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イメグリミン

イメグリミン

1. 定義と作用機序

  • 定義
    • イメグリミン(Imeglimin)は、ミトコンドリア機能を標的とする新規クラスの経口血糖降下薬で、2021年に日本で2型糖尿病治療薬として初めて承認された。従来のビグアナイド薬(メトホルミン)とは異なる作用機序をもち、β細胞保護インスリン抵抗性改善の両面を担う。
  • 作用機序
    • 膵内作用:NAMPT遺伝子発現増加によるNAD⁺合成促進と、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰの競合阻害による活性酸素産生抑制により、グルコース濃度依存的なインスリン分泌(GSIS)を増強し、β細胞量の維持・保護を図る。
    • 膵外作用:肝臓での糖新生抑制および骨格筋におけるグルコース取り込み能改善を介し、インスリン抵抗性を是正する。
      • この二相的メカニズムは、ミトコンドリア機能異常という2型糖尿病の根本病態にアプローチするものである
患者さん向けの薬効説明:
細胞でエネルギー源としての糖の利用効率を高める(糖を燃やしやすくする)

2. 主な薬理作用

  • グルコース依存的インスリン分泌促進:血糖値上昇時のみ作用し、低血糖リスクを低減。
  • β細胞保護作用:ミトコンドリア機能改善を介してβ細胞のアポトーシス抑制。
  • インスリン抵抗性改善:肝臓の糖新生抑制、筋細胞でのミトコンドリア生合成促進・グルコース取り込み能向上。
  • メトホルミンとの比較:両者ともミトコンドリア複合体Ⅰを標的とするが、イメグリミンはNAMPT誘導によるNAD⁺増加も介在し、β細胞保護作用がより顕著とされる
 

3. 主な薬剤例

4. 適応症

2型糖尿病:単独または他の経口血糖降下薬・インスリンとの併用療法で、血糖コントロール改善を目的に使用。
 

5. 注意点・副作用

  • 主な副作用:頭痛、悪心・嘔吐、下痢、便秘、上気道感染症など。単独投与では低頻度だが、SU薬やインスリン製剤との併用で低血糖リスクが増大するため注意が必要。
  • 腎機能制限eGFR45 mL/min/1.73 m²未満の重度腎障害患者には投与慎重または禁忌
    • UpDate 2025年4月 添付文書改訂
  • その他:急な中止は避け、定期的な血糖・腎機能モニタリングを行う。
 

6. 類薬との使い分け

  • ビグアナイド薬(メトホルミン):共にミトコンドリア機能に作用するが、イメグリミンはβ細胞保護作用が加わる。メトホルミン耐容性不良例や消化器症状が強い例での選択肢となる。
  • SU薬・グリニド薬:強力なインスリン分泌促進作用を持つが、低血糖リスクが高い。イメグリミンは血糖依存的機序ゆえ比較的安全性が高い。
  • DPP-4阻害薬/GLP-1受容体作動薬:インクレチン系を介した分泌促進と比較し、イメグリミンはミトコンドリアを介する独自機序。併用により相乗効果が期待されるが、併用時は低血糖に注意。
  • SGLT2阻害薬:腎臓作用を介した糖排泄促進。双方の併用で多面的血糖改善が可能だが、腎機能低下時の併用注意。
 
ポイント:
  • 新規薬剤であるため、高価であったり制約もあるが、使用経験が蓄積され安全面のデータが揃ったことで、腎機能に対する制限も緩和された