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経皮吸収型製剤/MRI・AED

経皮吸収型製剤を貼付している時に、MRI や AED をするときに、注意すべきことは何ですか?
A:
金属を含む製剤には、特に注意が必要です。
 

はじめに

貼付剤を貼付している時の注意点に、MRI や AED などの医療機器の使用があります。
 

MRI

MRI を使用する時の注意
原則として、貼付剤の支持体に金属が含まれている場合は、必ず、あらかじめ製剤を除去しなければなりません。
 
導電性のある貼付剤を使用している時に MRI を行ったことで、火傷した例が報告されたためです。これを受けて、MRI 機器の添付文書が改訂されました。
 
では、支持体に金属を含まない貼付剤の場合は、貼付したままで良いのでしょうか。
火傷のリスクはありませんが、画像診断に影響を及ぼす恐れが否定できないとの理由から、ほとんどの製剤は、剥離が推奨されています。
ただし、金属を含まないため、剥離忘れの場合の火傷のリスクはないといえます。
そのため、金属を含まない製剤の剥離については、各施設ごとに対応が異なる可能性があります。
 

AED

AED を使用する時の注意
AED については、AED 使用時に通電パッドの下に、貼付剤が貼られていると、(1) 電極から心臓への通電エネルギーが遮断され、正しく解析できない場合があること、(2) 金属を含有する貼付剤を貼付していると皮膚に火傷を起こした例も報告されています。
 
MRI と同様に、支持体に金属を含む製剤は、火傷を防ぐため、必ず剥離する必要があります。
支持体に金属を含まない製剤の場合であっても、正しい解析の妨げにならないように、AED の通電パッドを貼る位置を避けて貼付する必要があります。
平成18年には、血管拡張剤である硝酸イソソルビドやニトログリセリンのテープ剤の使用上の注意点が改訂されました。
[適用上の注意]の「貼付部位」の項に 「自動体外式除細動器(AED)の妨げにならないように貼付部位を考慮するなど、患者、その家族等に指導することが望ましい。」を追記する。
上記の製剤を使用している患者は、AED を使用する可能性が一般の人よりも高いと考えられるため、あらかじめ、貼付部位には注意する必要があります。
 
他の製剤について、支持体に金属を含まない製剤の場合、同様に AED の通電パッドを貼る部位を避けて貼る必要があると考えられます。
 
一方、AED を使用する際の注意事項として、金属含有の有無を問わず、胸部に貼付している薬剤(ネックレス類も)を全て取り除いて、拭き取ってから使用することが推奨されています。
(緊急の場面で、剥離の必要性を調べる猶予はありません)
下記のように、「禁忌・禁止」事項や「使用上の注意」事項として掲載されています。
(7)  除細動を行うときは、患者の胸部に貼付してある薬剤を全て取り除くこと。[患者が火傷を負うおそれがある。]
禁忌・禁止
2.(1) 使い捨てパッドを貼る位置に検査などの目的で、患者に他の装置の電極が装置されていたり、薬剤が貼付されている時は、それらを取り除いてから、使い捨てパッドを貼ってください[電気ショックの効果が得られず、電極や薬剤を通って流れる電流により熱傷を生じることがあります。]
使用方法 使い捨て除細動パッドを貼る位置に貼付薬や湿布薬、電極がはられている場合には、それらを剥がし、薬剤を拭き取ってください。[使い捨て除細動パッドがこれらのものに直接触れると、電気ショックの効果が減少します。また、放電エネルギーによりその部位で熱傷を生じます。]
 
全ての製剤について、AED の通電パッドを使用する部位を避けて貼付するように説明する方が望ましいとはいえますが、使用する時には剥がして、AED が行われるため、貼付部位が徹底されていなくても健康上のリスクは低いと言えます。
必須ではない製剤(添付文書に記載がない)は強制せず、望ましい貼付部位と、使用者本人および介護者が薬剤を使用する協力が得られるような貼付部位の両立ができるように、個々の状況に合わせて貼付部位の指導を行う必要があります。
 
