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Hatta K, JAMA Netw Open. 2024

このランダム化第III相試験では、65~90歳の高リスク高齢入院患者203名を対象に15 mgスボレキサントを最大7日間使用し、せん妄発症率を比較。
スボレキサント群ではせん妄発症が16.8%に対しプラセボ群は26.5%(差 ‑8.7%、95 %CI ‑20.1〜2.6 %、P = .13)と減少傾向が見られたが、統計的有意差は得られませんでした

Title(英語と日本語)

Suvorexant for Reduction of Delirium in Older Adults After Hospitalization
入院後の高齢者のせん妄軽減に対するスボレキサントの効果

Journal Name & Publication Year(雑誌名と出版年)

JAMA Network Open, 2024年8月16日発行

First and Last Authors(第一および最終著者)

First Author: Kotaro Hatta
Last Author: Ichiro Arano

First Affiliations(第一所属機関)

Department of Psychiatry, Juntendo University Nerima Hospital, Tokyo, Japan

Abstract(要旨)

高齢者の入院患者において一般的なせん妄は、認知症や死亡リスクの増加と関連し、睡眠障害が一因とされる。本研究では、オレキシン受容体拮抗薬スボレキサントが、せん妄高リスク高齢者の入院後のせん妄発生率を低下させるかを検討した。日本の50病院で203名(65~90歳)を対象に、スボレキサント群(15mg)とプラセボ群に1:1で無作為割り付けし、最大7日間投与。せん妄発生率はDSM-5基準で評価された。スボレキサント群は16.8%、プラセボ群は26.5%であったが、有意差はなかった(差 −8.7%、P = 0.13)。副作用は両群で同程度であった。

Background(背景)

せん妄は急性の意識・認知障害で、高齢者の入院患者で高頻度に発生する。特に活動亢進型は危険行動につながる。従来の多面的非薬物療法は効果が限定的で、睡眠障害がせん妄のリスク要因とされることから、睡眠改善薬の有用性が注目されてきた。

Methods(方法)

日本の50施設で2020年10月22日〜2022年12月23日に実施された二重盲検・プラセボ対照・第3相ランダム化比較試験。65〜90歳のせん妄リスク(軽度認知障害または軽度認知症、せん妄既往)のある入院患者を対象に、スボレキサント15mgまたはプラセボを最大7日間就寝前に投与。主要評価項目はDSM-5に基づくせん妄発生率、副次評価項目はDRS-R-98スコア等。

Results(結果)

203名が治療を受け、スボレキサント群でせん妄発生率は16.8%、プラセボ群で26.5%(差−8.7%、P=0.13)。活動亢進型+混合型せん妄の発生率はスボレキサント群10.9%、プラセボ群21.6%であり、この差は有意(−10.7%、P=0.04)。副作用は両群で同程度で、安全性に大きな差はなかった。

Discussion(考察)

せん妄発生率における全体的な差は統計的に有意ではなかったが、活動亢進型を含むせん妄に対してスボレキサントは有益である可能性が示唆された。一方、低活動型には効果がみられず、手術入院患者では逆に増加傾向があった。

Novelty compared to previous studies(先行研究との新規性)

最大規模のRCTとして、せん妄の亜型ごとの分析を実施し、活動亢進型せん妄に対する有効性の可能性を初めて明確に示した点が新規性である。

Limitations(限界)

日本国内のみの研究であり、他国への一般化は慎重に行う必要がある。軽度認知障害者が多くを占めた点や、手術内容や持病の影響を調整していない点も制約となる。

Potential Applications(応用可能性)

高リスク高齢者の入院後の活動亢進型せん妄予防において、スボレキサントの使用が検討される可能性がある。