Rouch L, CNS Drugs (2015)
1. 目的
中年以降の高血圧が認知機能低下や認知症リスクを高めるとの疫学的知見を踏まえ、抗高血圧薬の使用が認知機能低下・認知症発症を予防しうるかを、観察研究・RCT・メタ解析の全データから検討すること PubMed。
2. 方法
- 文献検索:MEDLINE、Embase、Cochrane Library を1990年以降で検索
- 対象研究:38報(縦断研究18件、RCT11件、メタ解析9件)、総対象人数1,346,176名(平均年齢74歳) PubMed。
3. 主な結果
- 縦断研究(7件):認知機能低下・軽度認知障害発症リスクが有意に低下
- 認知症発症縦断研究(11件):8件で保護的効果を示し、3件は有意差なし
- RCT(4件)
- SYST-EUR I/II:認知症リスクを55%減少(3.3 vs. 7.4件/1,000人年; p<0.001)
- PROGRESS:認知機能低下リスクを19%減少(95%CI 4–32%; p=0.01)
- HOPE:脳卒中後の認知機能低下リスクを41%減少(95%CI 6–63%)
- メタ解析:全体として保護効果を示すものが多いが、対象集団や評価指標の違いで結果が分かれる場合もある PubMed。
特に カルシウム拮抗薬(CCB)と レニン‐アンジオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)は、他クラスと比べても認知症予防効果が強い可能性が示唆されています。
4. 考えられる作用メカニズム
- 脳血流・血管保護作用
- 抗高血圧薬により小血管のリモデリングが抑制され、白質病変やラクナ梗塞の進行が軽減される ウィキペディア。
- 酸化ストレス・炎症抑制
- RAS阻害によりアンジオテンシンII依存性の血管内皮障害や慢性炎症が抑えられ、血液脳関門(BBB)の安定化や神経保護につながると考えられる。
- アミロイド代謝への影響
- 一部のRAS阻害薬はアミロイドβの蓄積を抑制し、アルツハイマー病病理にも作用する可能性が示唆されている。
- 血圧変動(BPV: blood pressure variability)制御
- BPVの大きさ自体が認知機能低下と関連するため、抗高血圧薬による血圧安定化が認知予防効果を発揮する可能性がある ウィキペディア。
5. 結論と今後の課題
- 抗高血圧薬、とりわけ CCB と RAS阻害薬 は「血管性のみならずアルツハイマー型認知症リスクも低減する」可能性を多数の観察研究・RCTで示唆 PubMed。
- さらなるエビデンス強化のためには、認知機能を主要アウトカムとした長期RCTの実施が望まれる。
臨床的ポイント:中年期以降の高血圧管理は、心血管イベント予防のみならず認知症予防にも重要であり、CCB/RAS阻害薬を中心とした治療選択が推奨されます。