ガバペンチノイド

ガバペンチノイド(gabapentinoids)

1. 定義と作用機序

  • 定義
    • 中枢神経系のα₂δサブユニットに選択的に結合し、神経からの過剰なカルシウム流入を抑制することで、抗けいれん作用および神経障害性疼痛緩和作用を示す薬剤群。
  • 作用機序
    • 電位依存性カルシウムチャネルのα₂δサブユニットに結合
    • シナプス前末端からの神経伝達物質(グルタミン酸、サブスタンスPなど)放出を抑制
    • 結果として興奮性シグナルを低減し、鎮痛および抗けいれん効果を発揮
 

2. 主な薬理作用

  • 抗けいれん作用:部分発作の補助療法として用いると脳内過興奮を抑制
  • 神経障害性疼痛:末梢や中枢の異常興奮を抑え、痛覚過敏を軽減
  • 中枢抑制作用:鎮静・抗不安作用も多少持つが、ベンゾジアゼピン系ほどではない

ガバペンチノイド

  • Ca2+チャネルα2δリガンド・・鎮痛補助薬として扱われてきたが、現在では、「神経障害性疼痛治療薬」とされている
    • プレガバリン(リリカ (R))
    • ミロガバリン(タリージェ (R))
  • GABA誘導体・・中枢神経の異常放電を抑制するため、抗てんかん薬として用いられる
    • ガバペンチン(ガバペン(R))
  • レストレスレッグ症候群治療薬
    • ガバペンチン エナカビル(レグナイト(R))
(※)ガバペンチンにも同程度の鎮痛作用があると言われているが、日本では疼痛には保険適用外

3. 主な薬剤例

特徴
プレガバリンミロガバリン
結合部位電位依存性Ca²⁺チャネルのα₂δ-1/α₂δ-2サブユニット同左(α₂δ-1選択性↑)
結果的効果シナプス前末端のCa²⁺流入抑制 → 神経伝達物質放出低下同左
特徴α₂δ-1/α₂δ-2をほぼ同等に標的化α₂δ-1に対する親和性が高く、神経障害性疼痛制御に特化
プレガバリン(リリカ錠)ミロガバリン(タリージェ錠)
初期用量150 mg/日(分2回または3回)10 mg/日(分2回)
目標用量300–600 mg/日15 mg/日
腎機能低下時eGFRに応じて漸減同左
投与経路経口経口

4. 対象疾患

  • プレガバリン
    • 部分発作の補助療法
    • 帯状疱疹後神経痛
    • 糖尿病性末梢神経障害性疼痛
    • 線維筋痛症
  • ミロガバリン
    • 糖尿病性末梢神経障害性疼痛
    • 帯状疱疹後神経痛
    • 慢性腰痛症や坐骨神経痛などの末梢神経障害性疼痛(適応追加あり)
適応症が異なる
 

5. 注意点・副作用

プレガバリンミロガバリン
主な副作用めまい、傾眠、浮腫、体重増加、口渇めまい、傾眠、浮腫、頭痛、便秘
依存性まれに離脱症状(不安・不眠)同左
相互作用中枢抑制薬との併用で注意同左
特記事項線維筋痛症など中枢性疼痛にも有効α₂δ-1選択性を活かし、より持続的な疼痛制御が期待

6. 類薬との使い分け

  • NSAIDs:炎症性疼痛が主体の場合に優先。神経障害性疼痛には効果不十分。
  • オピオイド:強度疼痛に対して有効だが、依存・副作用リスクが高いため、神経障害性疼痛が主体ならガバペンチノイドを先行検討。
 
ポイント:
 
 
 

めまい・傾眠

リスク因子として下記がある
  • 高齢(≧65歳)
    • 高齢患者では中枢神経系の脆弱性や薬物クリアランスの低下により、めまい・傾眠リスクが有意に増加します。
  • 腎機能低下
    • ガバペンチノイドは主に腎排泄型のため,クレアチニンクリアランス(CLcr)〈60 mL/minなど)で血中濃度が上昇しやすく,副作用が出やすくなります。
  • 強オピオイドの併用
    • オピオイドと組み合わせると中枢抑制作用が相加的・相乗的に強まり,めまい・傾眠の発現率が有意に高くなります。
  • 高用量投与・急速増量
    • 初期投与量や短期間での増量が大きいと,血中濃度が急上昇しやすく,副作用リスクが増加します。特にプレガバリンでは600 mg/日以上の増量でめまい・傾眠が増える傾向があります。
  • 他の中枢抑制薬併用(ベンゾジアゼピン系,睡眠薬,向精神薬など)
    • 併用薬の中枢抑制作用が相加的に働くため,特に注意が必要です。
(対策)
  • 低用量から開始し、徐々に増量する
  • プレガバリンは、食事と同時に服用(もしくは食直後)することで、副作用が軽減できる可能性がある
    • 食事との関連
      「めまい」は用量依存的な副作用
      1. プレガバリン
          • 食事と同時に投与すると、吸収速度が遅延し、ピーク濃度(Cmax)が約25~30%低下、Tmax(ピーク到達時間)が約1.5時間から約3時間に遅延します。(AUCは、ほぼ同程度)
            • インタビューフォームより
              インタビューフォームより
          • これにより、高い血中濃度によって生じやすい“ピーク依存性”のめまい・傾眠は理論的に緩和される可能性があります。
          • ただし、AUC(全体の曝露量)は変わらないため、総副作用発現率そのものを大きく下げる臨床データはまだ十分ではありません。
          • 浮動性めまいの発現率は、食後投与 5.3%(1/19例)と比べ絶食時投与 30.8%(12/39例)で高かった。(インタビューフォーム)
      1. ガバペンチン
          • 一般に食事の有無で吸収の率・程度(Cmax、AUC)に有意な変化はないとされており、Tmaxへの影響も限定的です。
          • したがって、食後に服用してもめまい・傾眠リスクの低減はあまり期待できません。

      臨床的ポイント
      • プレガバリンでは「食後に服用 → ピーク濃度の緩和」が理論的メリットとして挙げられるため、高齢者や腎機能低下例では食直後投与+漸増を組み合わせると副作用管理に有効かもしれません。
      • ガバペンチンでは食事タイミングよりも、低用量からの漸増・分割投与や他中枢抑制薬との併用回避などの対応策が優先されます。