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半夏厚朴湯

 

摂食嚥下に良い影響を与える可能性のある薬剤

|薬効群

半夏厚朴湯

|作用機序

サブスタンスPの濃度の上昇.肺炎の発症を減少させる

|嚥下5期

咽頭期
 
 
(検索日)2025.06.05

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の嚥下障害に対するエビデンス

半夏厚朴湯は、嚥下障害(飲み込みの障害)に対して一定の科学的根拠(エビデンス)を有する漢方薬です。以下にその主なエビデンスと作用機序、臨床での活用例をまとめます。

作用機序と基礎的知見

  • 半夏厚朴湯は、嚥下反射や咳反射を改善させる効果があることが知られています。
  • その主な作用機序は、嚥下反射・咳反射に関与する神経伝達物質「サブスタンスP」の分泌を促進することによると考えられています。

臨床試験・エビデンス

  • ランダム化比較試験(RCT)では、半夏厚朴湯が嚥下反射・咳反射を有意に改善し、誤嚥性肺炎のリスクを軽減することが示されています。
    • Iwasaki K, J Am Geriatr Soc. 2007 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17944889/
      • 目的
        • 認知症を伴う高齢者に対し、漢方処方「半夏厚朴湯(Banxia Houpu Tang, BHT)」投与が誤嚥性肺炎の発症および肺炎関連死亡を抑制するかを検討するためのパイロット試験として実施された。 
      • デザイン
        • 無作為化・観察者盲検化比較試験(prospective, observer-blinded, randomized, controlled trial)。 
      • 対象
        • 2施設の長期療養病棟に入院中の認知症と脳血管疾患、またはアルツハイマー病/パーキンソン病を併発する高齢者104例(男性31例・女性73例、平均年齢 83.5 ± 7.8 歳)。
      • 介入
        • 試験開始時に95例(平均年齢 84.0 歳)が無作為に以下のいずれかに割り付けられ、12か月間投与を継続した:
        • BHT群:47例に半夏厚朴湯を投与
        • 対照群:48例にプラセボ投与
      • 評価項目
          1. 肺炎発症率
          1. 肺炎による死亡率
          1. 日常的な自発的摂食量
      • 主な結果
        • 肺炎発症率
          • BHT群:4/44例(9.1 %)
          • 対照群:14/48例(29.2 %)
          • 統計学的に有意差あり(P = .008)。
        • 肺炎関連死亡数
          • BHT群:1例
          • 対照群:6例
          • 発症数差同様に、死亡数でもBHT群が有意に少なかった(詳細なP値は本文参照)。
        • 自発的摂食量
          • BHT群では、摂食量維持・改善傾向が認められた(具体的な数値は本文参照)。
      • 安全性
        • 有害事象は軽微で、主に下痢や軽度の食欲不振などが報告されたが、中止に至る重篤な副作用は少なかった。
      • 結論
        • 半夏厚朴湯の12か月投与により、認知症を伴う高齢者における誤嚥性肺炎発症率および肺炎関連死亡が対照群と比べて有意に低下した。自発的な摂食量の維持・改善も示唆され、半夏厚朴湯は高齢者における肺炎予防に有望な介入である可能性がある。 
  • 高齢者の誤嚥性肺炎既往患者に対して、プラセボと半夏厚朴湯を比較した二重盲検試験で、半夏厚朴湯群で嚥下反射の改善および肺炎発症抑制効果が確認されています。
  • さらに、半夏厚朴湯は高齢者の安全な薬物療法ガイドライン(2015年版)にも記載されており、嚥下障害や誤嚥性肺炎の予防薬として紹介されています。

臨床現場での使用例

  • 嚥下障害のある高齢者や、咽喉頭異常感症(のどの違和感)の患者に対して第一選択薬として用いられることが多い。
  • 例えば、脳梗塞後の後遺症やパーキンソン病による嚥下障害患者で、半夏厚朴湯投与により嚥下反射が回復し、経鼻チューブから経口摂取への移行が可能となった症例が報告されています。

まとめ

  • 半夏厚朴湯は、嚥下障害や誤嚥性肺炎のリスク低減に対して、サブスタンスP分泌促進による嚥下・咳反射改善作用を有し、RCTを含む複数の臨床研究でその有効性が示されています。
  • 高齢者や脳血管障害、パーキンソン病などによる嚥下障害患者の誤嚥性肺炎予防・治療に、現場で広く活用されています。