アルツハイマー型認知症
病態
アルツハイマー型認知症(AD)は、認知症の中で 最も多い病型(約60〜70%)。脳内への アミロイドβ(Aβ)蛋白の異常蓄積(老人斑)と タウ蛋白の過リン酸化(神経原線維変化)により、神経細胞が進行性に脱落・死滅する神経変性疾患。
主な病理変化
- 老人斑:アミロイドβ(Aβ)蛋白の細胞外蓄積
- 神経原線維変化(NFT):過リン酸化タウ蛋白の細胞内蓄積
- コリン作動性神経の脱落 → 脳内 アセチルコリン(ACh)の減少
- 脳萎縮:特に海馬・側頭葉・頭頂葉から始まる
主な症状
| 分類 | 中核症状 | 行動・心理症状(BPSD) |
|---|---|---|
| 内容 | 記憶障害(近時記憶から) 見当識障害(時間→場所→人物) 判断力・実行機能の低下 失語・失行・失認 | 妄想(物盗られ妄想等) 徘徊・興奮・易怒性 無気力・うつ症状 睡眠障害・食行動異常 |
| 治療の対象 | 抜本的治療は困難 → 進行抑制が目標 | 非薬物的介入が基本、必要時に薬物療法 |
治療薬
① コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬
脳内のアセチルコリン(ACh)の分解を抑制し、シナプス間のACh濃度を上昇させることで、認知機能の低下を遅らせる。
| 一般名 | 先発品 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ドネペジル | アリセプト® | 軽度〜高度 | AChE選択的阻害。最も広く使用。経口・貼付剤あり。レビー小体型認知症にも適応 |
| ガランタミン | レミニール® | 軽度〜中等度 | AChE阻害 + ニコチン性ACh受容体のAPL作用(二重作用) |
| リバスチグミン | リバスタッチ® イクセロン® | 軽度〜中等度 | AChE + BuChE阻害。貼付剤(パッチ) → 崥下障害がある患者に有用 |
主な副作用(末梢性コリン作用):
- 消化器症状:悪心・嘔吐・下痢・食欲不振(最多、投与初期・増量時)
- 循環器:徐脈・失神(迷走神経刺激)
- → 低用量から開始し漸増 が基本
② NMDA受容体拮抗薬
過剰なグルタミン酸によるNMDA受容体の過剰活性化(興奮毒性)を抑制し、神経細胞死を防ぐ。
| 一般名 | 先発品 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| メマンチン | メマリー® | 中等度〜高度 | ChE阻害薬とは作用機序が異なるため 併用可能。消化器症状は比較的少ない。めまい・頭痛・便秘・傾眠などに注意。腎機能障害時は用量調節 |
③ 疾患修飾薬(新規治療薬)
近年、アミロイドβを標的とした 疾患修飾薬(DMT) が登場。症状の進行抑制だけでなく、病態そのものの進行を遅らせる ことを目的とする。
| 一般名 | 先発品 | 特徴 |
|---|---|---|
| レカネマブ | レケンビ® | 抜アミロイドβモノクローナル抗体。脳内Aβの除去を促進。早期アルツハイマー病が対象。点滴静注(2週間に1回)。副作用として ARIA(アミロイド関連画像異常:脳浮腫・微小出血)に注意 → 定期MRIモニタリングが必要 |
| ドナネマブ | キサンビ® | 抗アミロイドβモノクローナル抗体。レカネマブと同様にAβ除去を促進。点滴静注(4週間に1回)。ARIAのリスクあり |
看護のポイント(観察事項)
- ChE阻害薬:悪心・嘔吐・下痢・食欲不振の観察(特に投与初期・増量時)
- 徐脈の観察:脈拍モニタリング、ふらつき・失神の有無
- メマンチン:めまい・傾眠・便秘の観察、腎機能の確認
- レカネマブ等:ARIAの征候(頭痛・混乱・視覚変化)の観察、定期MRIのスケジュール管理
- 服薬アドヒアランス:認知機能低下による飲み忘れ → 介護者への服薬支援指導
- 抗コリン薬の回避:ChE阻害薬の効果を打ち消すため、併用に注意
- 転倒予防:見当識障害・徘徊による転倒リスクの評価
- 栄養状態:ChE阻害薬による食欲不振・体重減少のモニタリング
- BPSDへの対応:非薬物的介入(環境調整・コミュニケーション)を基本とし、必要時に薬物療法を検討
- 介護者支援:介護負担の評価とサポート体制の確保
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