強心薬
強心薬は、心筋の収縮力を増強(陽性変力作用)することで心拍出量を改善する薬。急性心不全の治療や周術期管理に用いられる。
- カテコラミン系:β₁受容体刺激 → アデニル酸シクラーゼ活性化 → cAMP↑ → 細胞内Ca²⁺↑ → 心収縮力↑
- PDE Ⅲ阻害薬:cAMP分解を抑制 → 細胞内cAMP↑ → 心収縮力↑ + 血管拡張(強心+血管拡張=inodilator)
- ジギタリス:Na⁺-K⁺ ATPase阻害 → 細胞内Ca²⁺↑ → 心収縮力↑(別ページ参照)
| サブグループ | 代表薬(一般名) | 先発品例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| カテコラミン系 | ドブタミン | ドブトレックス® | β₁選択的、心拍出量↑、急性心不全に |
| ドパミン | イノバン® | 用量依存で作用が変化(腎血流↑→心収縮↑→血管収縮) | |
| ノルアドレナリン | ノルアドリナリン® | α₁+β₁刺激、敗血症性ショックの第一選択 | |
| PDE Ⅲ阻害薬 | ミルリノン | ミルリーラ® | inodilator、β遮断薬使用中でも有効 |
| オルプリノン | コアテック® | 周術期の心不全管理に |
- 持続点滴静注が基本 → 輸液ポンプ必須、正確な投与速度管理
- 不整脈の観察(心室性不整脈のリスク)→ 心電図モニタリング継続
- 血圧・心拍数・尿量のバイタル頻回チェック
- カテコラミン系:血管外漏出で組織壊死 → 投与ルートの確認・刺入部観察
- ドパミン:用量による作用の違いを理解(低用量:腎血流↑、中用量:心収縮↑、高用量:血管収縮)
- 急な中止は避ける → 漸減が原則
| ジギタリス製剤 | カテコラミン系 | PDEⅢ阻害薬 | |
|---|---|---|---|
| 代表薬 | ジゴキシン | ドパミン、ドブタミン | ミルリノン、オルプリノン |
| 作用機序 | Na⁺/K⁺-ATPアーゼ阻害→細胞内Ca↑ | β1受容体刺激→cAMP↑ | PDE3阻害→cAMP↑(β受容体を介さない) |
| 主な投与経路 | 経口・静注(慢性〜) | 持続静注(急性期) | 持続静注(急性期) |
| 心拍数 | ↓(房室伝導抑制) | ↑(頻脈になりやすい) | 軽度↑ |
| 血管・血圧 | 大きな血管作用なし | 薬・用量による(高用量ドパミン・ノルアドで昇圧) | 血管拡張(後負荷↓)→血圧低下しやすい |
| 主な使いどころ | 心房細動を伴う慢性心不全(レート調節+強心) | 急性心不全・ショック(低心拍出・低血圧) | β遮断薬使用中・カテコラミン抵抗性、後負荷を下げたい例 |
| 主な副作用・注意 | ジギタリス中毒、治療域が狭い(TDM)、低Kで中毒 | 頻脈・不整脈、心筋酸素需要↑、漏出で組織壊死 | 血圧低下、心室性不整脈、血小板減少(ミルリノン) |
- 急性か慢性か:ショック・急性心不全などの急性期はカテコラミンまたはPDEⅢ阻害薬(いずれも持続静注)。心房細動を伴う慢性心不全のレート調節+軽度の強心にはジギタリス。
- 血圧で選ぶ:血圧が低い→カテコラミン(昇圧が必要ならノルアドレナリンや高用量ドパミン)。血圧が保たれていて後負荷を下げたい→PDEⅢ阻害薬(inodilator)。
- β遮断薬内服中で効きにくい:β受容体を介さないPDEⅢ阻害薬が有利。
- 共通の注意:cAMPを上げるカテコラミン・PDEⅢ阻害薬は心筋酸素需要を増やし不整脈・長期予後悪化の懸念があるため短期使用が基本。ジギタリスは心拍数を下げるが中毒に注意(TDM)。