Andrade C. J Clin Psychiatry (2023) [PMID: 36724110]

PICO形式での要約

  • P(Patient/対象者): 統合失調症、認知症、その他の疾患を持ち、抗精神病薬を使用している患者
  • I(Intervention/介入): プロラクチン上昇型抗精神病薬(例: リスペリドン、ハロペリドール)
  • C(Comparison/比較): プロラクチン非上昇型抗精神病薬(例: アリピプラゾール)
  • O(Outcome/結果): 骨折、特に脆弱性骨折(骨粗鬆症関連骨折)

研究のポイント

  • 骨折リスク増加要因
    • 疾患関連要因
      • 認知症患者: 認知機能・精神運動機能の低下による転倒リスク増加
      • 統合失調症患者: 身体的不安定さ、攻撃性などによる外傷リスク増加
    • 治療関連要因
      • 抗精神病薬の副作用(鎮静、精神運動機能障害、徐脈運動、起立性低血圧)による転倒リスク増加
      • 長期的な高プロラクチン血症による骨粗鬆症リスク上昇
  • エビデンス
    • 36件の観察研究のメタ分析
      • 抗精神病薬使用者は 股関節骨折リスクおよび全骨折リスクが上昇
      • ほぼすべてのサブグループ解析で一貫した結果
    • 観察研究(交絡因子を調整)
      • 脆弱性骨折は以下の要因と関連
        • 高用量・累積用量の増加
        • 治療期間の長期化
        • プロラクチン上昇型抗精神病薬の使用
      • プロラクチン上昇型抗精神病薬を使用している患者において、アリピプラゾールの併用が骨折リスクを軽減

臨床的示唆

  1. 個別評価の重要性
      • 患者の年齢、性別、疾患、抗精神病薬の種類、服用量・期間、転倒リスク因子を考慮したリスク評価が必要
  1. 転倒・骨折予防戦略
      • プロラクチン上昇型抗精神病薬の長期使用時には
        • プロラクチン値の定期的モニタリング
        • プロラクチン低下戦略(アリピプラゾール併用など)の検討
      • 骨粗鬆症の評価と管理(必要時に治療)
      • 転倒リスク軽減(環境調整・リハビリなど)

まとめ

  • 抗精神病薬は骨折リスクを増加させる(特にプロラクチン上昇型)
  • アリピプラゾールの併用がリスク低減に寄与する可能性あり
  • 患者個別のリスク評価と、転倒・骨粗鬆症対策が必要