抗ウイルス剤/抗ヘルペスウイルス薬

ヘルペスウイルス薬

1. 定義

抗ヘルペスウイルス薬とは、単純ヘルペスウイルス(HSV-1, HSV-2)、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)などのヘルペスウイルス科に属するウイルスに対して効果を示す抗ウイルス薬の総称です。
 

2. 作用機序

多くはウイルスDNAポリメラーゼ阻害によりウイルスDNAの合成を阻害します。主なメカニズムは以下の通りです。
  • アシクロビル系(ACV系):ウイルスが産生するチミジンキナーゼによりリン酸化→ウイルスDNA合成阻害
  • ホスカルネット:リン酸化不要、ウイルスDNAポリメラーゼを直接阻害
  • アメナメビル:ヘリカーゼ/プライマーゼ阻害(非核酸アナログ)

3. 薬理作用ごとの特徴

分類代表薬特徴
アシクロビル類アシクロビル(ACV)、バラシクロビル安全性が高く、軽症〜中等症に使用。バラシクロビルは経口吸収が良い
ファミシクロビル類ファムシクロビルプロドラッグ。持続血中濃度が高く、1日2回投与で済む
ホスホン酸類ホスカルネットアシクロビル耐性例に使用。腎毒性あり、入院下で使用されることが多い
核酸アナログでないアメナメビルヘリカーゼ/プライマーゼ阻害。新しい機序でACV耐性にも有効、VZVに特に有用

4. 主な薬剤例

5. 対象疾患

  • 単純疱疹(口唇・性器)
  • 水痘
  • 帯状疱疹(とくに高齢者や免疫低下者)
  • HSV脳炎
  • 移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染(ホスカルネット使用)
  • アシクロビル耐性HSV/VZV感染
 

6. 注意点・副作用

副作用・注意点概要対策
腎障害アシクロビル系・ホスカルネットなどで尿細管障害水分十分、腎機能に応じた用量調整
神経毒性高用量ACVやホスカルネットで傾眠、錯乱高齢者・腎障害例に特に注意、血中濃度管理
消化器症状悪心、嘔吐、下痢食後投与など工夫
耐性ウイルスチミジンキナーゼ欠損型HSVなどホスカルネットやアメナメビルなど機序の異なる薬を使用
皮疹・過敏症発疹、アレルギー症状中止し、必要に応じて抗ヒスタミン薬など投与
腎機能低下者における帯状疱疹治療
帯状疱疹 成人/標準用量
アシクロビル800mg/回、1日5回C(mL/min/1.73m2)[C>25] 800mg/回、1日5回[C10〜25] 800mg/回、1日3回[C<10] 800mg/回、1日2回
バラシクロビル1000mg/回、1日3回C(mL/min)[C≧50] 1000mg/回、8時間ごと[C 30~49] 1000mg/回、12時間ごと[C 10~29] 1000mg/回、24時間ごと[C<10] 500mg/回、24時間ごと
ファムシクロビル500mg/回、1日3回C(mL/min)[C≧60] 500mg/回、1日3回[C 40~59] 500mg/回、1日2回[C 20~39] 500mg/回、1日1回[C <20] 250mg/回、1日1回
アメナメビル〈帯状疱疹〉 1回400mg、1日1回食後
〈再発性の単純疱疹〉 1200mg、1日1回食後

7. 類薬との使い分け

比較対象特徴使い分けのポイント
アシクロビル vs バラシクロビルバラシクロビルはプロドラッグで服用回数少外来ではバラシクロビルが使いやすい
アシクロビル vs アメナメビル機序が異なる(DNAポリメラーゼ阻害 vs ヘリカーゼ阻害)ACV耐性・帯状疱疹の新規治療にアメナメビル
バラシクロビル vs ファムシクロビル両者ともプロドラッグ患者の腎機能や服薬アドヒアランスに応じて選択
アシクロビル系 vs ホスカルネットホスカルネットはACV耐性にも有効だが腎毒性強入院管理が可能な高度免疫抑制例に限定して使用
 

三叉神経領域の帯状疱疹

  • アメナメビルの使用には注意が必要:髄液移行性が低いため
ポイント: