Sinnathamby ES, Cureus (2024) [PMID: 38435190]

Ca 拮抗薬 (CCB) による浮腫

  • 機序)CCB による血管拡張作用は、毛細血管後血管よりも、毛細血管前血管を優先的に拡張させるため、毛細血管内圧が上昇し、間質腔に漏出させる
  • 頻度)CCB 服用者の約25%が末梢性浮腫を経験
  • リスク因子)女性、肥満、高齢
    • CCB の種類
      • DHP系>非DHP系
      • 水溶性>脂溶性
    • 用量依存的:高用量の方がリスク大
    • 治療期間:長期間の方がリスク大
  • 対策:
    • CCB を低用量にする
      • ACEi や ARB 併用することで、低用量でも十分な治療効果、かつ、浮腫の軽減
      • 脂溶性CCBに変更すると、浮腫減少
      • 第二世代以降のCCBを、ACEi や ARB と併用する
        • CCB の世代
 
Title(英語・日本語)
Etiology of Drug-Induced Edema: A Review of Dihydropyridine, Thiazolidinedione, and Other Medications Causing Edema
薬剤性浮腫の原因:ジヒドロピリジン系薬剤、チアゾリジンジオン系薬剤、およびその他の浮腫を引き起こす薬剤のレビュー
Journal Name & Publication Year(雑誌名・発表年)
Cureus, 2024年2月1日発表
First and Last Authors(第一著者・最終著者)
Evan S. Sinnathamby, Giustino Varrassi
First Affiliations(第一所属)
School of Medicine, Louisiana State University Health Sciences Center (LSUHSC) New Orleans, New Orleans, USA
Abstract(要旨)
薬剤性浮腫は、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬やチアゾリジンジオン(TZD)などにより引き起こされる可能性があり、数百万人の米国人に影響を及ぼしている。DHPは毛細血管前血管の選択的拡張による静水圧上昇を、TZDはPPARγ刺激による血管透過性の上昇と体液貯留を引き起こす。他にもNSAIDs、ACE阻害薬、インスリンなど多くの薬剤が浮腫を引き起こす可能性がある。本レビューは、これらのメカニズム、臨床症状、治療および予防法を包括的にまとめている。
Background(背景)
浮腫は世界で2億人以上に影響し、心不全、糖尿病、薬剤、妊娠などが原因となる。慢性的な末梢浮腫は痛みや可動域の制限、QOL低下を引き起こす。治療は原因に応じて異なり、薬剤性浮腫に対しては原因薬剤の同定と除去が重要。
Methods(方法)
本研究は文献レビュー形式で、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬、TZD、その他の薬剤が浮腫を引き起こす病態生理学的機序を整理し、各薬剤群における浮腫の頻度、メカニズム、臨床像、管理法を比較した。
Results(結果)
  • DHP:前毛細血管の拡張により静水圧が上昇、末梢浮腫を25%の患者に誘発
  • TZD:PPARγ刺激により血管透過性、VEGF分泌、ナトリウム再吸収が増加、単剤使用で浮腫率3-5%、インスリン併用で13-16%
  • 他の薬剤(NSAIDs、ステロイド、抗精神病薬、インスリンなど)もそれぞれ異なる機序で浮腫を誘発
  • 表で薬剤毎の浮腫の機序を明示
Discussion(考察)
薬剤性浮腫は機序・重症度ともに多様であり、特にDHPとTZDによる末梢浮腫が問題となる。各薬剤の病態生理学を理解することで、副作用の予測、早期発見、適切な管理が可能となる。
Novelty compared to previous studies(既存研究との新規性)
浮腫の原因となる多種多様な薬剤を一挙に整理し、各薬剤の機序・症状・対処法を比較しながら体系的にレビューしている点が新しい。
Limitations(限界)
臨床試験の結果ではなく、文献レビューであるため、バイアスや薬剤間比較の限界がある。
Potential Applications(応用可能性)
臨床医が薬剤性浮腫を予測・診断・管理する際の実践的参考資料として活用できる。薬剤の選択や処方変更時の判断材料にもなる。