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前立腺肥大症治療薬

前立腺肥大症治療薬

3ステップで理解する臨床薬理

1. どんな薬?

(薬効群ごとの分類)
α₁遮断薬
前立腺や尿道の平滑筋にあるα₁受容体を遮断し、筋収縮を抑制することで尿道抵抗を低下させ、尿流を改善する。
5α還元酵素阻害薬
5α還元酵素を阻害し、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を抑制。前立腺体積を徐々に縮小させる。
PDE5阻害薬
cGMPの分解を阻害し、平滑筋を弛緩させることで前立腺・尿道周囲の血流・平滑筋トーンを改善。
抗コリン薬・β₃作動薬
  • 抗コリン薬
    • ムスカリン受容体遮断で膀胱収縮を抑制
  • β₃アドレナリン作動薬
    • 膀胱弛緩を促進、蓄尿能改善
 

2. どんな使い方

α₁遮断薬
  • 排尿困難、尿流低下、残尿感を伴う前立腺肥大症
5α還元酵素阻害薬
  • 長期的な前立腺体積縮小、症状進行抑制を目的とした前立腺肥大症
PDE5阻害薬
  • 排尿症状改善を目的とした前立腺肥大症
  • 同時に勃起不全を合併する場合の併用療法
抗コリン薬・β₃作動薬
過活動膀胱様の頻尿・切迫感が強い場合、BPH薬単独では改善不十分なことがあるため追加検討。
 

3. 注意点は?

α₁遮断薬
  • 禁忌:重篤な肝障害、過敏症既往
  • 主な副作用:
    • 起立性低血圧(めまい・失神)
    • 頭痛、疲労感
    • 逆行性射精(特にシロドシン)
5α還元酵素阻害薬
  • 禁忌:女性(特に妊婦・授乳婦)、小児
  • 主な副作用:
    • 性欲減退、勃起不全
    • 精液量減少、射精障害
    • 乳房圧痛・肥大
PDE5阻害薬
  • 禁忌:硝酸剤併用、高度な心血管不安定症
  • 主な副作用:
    • 頭痛、潮紅
    • 背部痛、消化不良
    • 乏尿・視覚変化(まれ)
抗コリン薬・β₃作動薬
  • 抗コリン薬
    • 口渇・便秘・認知影響に注意
  • β₃アドレナリン作動薬
    • 高血圧・頭痛に注意
 

看護ポイント

  1. バイタルサイン管理
      • α₁遮断薬開始後は起立性低血圧リスクに注意し、起立時の血圧・脈拍を測定。
  1. 症状評価
      • IPSS(国際前立腺症状スコア)で主観的症状を定期評価。
      • 残尿測定(超音波またはカテーテル法)で客観的評価。
  1. 服薬指導
      • α₁遮断薬は就寝前投与で初回起立性低血圧を軽減。
      • 5α還元酵素阻害薬は効果発現に数ヶ月要するため、継続服用の重要性を説明。
      • PDE5阻害薬は勃起不全併存時のみ保険適応となるため、適応を確認。
  1. 副作用モニタリング
      • 性機能変化、消化器症状、めまい・頭痛など日誌化し医師へ報告。
  1. 非薬物ケア
      • 生活指導として、就寝前の水分制限、トイレの環境整備(手すり設置など)、定時排尿習慣の確立を支援。