オレキシン受容体拮抗薬 (DORA)
覚醒系神経ペプチドであるオレキシン(ヒポクレチン)の受容体(OX₁R・OX₂R)を拮抗することで、覚醒シグナルを抑制し睡眠を促進 する新しい機序の睡眠薬。DORA(Dual Orexin Receptor Antagonist)とも呼ばれる。GABA系に作用しないため、BZ系・Z薬で問題となる 筋弛緩・依存性・反跳性不眠がない 。入眠困難・中途覚醒の両方に有効。
- 視床下部外側野のオレキシン産生ニューロンが分泌する オレキシンA・オレキシンB は覚醒維持に重要な役割を果たす
- OX₁R:主にREM睡眠の抑制に関与
- OX₂R:主に覚醒維持・Non-REM睡眠の抑制に関与
- オレキシン受容体を拮抗 → 覚醒シグナルをブロック → 自然な睡眠への移行を促進
- GABA系に作用しない → 筋弛緩・依存性・反跳性不眠がない
- オレキシンの欠乏はナルコレプシーの病態 → DORAでもナルコレプシー様症状(悪夢・金縛り・カタプレキシー)が起こりうる
| 代表薬(一般名) | 先発品例 | 受容体選択性 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| スボレキサント | ベルソムラ® | OX₁R/OX₂R両方(Dual) | 入眠・睡眠維持に有効。悪夢がやや多い。CYP3A4阻害薬と併用禁忌。用量調節:高齢者は15mg、それ以外は20mg |
| レンボレキサント | デエビゴ® | OX₂Rにより選択的 | スボレキサントより悪夢が少ない。CYP3A4阻害薬と併用禁忌。用量:通常5mg、必要時に10mg |
| ボルノレキサント | ボルズィ® | OX₁R/OX₂R両方(Dual) | 半減期が約2hと極めて短い → 翌日の持ち越しが少ない。用量:通常5mg、最大10mg。CYP3A4強阻害薬と併用禁忌。中等度CYP3A4阻害薬併用時は2.5mg。食事と同時・食直後の服用は避ける |
オレキシン受容体拮抗薬の比較
| 項目 | スボレキサント | レンボレキサント | ボルノレキサント |
|---|---|---|---|
| 先発品 | ベルソムラ® | デエビゴ® | ボルズィ® |
| 受容体選択性 | OX₁R ≈ OX₂R(Dual) | OX₂Rにより選択的 | OX₁R ≈ OX₂R(Dual) |
| 半減期 | 約10h | 約47h | 約2h(最短) |
| 持ち越し効果 | 中程度 | 残りやすい | 最も少ない |
| 悪夢・金縛り | やや多い | 報告あり | 1~3%(報告あり) |
| CYP3A強阻害薬 | 併用禁忌 | 重度肝機能障害のみ禁忌 | 併用禁忌 |
| 用量 | 20mg(高齢者は15mg) | 5mg(必要時に10mg) | 5mg(最大10mg) |
| 食事の影響 | 食直後では効果発現が遅れる | 食事の影響は小さい | 食事と同時・食直後は避ける |
- ナルコレプシー様症状:悪夢・金縛り・入眠時幻覚・カタプレキシー(情動脱力発作) → 特にスボレキサントで注意。症状があれば報告
- 日中の傢眠・ふらつき:転倒リスク評価。特に投与初期や増量時
- CYP3A4相互作用(重要):
- 併用禁忌:イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、ボリコナゾール等の強いCYP3A4阻害薬
- グレープフルーツジュースもCYP3A4を阻害 → 注意
- CYP3A4誘導薬(リファンピシン等)は効果減弱
- 食事のタイミング:スボレキサントは食直後では効果発現が遅れる → 就寝の直前かつ食後2時間以上空けて服用が望ましい
- 筋弛緩なし:BZ系・Z薬と異なり筋弛緩作用がない → 転倒リスクは比較的低い
- 依存性なし:急な中止でも反跳性不眠が起こりにくい
- 自殺念慮:うつ病・うつ状態の患者では症状悪化の観察を行う