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気管支喘息

気管支喘息

① 疾患の概要

気管支喘息は、気道の慢性炎症を基盤とし、さまざまな刺激に対する気道過敏性の亢進と、可逆性の気道狭窄(気流制限)を特徴とする疾患である。発作性の喘鳴・呼吸困難・咳嗽・胸苦しさを繰り返す。

② 病態生理

気道炎症(根本的な病態)

  • 好酸球・肥満細胞・Th2リンパ球などの免疫細胞が気道に集積
  • 炎症性メディエーター(ヒスタミン・ロイコトリエン・サイトカインなど)が放出される
  • 気道粘膜の浮腫・粘液分泌過多・気道壁のリモデリング(線維化・平滑筋肥厚)

気道狭窄の3つの機序

  1. 気管支平滑筋の収縮(急性の発作時に主体)
  1. 気道粘膜の浮腫・炎症(慢性炎症による)
  1. 粘液栓の形成(粘液の過分泌による気道閉塞)

気道過敏性

  • 健常者では反応しないような弱い刺激(冷気・運動・煙・アレルゲンなど)でも気管支が過剰に収縮する
  • 慢性炎症が持続するほど気道過敏性が亢進する
💡
喘息 = 「気道の慢性炎症」が本質。発作時の気管支収縮は氷山の一角であり、発作がない時期にも炎症は持続している。

③ 分類

病型分類

病型特徴好発年齢
アトピー型IgE介在のアレルギー反応。ダニ・花粉・ペットなどのアレルゲンが誘因。アレルギー素因あり小児〜若年
非アトピー型明確なアレルゲンなし。感染・運動・ストレスなどが誘因。好酸球性炎症が関与成人

重症度分類(治療ステップ)

重症度症状の頻度治療ステップ
軽症間欠型週1回未満の症状ステップ1
軽症持続型週1回以上、毎日ではないステップ2
中等症持続型毎日症状ありステップ3
重症持続型常に症状あり、日常生活に支障ステップ4

④ 治療の基本方針

⚠️
喘息治療の2本柱:
  1. 長期管理薬(コントローラー) → 炎症を抑えて発作を予防する(毎日使用)
  1. 発作治療薬(リリーバー) → 急性発作時に速やかに気道を広げる(発作時のみ使用)

⑤ 長期管理薬(コントローラー)

発作がなくても毎日継続使用して気道炎症を抑え、発作を予防する薬。

吸入ステロイド薬(ICS)― 治療の中心

  • 気道炎症を強力に抑制する第一選択薬
  • 代表薬:フルチカゾン(フルタイド®)、ブデソニド(パルミコート®)、ベクロメタゾン(キュバール®)
  • 吸入のため全身性副作用は少ないが、口腔カンジダ症・嗄声に注意 → 吸入後のうがいが必須

ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)

  • ロイコトリエンによる気管支収縮・粘液分泌・炎症を抑制
  • 代表薬:モンテルカスト(シングレア®/キプレス®)、プランルカスト(オノン®)
  • 経口薬で使いやすく、運動誘発性喘息やアスピリン喘息にも有効

長時間作用性β₂刺激薬(LABA)

  • 気管支平滑筋を弛緩させ、気道を持続的に拡張
  • 代表薬:サルメテロール(セレベント®)、ホルモテロール(オーキシス®)
  • 必ずICSと併用する(LABA単独は喘息死のリスク増加のため禁忌)

ICS/LABA配合剤(最も広く使用)

  • 代表薬:フルチカゾン/サルメテロール(アドエア®)、ブデソニド/ホルモテロール(シムビコート®)
  • シムビコート®はSMART療法(維持療法+発作時の追加吸入)にも使用可能

長時間作用性抗コリン薬(LAMA)

  • 気管支平滑筋のムスカリン受容体(M₃)を遮断し、気管支拡張
  • 代表薬:チオトロピウム(スピリーバ®)
  • ICS/LABAで効果不十分な場合の追加薬

