:中、推奨度:強)
CQ. 高齢者のうつ病に対する抗うつ薬使用上の注意点は?
A. 三環系抗うつ薬は、他の薬剤に比べて抗コリン作用が強いため高齢発症のうつ病に対して、特に慎重に使用するべきである。(エビデンスの質:高、推奨度:強) SSRI も高齢者に対して転倒や消化管出血などのリスクがあり、これらのハイリスク群に対する使用には特に注意が必要である。(エビデンスの質:中、推奨度:強) スルピリドは、錐体外路症状が発現しやすいため、可能な限り使用を控えるべきである。(エビデンスの質:低、推奨度:強)
睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
【Q4】 睡眠薬はいつ服用すればよいでしょうか?
【患者向け解説】 睡眠薬の注意書きには、就寝直前に服用し、服⽤したら就床するように書かれています。睡眠薬を服⽤後に就床しないでいると、寝付くまでの間の出来事(行動や会話)の記憶がなくなることがあるからです。また、一部の睡眠薬には脱力やふらつきなどの副作用があります。睡眠薬を飲んだ後の転倒を避けるためにも、服⽤後は速やかに就床するようにしましょう。睡眠薬によっては⾷後まもなくに服⽤すると⾎中濃度度が影響を受け、効果が出にくくなることがあります。夕⾷食からある程度時間をおいて、就床直前に服用するようにしましょう。
【勧告】 睡眠薬の薬効を最⼤にする服⽤時刻に関する臨床データはないが、副作用と⾷事摂取の影響をできるだけ回避するためにも、⼣食からある程度度時間をおき、就床時刻の直前に服用し、服用したら速やかに就床することが望ましいと考えられる。【推奨グレード C1】
【Q12】 認知症の不眠や昼夜逆転に睡眠薬は効果があるでしょうか?
【患者向け解説】 認知症では中途覚醒や早朝覚醒など不眠症状がしばしばみられるほか、午睡が増え、昼夜逆転に陥るなど睡眠リズムが乱れます。また、不眠に伴って夜間徘徊やせん妄(意識混濁による興奮)な どの異常行動もみられます。しかし、認知症の不眠や異常行動に対して十分に有効で、かつ安全な薬物療療法はありません。睡眠薬や抗精神病薬などの催眠鎮静系向精神薬の効果は限定的で、⻑期間服用すると、むしろ過鎮静のため午睡が増加することがあります。また、転倒や骨折、健忘などの副作用の危険性が高まるため⾼⽤量・多剤併⽤や長期服用は避けるべきです。認知症でみられる睡眠障害は、不眠のほかに、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、睡眠・覚醒リズム障害、レム睡眠行動障害など多様であるため、不眠治療療イコール睡眠薬処方と安直に考えず、正しい診断を受けることが⼤事です。 【勧告】 認知症の不眠症に対する睡眠薬の有効性は確認されていない。処方する場合には転倒や認知症状の悪化などの副作用の発現に絶えず留意が必要である。また、有効性が認められても漫然と服⽤させず、症状の改善に合わせて適宜減薬もしくは休薬するなど、副作用を低減させるよう心がけるべきである。【推奨グレード C2】
【Q19】 高齢者の不眠症にも睡眠薬は効果があるでしょうか?
【患者向け解説】 不眠症は⾼齢者に多い病気であり、多くの⾼齢者が睡眠薬を服用されています。⾼齢者の不眠症に対する睡眠薬の治療効果を調べた臨床試験が多数あり、睡眠薬には確かに治療効果があることが明らかになっています。ただし、睡眠薬の種類によって効果に差があり、効果の比較的強い睡眠薬と弱い睡眠薬があります。 一⽅で、ご⼼配の通り、⾼齢者が睡眠薬を服⽤した時には幾つかの副作用がでやすいことが知られています。副作⽤の種類や出やすさは睡眠薬ごとに異異なります。睡眠薬の副作用については他の Q&Aもご参照ください。副作⽤の中でも特に、睡眠薬によって転倒や骨折が増加するという報告があるので注意が必要です。ただし、不眠があると逆に夜間のトイレ歩行時などに転倒する危険が高まることも明らかになっています。 このように睡眠薬にはメリットとデメリットがあります。睡眠薬を服用すべきか、どのような睡眠薬を選ぶべきか、現在服⽤中の睡眠薬を継続すべきかは不眠症状の重症度や心⾝の不調の有無で決まります。主治医とよくご相談ください。また最近ではお薬を使わない治療法も少しずつ広まっています。(Q4 を参照)。
【勧告】 高齢者の原発性不眠症に対しては⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬が推奨される。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は転倒・⾻折リスクを⾼めるため推奨されない。メラトニン受容体作動薬については転倒・⾻折リスクに関するデータが乏しく推奨に至らなかった。高齢者では睡眠薬による不眠症の改善効果のエフェクトサイズに比較して、相対的に副作用のリスクが高いため、不眠の重症度、基礎疾患の有無や⾝身体的コンディションなどを総合的に勘案して睡眠薬の処⽅の是非を決定すべきである。 【推奨グレード A】
【Q31】 睡眠薬を何種類か服用しているので副作用が⼼配です。
【患者向け解説】 現在広く用いられているベンゾジアゼピン系および⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、眠気、ふらつき、転倒、精神運動機能の低下、前⾏性健忘(睡眠薬服用後の出来事を覚えていない)、頭痛、消化器症状などの副作⽤がみられます。これらの症状は睡眠薬が体内に残っている時だけ出現し、後遺症となる副作⽤用ではありませんが、事故の原因などにもなるため注意が必要です。異なるタイプの睡眠薬であるメラトニン受容体作動薬では、ふらつきや前⾏性健忘が少ないことが知られています。一般的に、睡眠薬の多剤併⽤時には副作用のリスクも高くなります。睡眠薬は単剤使⽤が原則であり、やむを得ず 2 種類以上の睡眠薬を併用する時には副作⽤に注意する必要があります。