また、他にも高周波療法のジアルテミーの際にも、金属を含有する製剤の注意が必要です。
 

剥離が必須である薬剤

ニトログリセリン(ニトロダーム TTS) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/2171701
支持体:金属を含む(アルミニウム箔)
14.1 薬剤交付時の注意
自動体外式除細動器(AED)の妨げにならないように貼付部位を考慮するなど、患者、その家族等に指導することが望ましい。[14.3.1 参照]
14.3 薬剤貼付期間中の注意 14.3.1 以下の療法を行うときは、前もって本剤を除去すること。 (1) 電気的除細動(DC細動除去等)[除細動器と接触した場合、本剤の支持体(アルミニウム箔)が破裂することがある。][14.1 参照]
(2) ジアテルミー(高周波療法)[本剤の温度が上昇するおそれがある。] (3) MRI(核磁気共鳴画像法)[本剤の貼付部位に火傷を引き起こすおそれがある。]
 
ブプレノルフィン(ノルスパンテープ)  https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1149704
14.4.4 MRI(核磁気共鳴画像法)による検査を実施する場合は前もって本剤を除去すること。本剤の貼付部位に火傷を引き起こすおそれがある。[8.3 参照][14.1.2 参照]
 
リドカイン・プロピトカイン配合剤(エムラパッチ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1219800
支持体:金属を含む(アルミフィルム)
14. 適用上の注意
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 以下の療法を行うときは、前もって本剤を除去すること。 ◦ 電気的除細動(DC細動除去等)自動体外式除細動器(AED)等と接触した場合、本剤の支持体にアルミニウムが含まれるため、本剤の貼付部位に火傷を引き起こすおそれがある。 ◦ MRI(核磁気共鳴画像法)本剤の支持体にアルミニウムが含まれるため、本剤の貼付部位に火傷を引き起こすおそれがある。 ◦ ジアテルミー(高周波療法)本剤の温度が上昇するおそれがある。
※ただし、本剤は医療機関で当該処置をする際に使用する製剤
 

貼付部位の注意が必要な薬剤

ニトログリセリン(ニトロダーム TTS) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/2171701
支持体:金属を含む(アルミニウム箔)
14.1 薬剤交付時の注意
自動体外式除細動器(AED)の妨げにならないように貼付部位を考慮するなど、患者、その家族等に指導することが望ましい。[14.3.1 参照]
14.3 薬剤貼付期間中の注意 14.3.1 以下の療法を行うときは、前もって本剤を除去すること。 (1) 電気的除細動(DC細動除去等)[除細動器と接触した場合、本剤の支持体(アルミニウム箔)が破裂することがある。][14.1 参照]
(2) ジアテルミー(高周波療法)[本剤の温度が上昇するおそれがある。] (3) MRI(核磁気共鳴画像法)[本剤の貼付部位に火傷を引き起こすおそれがある。]
 
バソレーターテープ27mg
支持体:金属を含まない
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.2 自動体外式除細動器(AED)の妨げにならないように貼付部位を考慮するなど、患者、その家族等に指導することが望ましい。
 
ミニトロテープ27mg
支持体:金属を含まない
14.1 薬剤交付時の注意
14.1.2 自動体外式除細動器(AED)の妨げにならないように貼付部位を考慮するなど、患者、その家族等に指導することが望ましい。
 
ミリステープ5mg
支持体:金属を含まない
14.1 薬剤交付時の注意
自動体外式除細動器(AED)の妨げにならないように貼付部位を考慮するなど、患者、その家族等に指導することが望ましい。
14.2 薬剤貼付時の注意
14.2.4 本剤は電気抵抗が大きいので、心電図測定、電気除細動等の妨げにならないよう貼付部位を考慮すること。
 
メディトランステープ27mg
支持体:金属を含まない
適用上の注意
貼付部位 (4)自動体外式除細動器(AED)の妨げにならないように貼付部位を考慮するなど、患者、その家族等に指導することが望ましい。
 
経皮吸収型製剤の注意事項一覧

おわりに

製剤の特徴を理解し、患者様や介護者が製剤を適切に使用できるように配慮した上で、貼付方法の説明を行うことが重要です。
 
 
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
 
参考)添付文書