静脈栄養製剤

 

静脈栄養製剤

3ステップで理解する臨床薬理

1. どんな薬?

静脈栄養製剤は、消化管を使わず、点滴で栄養を補給するための製剤です。
口から食べられない・消化できない患者さんに、生命維持に必要な栄養素(糖・アミノ酸・脂肪・ビタミン・電解質など)を静脈から投与します。
(薬効群ごとの分類)
PPN 製剤
末梢静脈
  • 末梢静脈にカテーテルを留置
  • 短期間の静脈栄養で用いる
TPN 製剤
中心静脈
  • 中心静脈にカテーテルを留置
  • 生命活動や成長に必要な5大栄養素(炭水化物、蛋白、アミノ酸、脂質、ミネラル、ビタミン)すべてを静脈から供給する
項目TPN(Total Parenteral Nutrition)PPN(Peripheral Parenteral Nutrition)
投与経路中心静脈(CVカテーテル)末梢静脈
浸透圧高(1,000〜2,000 mOsm/L以上)中〜低(500〜900 mOsm/L以下)
内容成分高濃度の糖、アミノ酸、脂肪、ビタミン、電解質、微量元素など低濃度の糖、アミノ酸、電解質、必要に応じてビタミン
栄養量十分(1,500〜2,500 kcal/日程度)不十分(〜1,000 kcal/日程度)補助的
使用期間長期(数日〜数週間〜月単位)短期(数日〜1週間程度)
適応経腸栄養が全くできない場合や長期に渡る場合経腸栄養の導入前後、経口摂取が一時的に困難なとき
感染リスク高い(中心静脈カテーテル感染)低い(末梢静脈炎に注意)
代表製剤エルネオパNF、ハイカリック、オリパロミン、イントラリポスなどピントパ、ビーフリード、ラクトリンゲル、維持輸液など
脂肪乳剤
  • エネルギー補給と必須脂肪酸の補給
  • 糖・アミノ酸製剤に加えて、別ルートで投与する

2. どんな使い方

使う場面の例:
  • 消化管が使えない(イレウス、消化管出血、短腸症候群など)
  • 手術後や重症患者で、経口摂取が困難なとき
  • がん末期、意識障害、重度の誤嚥などで経口・経腸栄養が不可なとき
 

3. 注意点は?

  • 感染リスク(カテーテル関連血流感染症:CRBSI)
    • → 中心静脈カテーテル管理が重要
  • 高血糖・低血糖
    • → 血糖コントロールとモニタリングが必要
  • 肝障害・脂肪肝・胆石
    • → 長期使用時に注意
  • 電解質異常(低K血症・低Mg血症など)
  • 再栄養症候群
    • → 栄養不良が長期化していた患者に急に栄養を入れると起こりやすい
 
 
製剤の構成
糖・電解質
 
アミノ酸
 
ビタミン
 
微量元素
 
脂肪乳剤
 
 
投与ルート別:投与可能な輸液製剤の特徴比較
項目皮下輸液(皮下点滴)末梢静脈投与(PPN)中心静脈投与(TPN)
投与経路皮下組織末梢静脈(橈側皮静脈など)中心静脈(鎖骨下、内頸、PICCなど)
使用目的軽度脱水・水分補給一時的な栄養補給、水分補給長期的・完全な栄養管理
適応例高齢者の経口困難時、終末期ケア経口摂取困難時の短期的補助消化管使用不可の栄養管理
許容浸透圧約300 mOsm/L以下(等張液)約600~800 mOsm/Lまで制限なし(高浸透圧可
主な使用製剤生理食塩液、乳酸リンゲル液、5%ブドウ糖液などPPN製剤TPN製剤
投与速度の制限ゆっくり(20~80 mL/h 程度)比較的緩徐(~100 mL/h)比較的自由(100 mL/h 以上も可)
脂肪乳剤の投与❌ 基本不可△(末梢静脈用製剤に限る)⭕ 高濃度でも投与可
電解質濃度低濃度中等度まで可能高濃度対応可
pHの許容範囲皮下に刺激がない製剤(pH中性~ややアルカリ性)やや広い広範囲可(強酸・強アルカリも可)
感染リスク低い中程度高い(厳密な無菌操作必要)
長期投与✕ 不向き(2~3日程度)△(1~2週間程度)◎ 長期可(数週間~数ヶ月)