抗IgE抗体(生物学的製剤)

  • オマリズマブ(ゾレア®):IgEに結合し、アレルギー反応の起点を遮断
  • 重症アトピー型喘息に使用

抗IL-5抗体など(その他の生物学的製剤)

  • メポリズマブ(ヌーカラ®)、ベンラリズマブ(ファセンラ®):好酸球性炎症を抑制
  • デュピルマブ(デュピクセント®):IL-4/IL-13を阻害、Th2型炎症全般を抑制
  • 重症喘息で既存治療に不十分な場合に使用

テオフィリン徐放製剤

  • 気管支拡張作用+抗炎症作用
  • 代表薬:テオドール®、ユニフィル®
  • 有効血中濃度域が狭い(TDM:治療薬物モニタリングが必要)
  • 中毒症状:悪心・嘔吐・頻脈・痙攣

⑥ 発作治療薬(リリーバー)

急性発作時に速やかに気管支を拡張させ、症状を緩和する薬。

短時間作用性β₂刺激薬(SABA)

  • 気管支平滑筋のβ₂受容体を刺激 → 速やかに気管支拡張
  • 代表薬:サルブタモール(サルタノール®)、プロカテロール(メプチン®)
  • 吸入で数分以内に効果発現、持続時間は4〜6時間
  • 頻回使用は喘息コントロール不良のサイン → 長期管理薬の見直しが必要

全身性ステロイド薬(中〜重症発作時)

  • プレドニゾロン経口、ヒドロコルチゾン・メチルプレドニゾロン点滴静注
  • 気道炎症を強力に抑制し、発作の悪化を防ぐ
  • 短期間(3〜7日)で使用し、速やかに減量・中止

アドレナリン(重症発作時)

  • 皮下注射で使用。β₂刺激作用による気管支拡張+α₁刺激作用による粘膜浮腫軽減
  • 重症発作・アナフィラキシー合併時に使用

アミノフィリン点滴静注(重症発作時)

  • テオフィリンの注射剤。気管支拡張作用
  • 中毒域に注意(TDM必要)

⑦ 治療薬の比較まとめ

分類代表薬主な作用使用場面
ICSフルチカゾン、ブデソニド気道炎症の抑制長期管理の第一選択
LTRAモンテルカスト、プランルカストLT受容体拮抗 → 抗炎症・気管支拡張長期管理(経口で使いやすい)
LABAサルメテロール、ホルモテロール持続的気管支拡張長期管理(必ずICSと併用)
ICS/LABA配合アドエア®、シムビコート®抗炎症+気管支拡張長期管理の主力
LAMAチオトロピウム抗コリン → 気管支拡張追加療法
SABAサルブタモール、プロカテロール速効性気管支拡張発作時の第一選択
テオフィリンテオドール®気管支拡張+抗炎症追加療法(TDM必要)
生物学的製剤オマリズマブ、メポリズマブ等IgE・IL-5等を標的重症難治性喘息

⑧ 看護のポイント(観察事項)

  • 吸入指導:正しい吸入手技の確認・指導(デバイスによって手技が異なる)
  • 吸入後のうがい:ICS使用時は口腔カンジダ症・嗄声の予防のため必須
  • ピークフロー値のモニタリング:自己管理の指標
  • SABA使用頻度の確認:頻回使用はコントロール不良のサイン
  • アドヒアランスの確認:症状がなくても長期管理薬は継続する必要があることを説明
  • 発作時の対応指導:発作時の薬の使い方、受診のタイミング(アクションプラン)
  • 増悪因子の回避指導:アレルゲン(ダニ・ペット)、喫煙、冷気、ストレスなど
  • テオフィリン使用時:中毒症状(悪心・嘔吐・動悸・痙攣)の観察、カフェイン摂取の指導
  • 全身性ステロイド使用時:短期間使用でも血糖値・感染徴候に注意
  • 生物学的製剤使用時:アナフィラキシーの観察(投与後30分は経過観察)