高血圧
高血圧とは、安静時の血圧が持続的に基準値以上に上昇している状態。動脈硬化を促進し、脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎不全などの重大な合併症を引き起こすリスク因子である。
- 本態性高血圧(一次性):原因が特定できないもの。高血圧の約90%を占める。遺伝的素因+環境因子(塩分過多、肥満、ストレス、運動不足、飲酒など)が関与
- 二次性高血圧:原因疾患が明らかなもの(腎実質性、腎血管性、内分泌性〔原発性アルドステロン症・褐色細胞腫・クッシング症候群など〕、薬剤性)
| 分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
|---|---|---|---|
| 正常血圧 | <120 mmHg | かつ | <80 mmHg |
| 正常高値血圧 | 120〜129 mmHg | かつ | <80 mmHg |
| 高値血圧 | 130〜139 mmHg | かつ/または | 80〜89 mmHg |
| Ⅰ度高血圧 | 140〜159 mmHg | かつ/または | 90〜99 mmHg |
| Ⅱ度高血圧 | 160〜179 mmHg | かつ/または | 100〜109 mmHg |
| Ⅲ度高血圧 | ≧180 mmHg | かつ/または | ≧110 mmHg |
- 診察室血圧:140/90 mmHg 以上
- 家庭血圧:135/85 mmHg 以上
- 血圧 = 心拍出量 × 末梢血管抵抗
- 血圧上昇に関与する主な機序:
- RAA系(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)の亢進 → 血管収縮+Na・水再吸収↑
- 交感神経系の亢進 → 心拍出量↑+血管収縮
- Na貯留・循環血液量の増加
- 血管内皮機能障害(NO産生↓)→ 血管拡張能↓
| 標的臓器 | 主な合併症 |
|---|---|
| 脳 | 脳卒中(脳出血・脳梗塞)、一過性脳虚血発作 |
| 心臓 | 左室肥大、狭心症、心筋梗塞、心不全 |
| 腎臓 | 腎硬化症、慢性腎臓病(CKD) |
| 血管 | 動脈硬化、大動脈瘤、末梢動脈疾患 |
| 眼 | 高血圧性網膜症、眼底出血 |
降圧目標
| 対象 | 降圧目標 |
|---|---|
| 75歳未満 | <130/80 mmHg |
| 75歳以上 | <140/90 mmHg |
| 糖尿病・CKD(蛋白尿陽性) | <130/80 mmHg |
| 冠動脈疾患 | <130/80 mmHg |
非薬物療法(生活習慣の修正)
- 減塩:1日6g未満
- 適正体重の維持:BMI 25未満
- 運動:有酸素運動を中心に、毎日30分以上
- 節酒:エタノール換算で男性20〜30 mL/日以下
- 禁煙
- 野菜・果物の積極摂取、飽和脂肪酸・コレステロールの制限
薬物療法(主要降圧薬)
| 薬効群 | 作用機序 | 代表薬 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|
| Ca拮抗薬 | L型Caチャネル遮断 → 血管拡張 | アムロジピン、ニフェジピン | 顔面紅潮、浮腫、歯肉肥厚 |
| ARB | AT₁受容体遮断 → 血管拡張+アルドステロン↓ | カンデサルタン、テルミサルタン | 高K血症、腎機能低下 |
| ACEI | ACE阻害 → アンジオテンシンⅡ産生↓ | エナラプリル、リシノプリル | 空咳、高K血症、血管浮腫 |
| サイアザイド系利尿薬 | NCC阻害 → Na排泄↑ → 体液量↓ | ヒドロクロロチアジド | 低K血症、尿酸↑、血糖↑ |
代替降圧薬
| 薬効群 | 作用機序 | 代表薬 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|
| β遮断薬 | β受容体遮断 → 心拍出量↓+レニン分泌↓ | ビソプロロール、カルベジロール | 徐脈、四肢冷感、気管支攣縮 |
| MRA | アルドステロン受容体拮抗 → Na排泄↑(K保持) | スピロノラクトン、エサキセレノン | 高K血症、女性化乳房(スピロノラクトン) |
| α遮断薬 | α₁受容体遮断 → 血管拡張 | ドキサゾシン | 起立性低血圧 |
併用療法
推奨される組み合わせ:ARB(またはACEI)+ Ca拮抗薬、ARB(またはACEI)+ 利尿薬、Ca拮抗薬 + 利尿薬
避けるべき組み合わせ:ARB + ACEI(腎機能悪化・高K血症リスク)
- 血圧・脈拍の定期モニタリング(初回投与時・増量時は過降圧に注意)
- 起立性低血圧の観察(めまい、ふらつき)→ 立ち上がり時の注意喚起
- 電解質のチェック(K値:ACEI/ARB/MRA → 高K、利尿薬 → 低K)
- 腎機能モニタリング(BUN・Cr・eGFR)
- ACEI使用時:空咳の出現を観察(持続する場合はARBへ変更検討)
- Ca拮抗薬使用時:グレープフルーツジュースとの相互作用を指導、歯肉肥厚の観察
- 妊婦禁忌:ACEI・ARBは胎児毒性あり → 妊娠可能年齢の女性には確認必須
- 服薬アドヒアランスの確認:自己判断での中止は危険であることを指導
- 生活指導:減塩(1日6g未満)、適度な運動、禁煙、節酒、ストレス管理
- 家庭血圧測定の指導(朝起床後1時間以内・排尿後・座位安静・服薬前に測定)
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれ、自覚症状に乏しいまま臓器障害が進行する。看護師は、患者の服薬アドヒアランス向上・生活習慣修正の支援・副作用の早期発見を通じて、血圧コントロールをサポートする重要な役割を担う。