小児

小児の薬物治療の基本的な考え方

💡
「小児は成人のミニチュアではない」
成人量を体重換算するだけでは不十分。薬物の代謝・排泄機能の未熟さなど、小児特有の生理機能を考慮する必要がある。つまり、「量」だけでなく「質」的にも配慮が必要

小児の薬物動態(ADME)の特徴

① 身体が成長過程にある

  • 薬物動態の各過程(吸収・分布・代謝・排泄)は、成長にともなって一斉に成熟するのではない
  • それぞれの身体機能が、早く成熟するもの・遅く成熟するものがあるため、薬物動態は成長に伴って変化する
  • 骨や細胞分裂が活発 → 骨発育に影響する薬は小児では禁忌だが、骨が完成している成人では禁忌ではない場合がある

② 血液脳関門(BBB)が未発達

  • BBBは薬物などの異物から脳を守るバリア
  • 小児ではBBBがまだ未発達であるため、薬物が脳に移行しやすい
  • 中枢神経系への感受性が高い(薬が影響しやすい)

③ 薬物代謝・排泄が未熟

  • 薬物代謝酵素(CYP)の活性は、新生児では低く、加齢とともに成熟する
  • CYPの分子種ごとに成熟のタイミングが異なる
  • グルクロン酸抱合能も低い
  • 代謝が未熟 → 成人と同じ量(体重換算)を投与すると薬物血中濃度が高くなりすぎるおそれがある

④ 細胞外液が多い

  • 小児は成人と比べて体重あたりの水分量が多い(特に細胞外液)
  • 水溶性の高い薬物は、その分薄められる(分布容積が大きい)
  • 例:抗菌薬は水溶性が高いため、体重あたりの投与量が多めに設定されているものがある
特徴小児の状態薬物動態への影響
BBB未発達中枢神経系への感受性が高い
薬物代謝酵素(CYP)活性が低い(未熟)血中濃度が上昇しやすい
グルクロン酸抱合能力が低い代謝が遅延する
体水分量細胞外液が多い水溶性薬物の分布容積が大きい
腎機能未熟(特に新生児)排泄が遅延する

小児の薬用量

① 添付文書の確認

まず添付文書の記載を確認する。年齢ごとや体重あたりの用量が記載されている。

② 成人量からの換算

添付文書に記載がない場合、成人の薬用量から換算する。
  • Augsberger(アウグスバーガー)の式 … 年齢から計算する
    • 体表面積に比例しており、臨床でもよく用いられる
    • 体表面積は血液量と比例 → 薬物血中濃度に反映される
  • von Harnack(フォン・ハルナック)の換算表 … 年齢から判別する
    • 例:1歳であれば成人量の 1/4 が目安

小児で注意すべき薬剤の例:解熱鎮痛薬

小児がウイルス疾患にかかったとき、急性脳症のリスクを考慮しなければならない。
薬剤小児への使用
アスピリン🚫 禁忌:ウイルス性疾患後のライ症候群との関連性が疑われる
ジクロフェナク🚫 禁忌:インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させる
メフェナム酸🚫 禁忌:インフルエンザ脳症の死亡率を上昇させる
アセトアミノフェン✅ 小児にも安心して使える解熱鎮痛薬

小児への与薬時の注意事項

服薬に用いる飲料

  • 水・白湯(原則):薬の味や効果に影響しない
  • ミルク ❌:味が変化してミルク嫌いに繋がる可能性。相互作用で薬効が減弱する場合もある
  • ジュース(原則 ❌):味が変化したり薬効が変化する可能性があるが、飲みにくい薬で例外的に使用する場合もある

乳幼児の服薬方法

  • 散剤は少量の水で練って頬の内側に塗りつけると服薬可能

矯味(きょうみ)

  • 単シロップ:透明の甘いシロップで、矯味に使用される
⚠️
乳幼児に「はちみつ」を使ってはいけない
ボツリヌス菌の芽胞が含まれる可能性があり、腸管機能が未発達な乳児では乳児ボツリヌス症を発症する危険性がある。生後1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えてはいけない。

まとめ

  • 小児は成人のミニチュアではなく、薬物動態が成人と質的に異なる
  • BBBの未発達、代謝酵素の未熟さ、細胞外液の多さなどを考慮する
  • 薬用量は添付文書を確認し、記載がなければAugsbergerの式等で換算する
  • 解熱鎮痛薬はアセトアミノフェンが第一選択。アスピリン・ジクロフェナク・メフェナム酸は禁忌
  • 与薬時は服薬方法・飲料の選択・矯味にも配慮が必要