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強心薬

強心薬

① 薬効群の概要

強心薬は、心筋の収縮力を増強(陽性変力作用)することで心拍出量を改善する薬。急性心不全の治療や周術期管理に用いられる。

② 作用機序

  • カテコラミン系:β₁受容体刺激 → アデニル酸シクラーゼ活性化 → cAMP↑ → 細胞内Ca²⁺↑ → 心収縮力↑
  • PDE Ⅲ阻害薬:cAMP分解を抑制 → 細胞内cAMP↑ → 心収縮力↑ + 血管拡張(強心+血管拡張=inodilator)
  • ジギタリス:Na⁺-K⁺ ATPase阻害 → 細胞内Ca²⁺↑ → 心収縮力↑(別ページ参照)

③ サブグループと代表薬

サブグループ代表薬(一般名)先発品例特徴
カテコラミン系ドブタミンドブトレックス®β₁選択的、心拍出量↑、急性心不全に
ドパミンイノバン®用量依存で作用が変化(腎血流↑→心収縮↑→血管収縮)
ノルアドレナリンノルアドリナリン®α₁+β₁刺激、敗血症性ショックの第一選択
PDE Ⅲ阻害薬ミルリノンミルリーラ®inodilator、β遮断薬使用中でも有効
オルプリノンコアテック®周術期の心不全管理に

④ 看護のポイント(観察事項)

  • 持続点滴静注が基本 → 輸液ポンプ必須、正確な投与速度管理
  • 不整脈の観察(心室性不整脈のリスク)→ 心電図モニタリング継続
  • 血圧・心拍数・尿量のバイタル頻回チェック
  • カテコラミン系:血管外漏出で組織壊死 → 投与ルートの確認・刺入部観察
  • ドパミン:用量による作用の違いを理解(低用量:腎血流↑、中用量:心収縮↑、高用量:血管収縮)
  • 急な中止は避ける → 漸減が原則

⑤ 3系統の比較(ジギタリス・カテコラミン・PDEⅢ阻害薬)

ジギタリス製剤カテコラミン系PDEⅢ阻害薬
代表薬ジゴキシンドパミン、ドブタミンミルリノン、オルプリノン
作用機序Na⁺/K⁺-ATPアーゼ阻害→細胞内Ca↑β1受容体刺激→cAMP↑PDE3阻害→cAMP↑(β受容体を介さない)
主な投与経路経口・静注(慢性〜)持続静注(急性期)持続静注(急性期)
心拍数↓(房室伝導抑制)↑(頻脈になりやすい)軽度↑
血管・血圧大きな血管作用なし薬・用量による(高用量ドパミン・ノルアドで昇圧)血管拡張(後負荷↓)→血圧低下しやすい
主な使いどころ心房細動を伴う慢性心不全(レート調節+強心)急性心不全・ショック(低心拍出・低血圧)β遮断薬使用中・カテコラミン抵抗性、後負荷を下げたい例
主な副作用・注意ジギタリス中毒、治療域が狭い(TDM)、低Kで中毒頻脈・不整脈、心筋酸素需要↑、漏出で組織壊死血圧低下、心室性不整脈、血小板減少(ミルリノン)

⑥ 使い分けのポイント

  • 急性か慢性か:ショック・急性心不全などの急性期はカテコラミンまたはPDEⅢ阻害薬(いずれも持続静注)。心房細動を伴う慢性心不全のレート調節+軽度の強心にはジギタリス。
  • 血圧で選ぶ:血圧が低い→カテコラミン(昇圧が必要ならノルアドレナリンや高用量ドパミン)。血圧が保たれていて後負荷を下げたい→PDEⅢ阻害薬(inodilator)。
  • β遮断薬内服中で効きにくい:β受容体を介さないPDEⅢ阻害薬が有利。
  • 共通の注意:cAMPを上げるカテコラミン・PDEⅢ阻害薬は心筋酸素需要を増やし不整脈・長期予後悪化の懸念があるため短期使用が基本。ジギタリスは心拍数を下げるが中毒に注意(TDM)。