グリセリン
使用時の注意
⚠️ 作用機序の特徴
- 浸透圧作用:高張のグリセリン液が直腸粘膜から水分を引き込む → 便を軟化・膨張
- 機械的刺激:注入された液量が直腸壁を伸展 → 排便反射を誘発
- 潤滑作用:グリセリンの滑りにより便の排出を促進
- 3つの作用が組み合わさって速やかな排便を促す
- 経口下剤が無効な場合や、速やかに排便が必要な場合のレスキュー薬
🚨 最大のリスク:直腸穿孔
- カテーテル(ノズル)の挿入時に直腸壁を損傷・穿孔する危険性
- 特に高齢者(直腸壁が脆弱)、炎症性腸疾患の患者でリスク↑
- 予防策:
- ノズル先端に潤滑剤(ワセリン等)を十分に塗布
- 挿入の深さは成人で5〜6cm(それ以上深く入れない)
- 左側臥位で実施(S状結腸の走行に沿う → 安全に注入できる)
- 抵抗を感じたら無理に押し込まない
⚠️ その他のリスク
- 血圧変動・迷走神経反射:直腸刺激により徐脈・血圧低下・失神が起こることがある
- 溶血:グリセリンが血管内に入ると赤血球を破壊 → 直腸粘膜に傷がある場合は禁忌
- 腎不全の悪化:溶血によるヘモグロビン尿 → 腎障害(極めてまれ)
- 電解質異常:繰り返し使用で脱水・電解質バランスの乱れ
💊 他のレスキュー薬との比較
- グリセリン浣腸:効果発現 数分〜15分。最も速効。直腸穿孔に注意
- ビサコジル坐剤(テレミンソフト®):効果発現 15〜60分。穿孔リスクは低い
- 新レシカルボン®坐剤:効果発現 10〜30分。CO₂による穏やかな刺激
- センノシド(プルゼニド®):効果発現 8〜12時間。経口。翌朝排便型
🚫 禁忌
- 腸管穿孔またはその疑い
- 腸閉塞
- 腹腔内炎症(虫垂炎等)
- 直腸粘膜に傷・出血がある場合(溶血→腎障害のリスク)
- 全身衰弱の強い患者(迷走神経反射のリスク↑)
看護師向け:観察事項
📋 実施前の確認(重要)
- 医師の指示内容を確認(量・タイミング・レスキュー基準)
- 直腸・肛門の異常がないか確認(出血・痔核・裂肛 → 医師に報告)
- 腹部症状の確認(激しい腹痛・腹部膨満 → 腸閉塞の除外が先)
- グリセリン液の温度確認:体温程度(約37〜38℃)に加温(冷たいと腸管攣縮を誘発)
🩸 実施手順のポイント
- 体位:左側臥位(右膝を軽く屈曲)→ S状結腸の走行に沿う
- ノズルに潤滑剤を十分に塗布
- 挿入の深さ:成人 5〜6cm、小児はより浅く
- ゆっくり注入する(急速注入は腸管攣縮・痛みの原因)
- 抵抗を感じたら挿入を中止し、角度を変えるか医師に相談
- 注入後はしばらく我慢してもらう(3〜5分保持が理想 → 効果↑)
⚡ 実施中〜実施後の観察
- バイタルサインの観察(特に血圧・脈拍)
- 迷走神経反射の徴候:顔面蒼白・冷汗・徐脈・めまい・意識レベル低下
- 発現時:浣腸中止、仰臥位+下肢挙上、医師に報告
- 排便後の便の性状・量・血液混入の有無を確認
- 腹痛の程度を確認(強い腹痛の持続→穿孔の可能性→直ちに医師に報告)
👴 高齢者への特別な注意
- 直腸壁が脆弱 → 穿孔リスクが最も高い対象
- 心疾患がある場合 → 迷走神経反射で致死的不整脈のリスク
- トイレへの移動時の転倒予防(便意切迫で慌てやすい)
- 可能であればポータブルトイレをベッドサイドに準備
💬 患者教育(自宅で使用する場合)
- 左側臥位で行うこと(仰向けやトイレ上での実施は避ける)
- ノズルは無理に押し込まない
- 液は温めてから使用する(ぬるま湯で容器ごと加温)
- 注入後はすぐにトイレに行かず3〜5分我慢する → 効果が高まる
- 血便が出た場合は直ちに使用を中止し受診