【勧告】 睡眠薬の多剤併用は副作⽤の頻度を高める原因となるため推奨されない。単剤治療を原則とし、やむを得ず多剤を併用する場合は、副作用の出現に注意する。【推奨グレード C2】
薬効群ごと
睡眠薬
ベンゾジアゼピン系薬剤
ベンゾジアゼピン系薬剤は、ベンゾジアゼピン受容体に作用し、催眠・鎮静作用に加え、筋弛緩作用を持つため、特に高齢者において、転倒リスクがある。
- 基本的な考え方:高齢者に対して、基本的には使用を控える。特に長時間作用型は控える。
睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
Q19高齢者の不眠症:ベンゾジアゼピン系睡眠薬は転倒・⾻折リスクを⾼めるため推奨されない。
Q31副作用:現在広く用いられているベンゾジアゼピン系および⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、眠気、ふらつき、転倒、精神運動機能の低下、前⾏性健忘(睡眠薬服用後の出来事を覚えていない)、頭痛、消化器症状などの副作⽤がみられます。
高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015
CQ. ベンゾジアゼピン系薬剤は在宅高齢者の転倒リスクを高めるか?
A. ベンゾジアゼピン系薬剤は在宅高齢者の転倒リスクを高める。(エビデンスの質:低、推奨度:強)
CQ. 高齢者の睡眠薬治療で注意すべきことは何か?
A. ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬は、認知機能低下、転倒・骨折、日中の倦怠感などのリスクがあるので、可能な限り使用は控え、特に長時間作用型は使用すべきではない。(エビデンスの質:高、推奨度:強)
非ベンゾジアゼピン系薬剤
非ベンゾジアゼピン系薬剤とは、ベンゾジアゼピン骨格を持たない薬剤で、z-drug とも呼ばれる(名前にzがつく)。ベンゾジアゼピン受容体に作用して、催眠・鎮静作用を示す。ベンゾジアゼピン受容体のうち、催眠・鎮静作用に関与するω1受容体に対する選択性が高く、主にこう不安作用や筋弛緩作用に関わるω2受容体に作用しにくいため、転倒リスクがベンゾジアゼピン系薬剤よりも低い。完全に無いわけではないので、注意は必要である。
睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
Q19高齢者の不眠症:高齢者の原発性不眠症に対しては⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬が推奨される。
Q31副作用:現在広く用いられているベンゾジアゼピン系および⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬には、眠気、ふらつき、転倒、精神運動機能の低下、前⾏性健忘(睡眠薬服用後の出来事を覚えていない)、頭痛、消化器症状などの副作⽤がみられます。
高齢者の安全な薬物治療ガイドライン2015
CQ. 高齢者の睡眠薬治療で注意すべきことは何か?
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にも、転倒・骨折のリスクが報告されており、漫然と長期投与せず、少量の使用にとどめるなど、慎重に使用する。(エビデンスの質:中、推奨度:強)
オレキシン受容体拮抗薬
脳の覚醒を促すオレキシンの作用を減弱させることで催眠作用を示す。
転倒リスクが低いため、高齢者の不眠症に対して、従来の睡眠薬より安全性が高いとされており、使用されている。
- 転倒以外の注意点
- 薬物相互作用:CYP3A4で代謝されるため、阻害薬との併用禁忌の場合がある
- 作用時間が長い:オレキシン受容体拮抗薬には、他薬効のような超短時間作用型薬剤がない。朝に薬効が残る可能性に注意して使用する。(最近販売開始されたダリドレキサントは従来の薬よりも半減期が短い)
- ベルソムラ錠:t:12.5±2.6hr
- デエビゴ錠:t:47.4hr
- クービビック錠:t:6.92hr(食事の影響で血中濃度持続するため眠前に補食する場合は影響する可能性がある)
他に、高齢者の不眠症に対して選択される薬剤に、抗うつ薬のトラゾドンがある。
メラトニン受容体作動薬
睡眠リズムを調節するメラトニンは、高齢者では分泌が減少する。メラトニン受容体を刺激することで、睡眠作用を示す。
転倒リスクが低いため、高齢者の不眠症に対して、従来の睡眠薬より安全性が高いとされており、使用されている。
睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン
Q19高齢者の不眠症:メラトニン受容体作動薬については転倒・⾻折リスクに関するデータが乏しく推奨に至らなかった。
Q31副作用:〜メラトニン受容体作動薬では、ふらつきや前⾏性健忘が少ないことが知られています。
原因薬剤
「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」に記載されている原因薬剤一覧
○ 銘柄名ごと
めまい・転倒に影響する薬剤一覧/銘柄名ごと2024/12/24 9:182024/12/24 9:19○ 一般名ごと
転倒のリスクのある薬 FRID (Fall risk index drugs)
FRID 一覧とオッズ比2024/11/19 5:382024/12/15 7:20