抗菌薬(特に、マクロライド系)

有害事象

|薬効群

 

|作用機序

① モチリン様作用(Motilin-like activity)

  • 特に 14員環マクロライド(エリスロマイシン、クラリスロマイシン)はモチリン受容体作動薬として働く。
  • 十二指腸・空腸のクロム親和性細胞から分泌されるモチリンは空腹期強収縮(MMC:Migrating Motor Complex)を誘発。
  • 過剰刺激 → 消化管蠕動の異常亢進 → 腹部不快感・悪心・嘔吐。
  • 低用量では消化管運動促進薬として臨床利用(胃排出遅延、術後イレウス)されるが、通常量の抗菌療法では副作用になり得る。

② 胃腸粘膜への直接刺激

  • 経口マクロライドは胃酸下での不安定性や薬剤自身の性質により胃粘膜を刺激。
  • 特にエリスロマイシンは酸不安定で、代謝物や酸変性により胃痛・悪心が出やすい。

③ 腸内セロトニン放出

  • 蠕動促進作用により腸クロム親和性細胞からの5-HT放出が増加 → 腸管の5-HT₃受容体刺激 → 迷走神経経由で延髄嘔吐中枢活性化。

④ 中枢性作用(間接的)

  • 消化管からの求心性迷走神経刺激が延髄孤束核(NTS)や化学受容器引金帯(CTZ)を活性化 → 嘔吐反射を促進。
 
薬剤モチリン様作用の強さ消化器症状の頻度コメント
エリスロマイシン強い高頻度消化管運動促進薬としても使用されるが、副作用として悪心が出やすい
クラリスロマイシン中等度中等度エリスロマイシンよりは弱いが、特に除菌療法で悪心が出やすい
アジスロマイシン弱い低〜中等度モチリン様作用が弱く消化器症状は比較的少ない

発症しやすい条件

  • 高用量・空腹時投与
  • 高齢者や消化管過敏の患者
  • 他の消化管刺激薬(NSAIDs、鉄剤、GLP-1RAなど)併用時
  • 除菌療法などで複数薬剤同時投与時
個人差がある

|対策

臨床対応

  • 食後投与で胃刺激を軽減
  • どうしても症状が強い場合は薬剤変更(例:エリスロマイシン→アジスロマイシン)
  • モチリン様作用を逆に利用する場合(胃排出遅延)でも、低用量・短期間使用が原則