2025/26 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針

表1.抗インフルエンザ薬を使用する場合の選択薬
オセルタミビル *バロキサビルマルボキシル**ザナミビル***ラニナミビル***ペラミビル
新生児・乳児(1歳未満)推奨積極的には推奨しない(B型については本文参照)推奨しない(吸入困難)懸濁液は吸入可能、推奨については本文参照左記4剤の使用が困難な時に考慮する
幼児(1歳から5歳)推奨積極的には推奨しない(B型については本文参照)多くの場合は吸入困難懸濁液は吸入可能、推奨については本文参照左記4剤の使用が困難な時に考慮する
小児(6歳から11歳)推奨A型には慎重に投与する。B型には使用することを提案する。吸入可能な場合に限り推奨吸入可能な場合に限り推奨左記4剤の使用が困難な時に考慮する
小児・思春期小児(12歳以上)****推奨A・B型共に推奨(本文参照)推奨推奨左記4剤の使用が困難な時に考慮する
呼吸器症状が強い・呼吸器疾患のある場合推奨重症例についてはエビデンスが不足している(重症例についてはエビデンスが不足している)(重症例についてはエビデンスが不足している)左記4剤の使用が困難な時に考慮する
*)2017年3月24日に公知申請により承認されたオセルタミビルの投与は生後2週以降の新生児が対象である。体重2,500 g未満の児または生後2週未満の新生児は使用経験が得られていないため、投与する場合は、下痢や嘔吐の消化器症状やそのほかの副作用症状の発現に十分注意する4。原則、予防投与としてのオセルタミビルは推奨しない(海外でも予防投与については1歳未満で検討されていない)。ただし、必要と認めた場合に限り、インフォームドコンセントのもと予防投与(予防投与量:2 mg/kgを1日1回、10日間内服)を検討する4。
**)2025年9月に20 kg未満の小児に対する顆粒製剤の使用が承認された。
***)吸入薬(ザナミビルやラニナミビル)使用時はせき込みなどが想定される。吸入指導を行う際は適切な感染対策が必要である。ザナミビルについては4歳以下の幼児に対する使用経験はなく、安全性は確立していない。
ラニナミビル懸濁液「イナビル吸入懸濁用160mgセット」が2019年6月に承認され、使用可能である((注)ラニナミビル吸入粉末薬とは異なる製剤)。ラニナミビル懸濁液は、吸入粉末薬を吸入できない乳幼児に投与が可能というメリットはある。国内において4歳未満の小児1,104人を対象とした市販後調査の結果が報告され、特段の安全性の懸念を認めていない5。エアロゾルが発生するため、感染対策には注意する必要がある。
****)抗インフルエンザ薬投与の有無に関わらず、就学期以降の小児・未成年者には、異常行動などについて注意を行った上で投与を考慮し、少なくとも発熱から2日間、保護者等は異常行動に伴って生じる転落等の重大事故に対する防止対策を講じること、について患者・家族に対し説明を行うことが必要である。2018年日本医療研究開発機構(AMED)研究班の検討によりインフルエンザ罹患後の異常行動がオセルタミビル使用者に限った現象ではないと判断し、全ての抗インフルエンザ薬の添付文書について重要な基本的注意として「抗インフルエンザウイルス薬の服薬の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。」と追記している。