page icon

高血圧

高血圧

① 疾患の概要

高血圧とは、安静時の血圧が持続的に基準値以上に上昇している状態。動脈硬化を促進し、脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎不全などの重大な合併症を引き起こすリスク因子である。
  • 本態性高血圧(一次性):原因が特定できないもの。高血圧の約90%を占める。遺伝的素因+環境因子(塩分過多、肥満、ストレス、運動不足、飲酒など)が関与
  • 二次性高血圧:原因疾患が明らかなもの(腎実質性、腎血管性、内分泌性〔原発性アルドステロン症・褐色細胞腫・クッシング症候群など〕、薬剤性)

② 診断基準

分類収縮期血圧拡張期血圧
正常血圧<120 mmHgかつ<80 mmHg
正常高値血圧120〜129 mmHgかつ<80 mmHg
高値血圧130〜139 mmHgかつ/または80〜89 mmHg
Ⅰ度高血圧140〜159 mmHgかつ/または90〜99 mmHg
Ⅱ度高血圧160〜179 mmHgかつ/または100〜109 mmHg
Ⅲ度高血圧≧180 mmHgかつ/または≧110 mmHg
  • 診察室血圧:140/90 mmHg 以上
  • 家庭血圧:135/85 mmHg 以上

③ 病態生理

  • 血圧 = 心拍出量 × 末梢血管抵抗
  • 血圧上昇に関与する主な機序:
    • RAA系(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)の亢進 → 血管収縮+Na・水再吸収↑
    • 交感神経系の亢進 → 心拍出量↑+血管収縮
    • Na貯留・循環血液量の増加
    • 血管内皮機能障害(NO産生↓)→ 血管拡張能↓

④ 合併症(臓器障害)

標的臓器主な合併症
脳卒中(脳出血・脳梗塞)、一過性脳虚血発作
心臓左室肥大、狭心症、心筋梗塞、心不全
腎臓腎硬化症、慢性腎臓病(CKD)
血管動脈硬化、大動脈瘤、末梢動脈疾患
高血圧性網膜症、眼底出血

⑤ 治療

降圧目標

対象降圧目標
75歳未満<130/80 mmHg
75歳以上<140/90 mmHg
糖尿病・CKD(蛋白尿陽性)<130/80 mmHg
冠動脈疾患<130/80 mmHg

非薬物療法(生活習慣の修正)

  • 減塩:1日6g未満
  • 適正体重の維持:BMI 25未満
  • 運動:有酸素運動を中心に、毎日30分以上
  • 節酒:エタノール換算で男性20〜30 mL/日以下
  • 禁煙
  • 野菜・果物の積極摂取、飽和脂肪酸・コレステロールの制限

薬物療法(主要降圧薬)

薬効群作用機序代表薬主な副作用
Ca拮抗薬L型Caチャネル遮断 → 血管拡張アムロジピン、ニフェジピン顔面紅潮、浮腫、歯肉肥厚
ARBAT₁受容体遮断 → 血管拡張+アルドステロン↓カンデサルタン、テルミサルタン高K血症、腎機能低下
ACEIACE阻害 → アンジオテンシンⅡ産生↓エナラプリル、リシノプリル空咳、高K血症、血管浮腫
サイアザイド系利尿薬NCC阻害 → Na排泄↑ → 体液量↓ヒドロクロロチアジド低K血症、尿酸↑、血糖↑

代替降圧薬

薬効群作用機序代表薬主な副作用
β遮断薬β受容体遮断 → 心拍出量↓+レニン分泌↓ビソプロロール、カルベジロール徐脈、四肢冷感、気管支攣縮
MRAアルドステロン受容体拮抗 → Na排泄↑(K保持)スピロノラクトン、エサキセレノン高K血症、女性化乳房(スピロノラクトン)
α遮断薬α₁受容体遮断 → 血管拡張ドキサゾシン起立性低血圧

併用療法

推奨される組み合わせ:ARB(またはACEI)+ Ca拮抗薬、ARB(またはACEI)+ 利尿薬、Ca拮抗薬 + 利尿薬
避けるべき組み合わせ:ARB + ACEI(腎機能悪化・高K血症リスク)

⑥ 看護のポイント(観察事項)

  • 血圧・脈拍の定期モニタリング(初回投与時・増量時は過降圧に注意)
  • 起立性低血圧の観察(めまい、ふらつき)→ 立ち上がり時の注意喚起
  • 電解質のチェック(K値:ACEI/ARB/MRA → 高K、利尿薬 → 低K)
  • 腎機能モニタリング(BUN・Cr・eGFR)
  • ACEI使用時:空咳の出現を観察(持続する場合はARBへ変更検討)
  • Ca拮抗薬使用時:グレープフルーツジュースとの相互作用を指導、歯肉肥厚の観察
  • 妊婦禁忌:ACEI・ARBは胎児毒性あり → 妊娠可能年齢の女性には確認必須
  • 服薬アドヒアランスの確認:自己判断での中止は危険であることを指導
  • 生活指導:減塩(1日6g未満)、適度な運動、禁煙、節酒、ストレス管理
  • 家庭血圧測定の指導(朝起床後1時間以内・排尿後・座位安静・服薬前に測定)
💡
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれ、自覚症状に乏しいまま臓器障害が進行する。看護師は、患者の服薬アドヒアランス向上・生活習慣修正の支援・副作用の早期発見を通じて、血圧コントロールをサポートする重要な役割を担う。