キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザⓇ)の使⽤についての提⾔ 2025/26 シーズンに向けて

この文書は、**日本感染症学会インフルエンザ委員会による「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)の使用に関する提言(2025/26シーズン向け)」**の最新版(2025年11月10日付)です。主な内容を以下にまとめます。

🦠 概要:2025/26シーズンに向けた提言

  • 近年の流行では A(H1N1)、A(H3N2)、B型が同程度に混在
  • 定点報告数は過去最大を記録し、感染拡大・脳症発生の動向に注意が必要
  • 本提言は、最新の国内外研究を踏まえたバロキサビルの使用推奨改訂版

1️⃣ 成人・12〜19歳外来患者への使用

主な結論

  • バロキサビルは抗ウイルス効果・臨床効果ともにNAI(オセルタミビル等)に優る
  • B型インフルエンザでは第1選択薬として推奨
  • 家族内伝播抑制効果が確認されている。
  • PA/I38X変異ウイルスが検出されても治療効果は維持

エビデンスの要点

  • メタ解析・国内臨床研究で、発熱期間・ウイルス排出期間が短縮
  • B型感染例では入院率・肺炎発症率が低下
  • 経済評価でも高齢者・ハイリスク群において費用対効果が高い。
  • 早期投与により家庭内感染を約30%抑制(国際RCT)。

2️⃣ 耐性変異(PA/I38X)について

  • RNAウイルスは本来高頻度で変異するが、変異出現=治療失敗ではない
  • 変異ウイルスは通常、複製能が低下し、臨床経過への影響は軽微。
  • 世界的耐性株頻度は0.1%前後と低水準
  • 日本の2025年9月時点でも、バロキサビル低感受性株はA(H1N1)で0.4%、B型では0%。

3️⃣ 重症・免疫不全患者への使用

  • 有効性が確認され、症状遷延は認めず
  • NAIとの併用で致死率を低下させる可能性(免疫抑制患者で有意差あり)。
  • バロキサビル単剤使用も可能であり、重症例ほど積極的投与が推奨

4️⃣ 12歳未満の小児への使用

新たな動き

  • 2025年9月にバロキサビル顆粒製剤が承認され、体重10kg未満にも投与可能に。

効果と安全性

  • A型感染例ではオセルタミビルと同等の効果
  • B型感染例ではオセルタミビルより短期間で症状改善
  • 重症化抑制効果も報告。

注意点

  • 低年齢ほどPA/I38X変異株出現率が高く(H3N2で20〜60%)
  • 変異株検出例で発熱以外の症状改善やウイルス排出が遷延する報告もあるが、
    • 最近では臨床的影響は少ないとする報告も増加。
  • 添付文書上、体重20kg未満では慎重投与と明記。

💡 総括

  • 成人ではNAIより優る効果B型では第1選択薬
  • 重症・免疫不全患者にも使用推奨
  • 小児にも顆粒製剤により適応拡大
  • 変異株出現への過度な懸念は不要だが、今後もモニタリングが必要
  • 早期診断・早期投与が流行抑制に寄与する。