SGLT2 阻害薬は、フレイルを進行させるのか?
高齢糖尿病患者では、薬剤クラスによりフレイル悪化リスクが異なる可能性がありますが、エビデンスはまだ限定的で、交絡の影響も大きい点に注意が必要です。
ガイドラインの記載
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
SGLT2 阻害薬可能な限り使用せずに、使用する場合は慎重に投与する。(エビデンスの質:低、推奨度:強)
高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025
SGLT2 阻害薬ベネフィットとリスクのバランスを考慮して使用する。75歳以上あるいは65~74歳で認知症、サルコペニア、ADL低下のある場合は慎重に投与する。シックデイ時に中止する。(エビデンスの質:A、推奨度:1)
参考論文
Park CM, Diabetes Care. 2025 [PMID: 41232081] 高齢2型糖尿病患者において、糖尿病治療薬のうち、DPP-4阻害薬・SU薬と比較して、GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬は、フレイル進行を遅らせた
Park CM, Thanapluetiwong S, Chen X, Oh G, Ko D, Kim DH. Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors, Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists, and Frailty Progression in Older Adults With Type 2 Diabetes. Diabetes Care. 2025 Nov 13:dc251031. doi: 10.2337/dc25-1031. Epub ahead of print. PMID: 41232081; PMCID: PMC12643794.
概要(Summary)
本研究は、65歳以上の2型糖尿病患者を対象に、以下 4 種の糖尿病薬を比較し、
1年間のフレイル進行(CFI の変化) がどう異なるかを検証した 後ろ向きコホート研究である。
比較した薬剤クラス:
- GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)
- SGLT2阻害薬(SGLT-2i)
- DPP-4阻害薬(DPP-4i)(基準)
- スルホニル尿素薬(SU)
Medicare 7% サンプル(2015–2018)から 52,959人 が登録された。
主要結果
■ 1年後のフレイル指数(CFI)変化
PDFに記載された数値をそのまま示します:
- DPP-4i:0.015(基準)
- GLP-1RA:0.008
- SGLT-2i:0.010
- SU:0.016
→ GLP-1RA と SGLT-2i はフレイル進行が有意に遅い
■ DPP-4i との差(95%CI)
- GLP-1RA:−0.007(−0.011 ~ −0.004)
- SGLT-2i:−0.005(−0.008 ~ −0.002)
- SU:差なし(0.001, p=0.444)
■ 12か月完全追跡者での結果(感度分析)
- DPP-4i:0.009
- GLP-1RA:0.006
- SGLT-2i:0.006
- SU:0.011
→ GLP-1RA / SGLT-2i の有意なフレイル抑制は持続
メディエーション解析(仲介効果解析)
GLP-1RA / SGLT-2i のフレイル進行抑制が
- 心血管イベント(CVD)
- 糖尿病関連合併症
によってどの程度説明されるかを検証。
結果:仲介割合は わずか 0.3〜12% 程度で非常に小さい。
→ フレイル抑制効果は心血管ベネフィットとは独立している可能性が高い
著者による解釈
- GLP-1RA / SGLT-2i は 細胞老化抑制・抗炎症作用・ミトコンドリア改善 などの作用を持つとされ、これがフレイル進行を遅らせる可能性。
- GLP-1RA の筋量減少は「病的サルコペニア」ではなく、脂肪と筋の比例した生理的減少と解釈され、フレイル悪化にはつながらないと記載。
- フレイルアウトカムを直接評価する臨床試験は存在しないため、本研究は「予備的エビデンス」であり、今後臨床試験が必要とされる。
結論
- GLP-1RA と SGLT-2i は、高齢者2型糖尿病においてフレイル進行を明確に遅らせた。
- この効果は 心血管イベントや糖尿病合併症の減少とは独立。
- SU はフレイル抑制効果なし(DPP-4i と同等)。
- 高齢者糖尿病治療における薬剤選択の新たな重要点として、
「フレイル進行抑制」という視点が加わる可能性を示した。