慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDの2つの病態
COPDは以下の2つの病態が混在する。
| 慢性気管支炎 | 肺気腫 | |
|---|---|---|
| 病変部位 | 気道(中枢気道) | 肺胞(末梢) |
| 主な病態 | 気道の慢性炎症・線維化 → 気道内腔の狭窄 | 肺胞壁の破壊 → 肺胞の過膨張・ガス交換能低下 |
| 主な症状 | 咳嗽・痰が主体 | 呼吸困難が主体、樽状胸 |
気流制限のメカニズム
- 気道炎症・線維化 → 気道内腔の狭窄
- 粘液の過分泌 → 気道閉塞
- 肺胞破壊 → 弾性収縮力の低下、呼気時の気道虐壊(空気が出せない)
喘息の気流制限は可逆性だが、COPDの気流制限は不可逆性が基本。これが両者の最大の違い。
全身性の併存症
COPDは肺だけの疾患ではなく、全身性炎症が関与する。
- 心血管疾患(肺性心、動脈硬化)
- 骨粗鬆症・骨格筋機能障害
- 栄養障害・体重減少
- うつ・不安
吸入抗コリン薬(LAMA)― 第一選択薬
- 気管支平滑筋のM₃受容体を遮断 → 持続的な気管支拡張
- 代表薬:チオトロピウム(スピリーバ®)、グリコピロニウム(シーブリ®)
- COPD治療の第一選択(喘息と異なり、COPDではLAMAが中心)
- 副作用:口渇、排尿障害(前立腫肥大で注意)、緑内障悪化
長時間作用性β₂刺激薬(LABA)
- 気管支平滑筋のβ₂受容体を刺激 → 持続的気管支拡張
- 代表薬:インダカテロール(オンブレス®)、ホルモテロール(オーキシス®)
- LAMAと併用されることが多い
LAMA/LABA配合剤
- 代表薬:チオトロピウム/オロダテロール(スピオルト®)、グリコピロニウム/インダカテロール(ウルティブロ®)
- 2つの機序で相加的な気管支拡張効果
- 単剤で効果不十分な場合に使用
吸入ステロイド薬(ICS)
- COPDではICS単独では用いない(喘息との大きな違い)
- 喘息合併例や急性増悪を繰り返す例でLAMA/LABAに追加(トリプル療法)
- 代表薬:フルチカゾン/ウメクリジニウム/ビランテロール(テリルジー®)
- 肺炎リスクがあるため、漫然とは使わない
テオフィリン徐放製剤
- 気管支拡張作用+横隔膜収縮力改善
- 吸入薬の補助的位置づけ
- TDMが必要(有効血中濃度域が狭い)
去痰薬
- カルボシステイン(ムコダイン®)、アンブロキソール(ムコソルバン®)
- 痰の喀出困難の改善に用いる
急性増悪:感染や大気汚染などを契機に、呼吸困難・咳嗽・痰の急性悪化が起こる状態。
- SABA(短時間作用性β₂刺激薬) → 発作時の気管支拡張
- サルブタモール(サルタノール®)
- 短時間作用性抗コリン薬(SAMA) → SABAと併用
- イプラトロピウム(アトロベント®)
- 全身性ステロイド薬 → 気道炎症の抑制
- プレドニゾロン経口、メチルプレドニゾロン点滴静注
- 抗菌薬 → 細菌感染が疑われる場合(膟性痰の増加など)
- 酷素投与 → 低酸素血症の改善
COPD患者への酷素投与は高濃度酷素を避ける。
COPD患者は慢性的なCO₂貯留により、低酸素刺激(hypoxic drive)で呼吸を維持している場合がある。高濃度酷素を投与すると呼吸中枚が抑制され、CO₂ナルコーシスを引き起こすリスクがある。
| 分類 | 代表薬 | 主な作用 | 使用場面 |
|---|---|---|---|
| LAMA | チオトロピウム、グリコピロニウム | 抗コリン → 気管支拡張 | 第一選択 |
| LABA | インダカテロール、ホルモテロール | β₂刺激 → 気管支拡張 | 第一選択またはLAMAと併用 |
| LAMA/LABA配合 | スピオルト®、ウルティブロ® | 相加的気管支拡張 | 単剤で不十分な場合 |
| ICS(追加) | テリルジー®(トリプル) | 気道炎症抑制 | 喘息合併・増悪繰り返し例 |
| SABA | サルブタモール | 速効性気管支拡張 | 急性増悪時 |
| SAMA | イプラトロピウム | 速効性抗コリン | 急性増悪時(SABAと併用) |
| テオフィリン | テオドール® | 気管支拡張+横隔膜改善 | 補助的(TDM必要) |
| 去痰薬 | カルボシステイン、アンブロキソール | 痰の喀出改善 | 症状に応じて併用 |
- 禁煙指導・禁煙支援:COPD治療の最重要事項
- 吸入指導:正しい吸入手技の確認(高齢患者が多く、吸気力・巧綻性に配慮)
- 呼吸状態の観察:SpO₂、呼吸数、呼吸困難の程度、口すぼめ呼吸の有無
- 酷素療法中の観察:高濃度酷素によるCO₂ナルコーシスの徴候(傾眠・意識低下・頭痛)
- 栄養状態の評価:体重減少・筋力低下の観察(BMI、上腕周囲など)
- 急性増悪の徴候の早期発見:痰の量・色の変化、呼吸困難の悪化、発熱
- 感染予防:手洗い・うがい、ワクチン接種の推奨
- 呼吸リハビリテーションの指導:口すぼめ呼吸・腹式呼吸・運動療法の継続
- 抗コリン薬の副作用:口渇、排尿障害(前立腫肥大患者)、緑内障悪化の観察
- アドヒアランスの確認:自覚症状の改善が乏しいため、継続意欲が低下しやすい → 効果を実感できるよう説明