page icon

インクレチン関連薬

インクレチン関連薬

① 薬効群の概要

インクレチン関連薬は、消化管から分泌されるインクレチン(GLP-1・GIP)の作用を強化または模倣する薬。血糖依存的にインスリン分泌を促進するため、低血糖リスクが低いのが特徴。DPP-4阻害薬GLP-1受容体作動薬に大別される。

② インクレチンとは

  • 食事摂取後、消化管から分泌されるホルモン
  • GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の2種類
  • 主な作用:
    • 血糖依存的にインスリン分泌を促進(血糖が高いときのみ作用)
    • グルカゴン分泌の抑制
    • 胃排出の遅延
    • 食欲抑制(中枢性)
  • GLP-1はDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)により数分で分解される → この分解を阻害するのがDPP-4阻害薬

③ 代表薬と分類

1️⃣ DPP-4阻害薬(経口薬)

代表薬(一般名)先発品例特徴
シタグリプチンジャヌビア®最初のDPP-4阻害薬。1日1回
ビルダグリプチンエクア®1日2回。日本で最も処方が多い
リナグリプチントラゼンタ®1日1回。腎機能に応じた用量調整が不要
テネリグリプチンテネリア®1日1回、20mgまたは40mg
  • 作用:DPP-4を阻害 → 内因性GLP-1の分解を防ぐ → GLP-1濃度↑ → 血糖依存的にインスリン分泌↑
  • 特徴:経口薬で使いやすい。低血糖リスクが低い。体重への影響が少ない。副作用が少ない

2️⃣ GLP-1受容体作動薬(注射薬・一部経口)

代表薬(一般名)先発品例特徴
リラグルチドビクトーザ®1日1回皮下注射。食欲抑制・体重減少効果あり
デュラグルチドトルリシティ®週1回皮下注射。0.75mgまたは1.5mg
セマグルチドオゼンピック®週1回皮下注射。心血管イベント抑制効果(SUSTAIN試験)。肌満症治療薬(ウゴービ®)としても承認
リキシセナチドリキスミア®1日1回皮下注射。GLP-1受容体作動薬として最初の製剤
セマグルチド(経口)リベルサス®世界初の経口GLP-1受容体作動薬。1日1回、空腹時に水で服用。服用後30分は飲食禁止
  • 作用:GLP-1受容体に直接結合 → DPP-4で分解されにくい構造 → 強力かつ持続的なインスリン分泌促進・グルカゴン抑制・胃排出遅延・食欲抑制
  • DPP-4阻害薬より血糖降下作用が強力
  • 体重減少効果がある(食欲抑制・胃排出遅延)
  • 心血管イベント抑制効果・腎保護効果が報告されている製剤もある

3️⃣ GIP/GLP-1受容体作動薬(デュアルアゴニスト)

代表薬(一般名)先発品例特徴
チルゼパチドマンジャロ®GIP + GLP-1の両方の受容体に作用。週1回皮下注射。強力な血糖降下・体重減少効果。肥満症治療薬としても承認(ゼップバウンド®)
  • GIPとGLP-1の両方の受容体を活性化 → 相加的なインスリン分泌促進・食欲抑制・体重減少
  • GLP-1受容体作動薬よりさらに強力な血糖降下・体重減少が期待できる

④ 看護のポイント(観察事項)

DPP-4阻害薬

  • 低血糖リスクは低いが、SU薬やインスリンとの併用時は注意
  • 急性膵炎 → まれだが重篤な副作用。激しい腹痛・嘔吐があれば直ちに受診
  • 類天疱瘡(パンフィグス様症状) → まれ。皮膚の水瘡・紅班の観察
  • 副作用が少なく使いやすい薬剤である

GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬

  • 消化器症状(最も多い副作用) → 悪心・嘔吐・下痢・便秘(特に投与初期)。少量から開始し漸増することで軽減
  • 急性膵炎 → 激しい腹痛・嘔吐があれば直ちに受診
  • 甲状腺髄様癌(動物実験) → 甲状腺髄様癌の家族歴・MEN2の既往がある場合は禁忌
  • 自己注射の指導(注射製剤)→ ペン型注入器の操作方法、注射部位のローテーション、保管方法
  • 経口セマグルチド(リベルサス®)の服薬指導起床時に空腹で水(120mL以下)で服用。服用後30分以上は飲食・他の薬を避ける(吸収が低下するため)
  • 体重変動の観察 → 体重減少効果があるが、過度の体重減少には注意
  • 服薬アドヒアランス → 消化器症状による自己中断を防ぐ。「続けることで症状が改善する」ことを説明
📊

DPP-4阻害薬 vs GLP-1受容体作動薬の比較

DPP-4阻害薬GLP-1受容体作動薬
投与経路経口注射(一部経口)
血糖降下作用中等強力
体重への影響中立(増減なし)体重減少
消化器症状少ない多い(特に初期)
低血糖リスク低い低い
心血管保護効果明確なエビデンスなし一部の製剤で報告あり
価格比較的安価高価
💡

肥満症治療薬としての承認

  • セマグルチド(ウゴービ® 2.4mg)とチルゼパチド(ゼップバウンド®)が、糖尿病とは別に肥満症治療薬としても承認されている
  • 食欲抑制(中枢性)+ 胃排出遅延 → 大幅な体重減少効果
  • 糖尿病治療とは用量が異なる場合がある
  • 看護師としては、「痩せ薬」としての不適切な使用(個人輸入など)のリスクについても知っておく