在宅自己注射 対象薬剤追加審議(R4.11.9)
中央社会保険医療協議会 総会(第531回)
○ 在宅自己注射の対象薬剤に係る運用基準(令和2年12月23日中医協総会において 承認)及び学会からの要望書等を踏まえ、以下の薬剤について、保険医が投与することができる注射薬及び在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加してはどうか。
1.アバロパラチド酢酸塩製剤
【販売名】
オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg
【効能・効果】
骨折の危険性の高い骨粗鬆症
【用法・用量】
通常、成人には1日1回アバロパラチドとして80μgを皮下に注射する。なお、本剤の投与は18ヵ月間までとすること。
【薬理作用】
アバロパラチドはヒト副甲状腺ホルモン関連タンパク質のN末端から34個のアミノ酸配列の一部を改変したポリペプチドであり、骨芽細胞の副甲状腺ホルモン1型受容体に選択的に作用する。本薬を1日1回の投与頻度で皮下投与することにより、骨芽細胞が増加して骨形成が促進され、骨量が増加する。
【主な副作用】
悪心、不動性めまい、動悸、頻脈、注射部位反応(疼痛、発赤、浮腫)、紅斑、頭痛、高カルシウム尿症、高カルシウム血症、筋痙縮 等
【承認状況】
令和4年9月 薬事承認
2.カプラシズマブ(遺伝子組換え)
【販売名】
カブリビ注射用10mg
【効能・効果】
後天性血栓性血小板減少性紫斑病
【用法】
成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、本剤の投与初日は、血漿
交換前に10mgを静脈内投与し、血漿交換終了後に10mgを皮下投与する。その後の血漿交換期間中は、血漿交換終了後に1日1回10mgを皮下投与する。血漿交換期間後は、1日1回10mgを30日間皮下投与する。
なお、患者の状態に応じて、血漿交換期間後30日間を超えて本剤の投与を継続することができる。
【薬理作用】
カプラシズマブはvon Willebrand因子(VWF)のA1ドメインを標的とする遺伝子組換え一本鎖二価ヒト化モノクローナル抗体で、VWFと血小板間の相互作用を阻害することにより、後天性TTPの特徴である超高分子量VWF媒介血小板凝集を抑制する。またVWFの動態へ影響し、本剤が結合したVWFの消失を促進する。
【主な副作用】
脳出血、消化管出血、鼻出血、歯肉出血、血尿、注射部位反応、発熱、呼吸困難、下痢、筋肉痛、蕁麻疹 等
【承認状況】
令和4年9月 薬事承認
3.乾燥濃縮人C1-インアクチベーター製剤
【販売名】
ベリナート皮下注用2000
【効能・効果】
遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制
【用法】
本剤を添付の溶解液全量で溶解し、皮下投与する。
通常、1回体重1kg当たり60国際単位を週2回投与する。
【薬理作用】
C1-インアクチベーターは分子量105kDaの糖蛋白であり、プロテアーゼ
C1r及びC1sを不活化することで補体活性化経路を阻害する。また、血液凝固 第XIIa因子、血漿カリクレインに対して阻害作用を有する。本剤は遺伝性血管 性浮腫において欠如しているC1-インアクチベーターを補充することにより治療効果を示す。
【主な副作用】
注射部位反応(紅斑、疼痛、内出血、反応、硬結、腫脹、出血、血腫、そう痒感、発疹、分泌物、浮腫、蕁麻疹)、ショック、アナフィラキシー 等
【承認状況】
令和4年9月 薬事承認
4.フレマネズマブ(遺伝子組換え)
【販売名】
アジョビ皮下注225mgオートインジェクター
【効能・効果】
片頭痛発作の発症抑制
【用法】
通常、成人にはフレマネズマブ(遺伝子組換え)として4週間に1回225mg
を皮下投与する、又は12週間に1回675mgを皮下投与する。
【薬理作用】
フレマネズマブは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に選択的に結
合し、2つのアイソフォーム(α-及びβ-CGRP)のCGRP受容体への結合 を阻害するヒト化モノクローナル抗体であり、CGRPに高い親和性(α-CGR P:KD=159pM、β-CGRP:KD=112pM)と選択性を有し、CG RP関連ペプチド(アミリン、カルシトニン及びインテルメジン)には結合しない。 アドレノメデュリンとは一過性の弱い相互作用が認められた(この親和性はCGR Pと比較して約20,000倍以上弱い)。片頭痛患者では発作時に血漿中CGR P濃度が上昇していること、また片頭痛患者にCGRPを投与すると片頭痛発作を 誘発することから、フレマネズマブはCGRP活性の阻害作用により、片頭痛発作 の発症を抑制すると考えられる。
【主な副作用】
注射部位反応(疼痛、硬結、紅斑、そう痒感、発疹)、薬物過敏症(アナフィ
ラキシー、血管浮腫、蕁麻疹) 等
【承認状況】
令和3年6月 薬事承認
【備考】
5.メトトレキサート製剤
【販売名】
メトジェクト皮下注7.5mgシリンジ0.15mL、同皮下注10mgシリン
ジ0.20mL、同皮下注12.5mgシリンジ0.25mL、同皮下注15mg
シリンジ0.30mL
【効能・効果】
関節リウマチ
【用法】
通常、成人にはメトトレキサートとして7.5mgを週に1回皮下注射する。な
お、患者の状態、忍容性等に応じて適宜増量できるが、15mgを超えないこと。
【薬理作用】 メトトレキサートは5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミドトランスホルミラーゼ(ATIC)阻害を介したアデノシン情報伝達促進により、各種免疫細 胞に対して抗炎症作用を示す。また、メトトレキサートのジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)阻害を介したテトラヒドロビオプテリン(BH4)枯渇により一酸化窒素合成酵素(NOS)脱共役が生じ、T細胞のアポトーシスに対する感受性が増加し て免疫反応が抑制される。さらに、メトトレキサートはアデノシン情報伝達促進作 用及びBH4枯渇によるNOS脱共役を介してT細胞や滑膜線維芽細胞(FLS) での核内因子κB(NF-κB)活性化を抑制する。以上のように、メトトレキサー トは関節リウマチの病態形成に関与する種々の細胞に対して、アデノシン情報伝達 を始めとする複数の分子作用機序を介して免疫及び炎症性反応を抑制し、抗関節リ ウマチ作用を示すと考えられる。
【主な副作用】
骨髄抑制、感染症、結核、劇症肝炎、肝炎、急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー、間質性肺炎、肺線維症、胸水、中毒性表皮壊死融解症、出血性腸炎、 壊死性腸炎、膵炎、骨粗鬆症、脳症、ショック、アナフィラキシー 等
【承認状況】
令和4年9月 薬事承認
○ また、フレマネズマブについては、在宅自己注射の対象薬剤に係る運用基準(令和2 年12月23日中医協総会において承認)において、対象薬剤の要件として「医薬品医 療機器法上の用法・用量として、維持期における投与間隔が概ね4週間以内のもの。」 としていることから、4週間に1回の投与の場合のみ在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加してはどうか。