Beuschlein F, Eur J Endocrinol (2024)

📘 ガイドラインタイトル

Diagnosis and therapy of glucocorticoid-induced adrenal insufficiency
(ステロイド誘発性副腎不全の診断と治療)
  • 著者代表:Felix Beuschlein ら
  • PMID:38714321
  • DOI:10.1093/ejendo/lvae029
  • 掲載誌European Journal of Endocrinology(2024年)

🎯 背景と目的

  • *グルココルチコイド(ステロイド)は、抗炎症・免疫抑制薬として広く使用されているが、慢性使用は副腎皮質機能低下(adrenal insufficiency: AI)**を引き起こすリスクがある。
  • 1%以上の人口が慢性的なステロイド治療を受けているとされており、AIの早期発見と適切な管理が重要。
  • このガイドラインは、慢性グルココルチコイド使用中または使用後の副腎機能不全の診断・治療指針を提供。

🔍 主な内容と推奨事項

1. 📉 AIのリスク要因

要因内容
用量高用量ほどリスク増
期間長期使用(数週間〜数ヶ月)でリスク増
薬剤の力価例:デキサメタゾン > プレドニゾロン
投与経路経口、静注に加え、高用量吸入・外用もリスクあり
個人差感受性は患者ごとに異なる

2. 🧪 診断とモニタリング

  • 症状:疲労、悪心、関節痛、起立性低血圧など(離脱症状と重複)
  • 検査
    • 血中コルチゾール濃度
    • ACTH刺激試験(250 μgテストが推奨)
    • 朝のコルチゾール値 <100 nmol/L(3.6 μg/dL)でAIが示唆される

3. 🔽 減量(Tapering)の原則

  • 生理的量以上の用量では比較的早く減量可能
    • 例:プレドニゾロン換算で >7.5 mg/日
  • 生理的用量域(<5 mg程度)では、より慎重で緩やかな減量が必要
    • 少量単位(例:0.5 mg〜1 mg)で週単位の漸減
  • 減量中に離脱症状とAIの鑑別が必要

4. 💊 治療・管理

  • AIと診断された場合は生涯にわたるヒドロコルチゾン補充が必要なこともある
  • 患者教育が必須:感染時や手術時の増量指導("Sick day rule")など
  • メディカルアラートの携帯を推奨

🩺 臨床的意義

  • 慢性ステロイド使用者では離脱症状 vs 副腎不全の見極めが極めて重要。
  • 段階的な減量スケジュールと副腎機能のモニタリングが不可欠。
  • 本ガイドラインは実臨床に即した減量速度と診断手順を示している初の国際的指針
 
Clinical Question II 基礎疾患の治療にステロイドが不要になった患者に対して、最適な減量(tapering)スキームは何か?

🔍 含まれた研究の概要

  • 対象研究数:5件(RCT:4件、単群研究:1件)
  • 対象患者数(総計):864名
  • 研究対象疾患
    • 短期・高用量使用後の中止(MS、喘息、COPD)→ RCT 3件
    • 長期使用後の中止(関節リウマチ:RA)→ RCT 1件
    • 重度好酸球性喘息に対する個別減量アルゴリズム → 観察研究 1件(n = 598)

🩺 主な結果と推論

シナリオ結論備考
短期・高用量のステロイド使用後の中止急な中止(abrupt discontinuation)でも安全な場合が多い離脱症状・副腎不全に関連するイベントは報告されず
長期使用後の中止速い漸減(supraphysiologic dose領域)→遅い漸減(生理的量) が安全明確な副腎不全の報告なし(proxyとしてAEや再入院率を使用)
副腎不全の直接評価限定的:一部の研究のみが副腎不全を安全性評価の一部に含む
tapering スキームの直接比較なし(異なる減量法同士のRCTは存在しない)

📌 結論(ガイドラインの立場)

  • 短期使用後は必ずしもtaperingは不要
    • 例:急性増悪治療に用いたメチルプレドニゾロンなど
  • 長期使用後は2段階のアプローチが推奨
      1. 高用量から生理的用量までは比較的迅速に減量
      1. 生理的用量(プレドニゾロン換算5〜7.5mg以下)からは慎重に漸減

⚠️ 留意点

  • 各研究の疾患背景やステロイド使用期間、評価項目に**ばらつき(heterogeneity)**があり、エビデンスの質は限定的
  • 副腎機能の直接的評価(ACTH刺激試験など)を主要評価項目にしていない研究が多く、症候性副腎不全を過小評価している可能性がある。

🧠 補足:実臨床への応用

  • ステロイドの中止にあたっては、「使用期間・用量・個別の回復速度」を考慮し、
    • 必要であれば ACTH刺激試験などでの客観評価を行う。
  • 目安として
    • <3週間の使用 → 一般に急な中止でも安全
    • 3週間の使用または夜間投与 → 漸減+副腎評価を検討