Broersen LH, J Clin Endocrinol Metab. (2015) [PMID: 25844620]
研究の背景:
コルチコステロイドは、様々な炎症性疾患や悪性腫瘍の治療、および臓器移植後の治療に広く使用されます。これらの薬物は、炎症反応を抑制することを目的としていますが、副作用が多く、特に副腎機能不全を引き起こす可能性が高いとされています。副腎機能不全は、コルチコステロイドの使用中止後にも発生する可能性があり、命に関わる深刻な副作用です。このため、コルチコステロイドを使用する患者には、使用中止後に副腎機能不全を検査することが推奨されます。
研究デザイン:
この研究は、コルチコステロイド使用後に副腎機能不全が発生するリスクを評価するための系統的レビューおよびメタアナリシスです。7つの電子データベースを検索し、コルチコステロイド使用後に副腎機能不全を検査した成人を対象とした原著論文を対象としました。検討対象にはランダム化比較試験、コホート研究、および横断研究が含まれましたが、ケースコントロール研究やケースシリーズは除外されました。
PICO まとめ:
- P (Patient): コルチコステロイドを使用した成人患者
- I (Intervention): コルチコステロイドの使用
- C (Comparison): なし(全ての患者がコルチコステロイドを使用)
- O (Outcome): コルチコステロイド使用後の副腎機能不全の発生率
研究結果:
全体で74件の論文、合計3753人の参加者が含まれました。投与経路別では、副腎機能不全の割合は鼻投与で4.2%(95%信頼区間 [CI], 0.5–28.9)から、関節内投与で52.2%(95% CI, 40.5–63.6)まで幅がありました。疾患別では、喘息で吸入コルチコステロイドのみを使用した場合で6.8%(95% CI, 3.8–12.0)から、血液悪性腫瘍で60.0%(95% CI, 38.0–78.6)でした。用量別では、低用量で2.4%(95% CI, 0.6–9.3)から高用量で21.5%(95% CI, 12.0–35.5)、治療期間別では1か月未満で1.4%(95% CI, 0.3–7.4)から1年以上で27.4%(95% CI, 17.7–39.8)でした。
重篤な有害事象:
重篤な有害事象についての具体的な報告はありませんでしたが、副腎機能不全自体が深刻な有害事象であり、治療中や治療後に注意深く監視する必要があります。
研究の限界:
- 各研究で使用されたコルチコステロイドの種類、基礎疾患、治療用量、治療期間、および投与経路が異なるため、結果に異質性が見られる。
- 個々の患者レベルでのリスクの層別化ができなかった。
- バイアスの高い研究が多く含まれており、これが結果に影響を与える可能性がある。
内容のまとめ:
この研究は、コルチコステロイドを使用した後に副腎機能不全がどのくらいの割合で発生するかを調査したものです。コルチコステロイドは、炎症や悪性腫瘍の治療に使われますが、長期間使用すると副腎が正常に機能しなくなるリスクがあります。様々な病気や投与方法で検討された結果、副腎機能不全のリスクは4%から52%の範囲であることがわかりました。このため、コルチコステロイドを使用する患者は、治療中止後に副腎機能不全の検査を受けることが重要です。