Koshiishi T, Pharmazie (2020)

Pharmacological considerations in antipsychotic drug selection for prevention of drug-induced dysphagia

(薬剤性嚥下障害予防のための抗精神病薬選択における薬理学的考慮)

1. 目的

  • 抗精神病薬が嚥下障害を引き起こすことは知られているが、受容体親和性と発症時期の関係は明らかでない。
  • そこで、抗精神病薬の受容体親和性と嚥下障害の発症までの日数(time-to-onset)の関連を調査し、予防的薬剤選択の指針を得る。

2. 方法

  • 対象薬:13種類の抗精神病薬(in vitroでヒト受容体に対する親和性データがあるもの)
  • データソース:日本医薬品医療機器総合機構(PMDA)のJADERデータベース
  • 対象症例:嚥下障害が報告された46例
  • 解析:各薬剤の受容体親和性(D₂, H₁, M₁, M₃など)と発症までの日数の相関を評価

3. 結果

  • D₂受容体親和性と発症までの日数に負の相関(r = -0.4572, p = 0.0016)
    • → D₂遮断作用が強い薬ほど発症が早い
  • H₁, M₁, M₃受容体親和性と発症までの日数に正の相関
    • H₁: r = 0.5006, p = 0.0006
    • M₁: r = 0.4130, p = 0.0059
    • M₃: r = 0.4149, p = 0.0057
      • → これらの受容体遮断作用が強い薬ほど発症が遅い
  • 考察:
    • 強いD₂遮断作用 → 早期発症リスク
    • H₁/M₁/M₃遮断作用 → 発症遅延効果の可能性

4. 臨床的示唆

  • 薬剤性嚥下障害の予防を考える場合、
    • 強いD₂遮断作用を持つ薬は注意
    • H₁/M₁/M₃作用を適度に有する薬はリスクを軽減する可能性
  • ただし、抗コリン作用(M₁/M₃)は別の副作用リスク(せん妄、便秘、排尿障害など)を伴うため、総合的判断が必要