血液生化学検査

臨床で栄養状態の指標としてよく検査される血液生化学検査項目を「蛋白質栄養指標」「エネルギー・脂質代謝指標」「免疫機能・血球指標」「微量栄養素指標」に分類してまとめます。

1. 蛋白質栄養指標

項目名反映期間(半減期)基準値(成人)主な意義・注意点
アルブミン(Albumin)約18–20日3.8–5.3 g/dL慢性的低栄養の指標。炎症や脱水で低下するため,CRPや水分状態と合わせて解釈。
プレアルブミン(Transthyretin)約2日20–40 mg/dL短期間の栄養変化に敏感。急性期反応性タンパクでもあるため,炎症時低値に注意。
トランスフェリン(Transferrin)約8日200–360 mg/dL鉄代謝や炎症の影響を受ける。フェリチンと合わせて鉄欠乏評価にも用いられる。
レチノール結合蛋白(RBP)約12時間3–6 mg/dL最短の半減期で栄養変化を素早く反映。ビタミンA状態や腎機能に左右されやすい。
総蛋白(Total Protein)約20–30日6.5–8.0 g/dL体内の蛋白量を大まかに把握。グロブリン変動(炎症・免疫)で値が上下しやすい。

2. エネルギー・脂質代謝指標

項目名反映期間基準値主な意義・注意点
総コレステロール(Total Chol)数週間150–219 mg/dL長期的な脂質摂取状況の指標。肝疾患や脂質異常症で変動。
HDL-コレステロール数週間≥40 mg/dL(男性)≥50 mg/dL(女性)心血管リスク評価に加え,低栄養時に低下することがある。
LDL-コレステロール数週間<120 mg/dL
中性脂肪(Triglycerides)数時間~数日30–149 mg/dL食事直後に上昇するため,空腹時採血が望ましい。
血糖(Glucose)数時間70–109 mg/dL栄養摂取量やインスリン抵抗性の指標。
HbA1c過去1–2か月4.6–6.2 %慢性的な血糖コントロールの評価。栄養状態との関連で見る場合は補助的。

3. 免疫機能・血球指標

項目名意義基準値注意点
総リンパ球数(Total Lymphocyte Count)栄養状態と免疫能の連関1,000–3,000 /μL低栄養やストレスで減少。急性感染時の解釈に注意。
CRP(C-reactive Protein)炎症マーカー。栄養指標の解釈補助<0.3 mg/dL動的・静的指標の低下が炎症によるものか判断するため必須。

4. 微量栄養素指標

項目名意義基準値(成人)注意点
ビタミンD(25-OH-D)骨代謝だけでなく,筋機能や免疫にも関与20–50 ng/mL日照量やサプリ摂取で大きく変動。
ビタミンB12赤血球形成,神経機能,核酸合成に必須200–900 pg/mL貧血や神経症状の評価にも用いる。胃切除後や菜食者で低値に注意。
葉酸(Folate)赤血球形成および細胞分裂に必須4.0–20.0 ng/mL妊婦や消化管吸収障害時に要チェック。
鉄(Fe)酸素運搬および代謝に必須50–170 μg/dLフェリチン,トランスフェリン飽和度と合わせて鉄欠乏を評価。
亜鉛(Zn)免疫機能,創傷治癒,タンパク合成に関与80–130 μg/dL下痢や肝疾患で低下。急性炎症時の解釈に注意。
マグネシウム(Mg)酵素反応,神経伝達,筋機能に必須1.8–2.5 mg/dL利尿薬や下痢で排泄増加。

臨床での活用ポイント

  1. 複合評価を行う
      • それぞれ単独では炎症・疾患・脱水などで影響を受けるため、CRP・肝腎機能検査や体組成・食事履歴と併せて総合的に判断する。
  1. 目的に応じた指標選択
      • 短期的な栄養介入フォロー → プレアルブミン,RBP
      • 慢性的な栄養リスクスクリーニング → アルブミン,BMI,総コレステロール
      • 微量栄養素欠乏のスクリーニング → ビタミンD,B12,葉酸,鉄,亜鉛など
  1. 検査タイミング
      • 脂質類や血糖は空腹時採血,微量栄養素はサプリ服用・食事の影響を考慮して採血条件を統一。
  1. 経時的フォロー
      • グラフ化やスプレッドシートで推移を管理し,栄養療法や生活改善の効果を定量的に評価。