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統合失調症

統合失調症

統合失調症とは

脳内のドパミン系を中心とする神経伝達物質の機能異常が関与する精神疾患。陽性症状(幻覚・妄想)、陰性症状(意欲低下・感情鈑麻・社会的引きこもり)、認知機能障害 を主徴とする。人口の約1%に発症し、思春期〜青年期に発症しやすい。治療の中心は抗精神病薬(抱精神病薬)である。

病態:ドパミン仮説

💡
ドパミン仮説(古典的仮説)
  • 中脳辺縁系:ドパミン過剰 → 陽性症状(幻覚・妄想)
  • 前頭葉皮質:ドパミン不足 → 陰性症状(意欲低下・感情鈑麻)・認知機能障害
→ 抗精神病薬は主に D₂受容体を遮断 することで陽性症状を改善
セロトニン・ドパミン仮説(非定型薬の作用機序)
  • 非定型抗精神病薬は 5-HT₂A受容体も遮断
  • 5-HT₂A遮断 → 前頭葉でのドパミン遊離促進 → 陰性症状・認知機能の改善 も期待
  • 同時に黒質線条体系でのD₂遮断を緩和 → 錐体外路症状(EPS)が少ない

主な症状

分類症状内容
陽性症状幻覚(特に幻聴)・妄想(被害妄想等)・思考障害・興奮「存在しないものが加わる」症状。中脳辺縁系のドパミン過剰が関与。抗精神病薬が有効
陰性症状意欲低下・感情鈑麻・社会的引きこもり・快楽消失・寝言の減少「本来あるべきものが失われる」症状。前頭葉のドパミン不足が関与。定型薬では改善しにくい
認知機能障害注意力・記憶力・実行機能の低下社会復帰を妨げる要因。現在の薬剤での改善は限定的

薬物治療:抗精神病薬

定型抗精神病薬(第一世代:FGA)

作用機序:中脳辺縁系の D₂受容体を遮断 → 陽性症状を改善
代表薬(一般名)先発品例特徴
クロルプロマジンコントミン®、ウインタミン®フェノチアジン系。最も古典的な抗精神病薬
ハロペリドールセレネース®ブチロフェノン系。強力なD₂遮断。EPSが出やすい
⚠️
定型薬の副作用(D₂遮断による)
  • 錐体外路症状(EPS):パーキンソニズム・急性ジストニア・アカシジア・遅発性ジスキネジア(黒質線条体系のD₂遮断)
  • 高プロラクチン血症:無月経・乳汁分泌・性機能障害(漏斗下垂体系のD₂遮断)
  • 悪性症候群(NMS):高熱・筋強剛・意識障害・CK上昇(稀だが致死的)
  • 陰性症状の改善は乏しい

非定型抗精神病薬(第二世代:SGA)

作用機序:D₂受容体遮断+ 5-HT₂A受容体遮断(SDA)または 多受容体作用(MARTA) → 陽性症状の改善+陰性症状・認知機能の改善も期待+EPSが少ない
代表薬(一般名)先発品例特徴
リスペリドンリスパダール®SDA。汎用。高プロラクチン血症のリスクあり
オランザピンジプレキサ®MARTA。陰性症状にも有効。体重増加・耐糖能異常(糖尿病) に注意
クエチアピンセロクエル®MARTA。鎮静作用が強い。糖尿病リスク。DLBの幻覚にも使用
アリピプラゾールエビリファイ®D₂部分アゴニスト(DSS)。EPS・高PRL血症・代謝性副作用が少ない
クロザピンクロザリル®治療抵抗性統合失調症に唯一適応。無顔粒球症のリスクがあり定期的な血液検査が必須(CPMS)

定型薬と非定型薬の比較

項目定型(FGA)非定型(SGA)
主な作用機序D₂受容体遮断D₂+5-HT₂A遮断(SDA)または多受容体作用(MARTA)
陽性症状有効有効
陰性症状改善に乏しい改善が期待できる
EPS(錐体外路症状)出やすい少ない
高PRL血症起こしやすい薬剤による(リスペリドンは起こしやすい)
代謝性副作用少ない体重増加・耐糖能異常・脂質異常(特にオランザピン・クエチアピン)
現在の位置づけ第二選択的第一選択

抗精神病薬の主な副作用

副作用機序対策・注意
錐体外路症状(EPS)黒質線条体系のD₂遮断抗コリン薬(ビペリデン)で対応。非定型への変更も検討
高プロラクチン血症漏斗下垂体系のD₂遮断無月経・乳汁分泌。アリピプラゾールへの変更を検討
代謝性副作用多受容体作用(H₁・5-HT₂C遮断等)体重増加・糖尿病・脂質異常。定期的な血糖・脂質モニタリング
悪性症候群(NMS)D₂遮断による中枢性体温調節障害高熱・筋強剛・意識障害・CK↑。終急対応が必要
過鎮静H₁・α₁遮断眼気・傾眠・転倒リスク
QT延長心筋Kチャネル阻害定期的な心電図モニタリング
無顔粒球症クロザピン特有定期的な血液検査(CPMS)が必須

看護のポイント(観察事項)

🩺
  • 陽性症状の変化:幻覚・妄想の内容・頻度の観察。幻聴に対して「否定しない・肯定しない」姿勢
  • EPSの観察:振戦・固縮・動作緩慢(パーキンソニズム)、そわそわ感(アカシジア)、急性の筋緊張(急性ジストニア)
  • 代謝性副作用のモニタリング:体重・BMI・血糖・脂質の定期測定(特にオランザピン・クエチアピン)
  • 服薬アドヒアランス:統合失調症では病識が乏しく自己中断が多い → 服薬の重要性を繰り返し説明、LAI(持続性注射剤)の活用も検討
  • 悪性症候群(NMS)の早期発見:高熱・筋強剛・意識障害・発汗 → 終急対応が必要
  • クロザピン使用時:定期的な血液検査(白血球・好中球)が必須(CPMS)
  • 急な中止を避ける → 離脱症状・再発のリスク
  • 転倒予防:過鎮静・起立性低血圧・EPSによる転倒リスク