気管支拡張薬
気管支拡張薬は、気管支平滑筋を弛緩させて気道を拡張し、呼吸困難・喘鳴・咳嗽などを改善する薬剤群の総称。 主に β₂刺激薬、抗コリン薬(抜コリン薬)、キサンチン系薬 の3系統に分類され、喘息・COPD治療において中心的な役割を担う。
| 系統 | 作用機序 | 主な結果 |
|---|---|---|
| β₂刺激薬 | β₂受容体刺激 → Gs → AC活性化 → cAMP↑ | 平滑筋弛緩(最も強力な気管支拡張作用) |
| 抗コリン薬 | M₃受容体遮断 → Gq抑制 → IP₃/Ca²⁺↓ | 迷走神経による気管支収縮・粘液分泌抑制 |
| キサンチン系薬 | PDE阻害 → cAMP↑(分解抑制) | 平滑筋弛緩+抗炎症作用+横隔膜収縮力増強 |
- 3系統は 異なる機序 で気管支拡張をもたらすため、併用で相加・相乗効果 が期待できる
- β₂刺激薬が最も強力な気管支拡張作用をもつ
- 抗コリン薬は迷走神経優位のCOPDに特に有効
β₂刺激薬
| 分類 | 主な薬剤 | 作用時間 | 用途 |
|---|---|---|---|
| SABA(短時間作用型) | サルブタモール(サルタノール®)、プロカテロール(メプチン®) | 4〜6時間 | 発作時のレスキュー(頓用) |
| LABA(長時間作用型) | サルメテロール(セレベント®)、ホルモテロール(オーキシス®)、ツロブテロール(ホクナリン®テープ) | 12〜24時間 | 長期管理(喘息ではICSと併用必須) |
抗コリン薬(抜コリン薬)
| 分類 | 主な薬剤 | 作用時間 | 用途 |
|---|---|---|---|
| SAMA(短時間作用型) | イプラトロピウム(アトロベント®) | 4〜6時間 | 発作時のSABAとの併用(重症発作時) |
| LAMA(長時間作用型) | チオトロピウム(スピリーバ®)、グリコピロニウム(シーブリ®) | 24時間以上 | COPDの第一選択薬。喘息でも併用あり。 |
キサンチン系薬
| 一般名 | 商品名 | 特徴・備考 |
|---|---|---|
| テオフィリン | テオドール®、ユニフィル® | PDE阻害薬。有効血中濃度が狭く、TDM(血中濃度モニタリング)が必要。治療域:5〜15μg/mL |
| アミノフィリン | ネオフィリン® | テオフィリンの徒薬。点滴製剤があり、重症発作時に使用。 |
配合剤(主な組み合わせ)
| 配合内容 | 代表的な商品名 | 用途 |
|---|---|---|
| ICS/LABA | アドエア®、シムビコート®、レルベア® | 喘息の長期管理(ステップアップ) |
| LAMA/LABA | ウルティブロ®、スピオルト®レスピマト | COPDの長期管理(相加効果) |
| ICS/LAMA/LABA(トリプル) | テリルジー®、ビレーズトリ® | 重症COPD・難治性喘息 |
| SABA/SAMA | コンビベント® | 急性発作時(相加効果) |
- 吸入手技の確認・指導(効果は手技依存)
- pMDI:噴霧と吸気の同調(難しい)→ スペーサー推奨
- DPI:強く深く速く吸入(十分な吸気流量が必要)
- SMI(ソフトミスト:スピリーバ®):噴霧がゴャから吸入しやすい
- 吸入後:息止め(5〜10秒) → うがい(ICS含有製剤の場合)
- 副作用の観察(系統別)
- β₂刺激薬:動悸・頻脈・手指振戦・低カリウム血症・高血糖
- 抗コリン薬:口渇・排尿困難・便秘・眼圧上昇(緑内障注意)
- キサンチン系薬:悪心・嘔吐・不整脈・痙放(中毒症状)→ TDM必須
- SABA使用頻度のモニタリング
- 週2回以上のSABA使用 → コントロール不良のサイン → 主治医に報告
- SABA頻用は喘息死のリスク因子
- 喘息でのLABA単独使用は禁忌 → 必ずICSと併用
- LAMAの禁忌:閉塞隅角緑内障・前立腺肥大による排尿障害
- テオフィリンのTDM:治療域 5〜15μg/mL(中毒域 ≥20μg/mL)
- 悪心・嘔吐 → 不整脈 → 痙攻 → 意識障害(中毒の進行)
喘息での使い分け
- 発作時(リリーバー):SABA(またはICS/ホルモテロール低用量の頓用)
- 長期管理(コントローラー):ICS(基本)→ ICS/LABA → ICS/LABA+LAMA or LTRA
- LABA単独使用は禁忌(必ずICSと併用)
COPDでの使い分け
- 第一選択:LAMAまたはLABA(単剤またはLAMA/LABA配合)
- 增悪頻回・好酸球高値 → ICS追加(トリプル療法)
- 急性増悪時:SABA(±SAMA)
- テオフィリン:吸入薬で不十分な場合の追加選択肢
重症発作時
- SABA反復吸入+SAMA+全身性ステロイド+酸素投与
- アミノフィリン点滴も検討
- β₂刺激薬 × β遮断薬:拮抗 → 気管支拡張効果減弱。喘息患者で非選択性β遮断薬は禁忌
- β₂刺激薬 × キサンチン系薬:cAMP↑の相乗効果だが、低カリウム血症・頻脈・不整脈のリスクも増強
- テオフィリン × CYP1A2阻害薬:テオフィリン血中濃度上昇 → 中毒リスク↑
- マクロライド系(エリスロマイシン・クラリスロマイシン)
- ニューキノロン系(シプロフロキサシン等)
- シメチジン(H₂ブロッカー)
- 喜煌も代謝を降下させる
- テオフィリン × CYP1A2誘導薬:テオフィリン血中濃度低下
- リファンピシン、フェノバルビタール、カルバマゼピン
- 抗コリン薬 × 他の抗コリン作用薬:口渇・便秘・排尿困難・眼圧上昇のリスク増強
- β₂刺激薬 + 抗コリン薬:異なる機序の併用で気管支拡張の 相加効果(配合剤が多数)