利尿作用のある薬

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高齢心不全患者

基本情報

  • 著者: Eveline P. van Poelgeest, M. Louis Handoko, Majon Muller, Nathalie van der Velde(EUGMS Task & Finish group on Fall‑risk‑increasing drugs) PubMed+1
  • 掲載誌・年European Geriatric Medicine, 2023年8月号(Volume 14, Issue 4), pp. 659‑674 PubMed+1
  • 目的: 高齢の心不全患者で使われる「利尿薬 (diuretics)」および「SGLT2 阻害薬 (SGLT2 inhibitors)」が転倒リスクに与える影響を整理し、転倒経験のある患者でこれらの薬を継続するか中止するか(deprescribe)を判断するための知見・指針を提供すること。 PubMed+1

背景と問題意識

  • 高齢者の心不全そのものが転倒のリスクを上げる。加えて、心不全治療で用いられる利尿薬、そしてより新しい薬剤であるSGLT2 阻害薬も、ある条件下では転倒に関わる副作用を持つことが報告されている。 PubMed+2PMC+2
  • 臨床現場では、転倒経験のある高齢心不全患者において、「薬を止めるか/続けるか」の判断が難しい。既存文献やガイドラインでは、この判断を支える具体的・実践的な情報が不足している。 PubMed+1

主な内容・知見

利尿薬と SGLT2 阻害薬、それぞれの利点とリスク

特性利尿薬SGLT2 阻害薬
治療効果主にうっ血の軽減など症状コントロール。体液過剰による浮腫等の改善。 PubMed+1心不全の疾患修飾作用(病態進行抑制)、腎保護作用など。加えて、心血管イベントの抑制効果も報告。 PMC+1
転倒リスクに関連する副作用低血圧(立ちくらみ等)、脱水、電解質異常(例:ナトリウム、カリウムなど)、腎機能悪化の可能性、頻尿/排尿関連の問題など。これらが転倒の引き金になりうる。 PubMed+1一部重なるリスク(低血圧など)。ただし、利尿薬ほど電解質異常やハイパーグリセミアのリスクが低い、腎機能の悪化を起こしにくい、転倒関連の副作用プロファイルが比較的穏やかという証拠がある。 PubMed+2PMC+2

薬剤サブクラスおよび個別の違い

  • 利尿薬でも種類(例:ループ利尿薬、サイアザイド系、カリウム保持性など)や用量、投与間隔によって、転倒リスクに関わる副作用の程度が異なる。 PMC+1
  • 患者個人の状態(腎機能、電解質バランス、既往の転倒歴、体液状態、脱水リスクなど)が重要モディファイアーとなる。 PubMed+1

(De)prescribing に関する指針・実用的ツール

  • 転倒経験がある高齢心不全患者に対して、利尿薬をどのように段階的に中止(または減量)できるかの 臨床的意思決定ツリー (clinical decision tree) を提示。 PubMed+1
  • 患者の転倒リスク因子を評価する際のチェックポイント:
    • 血圧の変動(特に起立性低血圧/立ちくらみ)
    • 体液量の過不足
    • 腎機能
    • 電解質異常
    • 他薬との相互作用、多剤併用(polypharmacy)状況
    • 生活状況(夜間のトイレ動作、歩行能力、転倒しやすい環境など) PMC+1
  • 利尿薬の中止(あるいは用量削減)を考える際には慎重なモニタリングが必要。たとえば、心不全の「安定期」であること、過剰な浮腫がないこと、症状悪化の兆候がないことなどが条件となる。 PMC

著者の結論・提言

  • 総じて、SGLT2 阻害薬は利尿薬と比べて転倒リスク関連の副作用プロファイルがやや有利と思われるが、「リスクなし」というわけではない。患者個人の条件を見極めたうえでの判断が必要。 PubMed+2PMC+2
  • 転倒経験のある高齢心不全患者には、利尿薬の中止や調整を検討することは可能だが、ただちに全ての利尿薬をやめるという方向ではなく、「どの薬剤/どの用量を/どのような時期に」減らすかを慎重に設計すべき。 PMC+1
  • 多職種で協働すること(医師・看護師・薬剤師・理学療法士など)や、患者の希望・生活状況を考慮すること(患者中心のアプローチ)。転倒予防は薬剤選択のみでなく、環境調整/運動・バランス訓練など総合的介入が重要。 Amsterdam UMC+1

限界と今後の課題

  • 高齢かつ複数の合併症を有する患者では、臨床試験のデータが限定的である。特に SGLT2 阻害薬については新しいため、長期的な転倒関連アウトカムのエビデンスが十分とは言えない。 PMC+1
  • 利尿薬中止あるいは減量による心不全症状の悪化リスク、再入院リスクなどのバランスをとる必要があり、安全性モニタリングが不可欠。
  • 各国・地域での医療資源・フォロー体制・患者背景(栄養状態、生活様式など)が異なるため、そのまま他国で適用する際には調整が必要。