HER2阻害薬

HER2阻害薬

① 薬効群の概要

HER2(ErbB2)を標的として阻害する分子標的薬。HER2陽性乳がんを中心に、胃がん等でも用いられる。抗体薬・抗体薬物複合体(ADC)・低分子TKIなど、作用様式が異なる薬剤がある。
  • 使用前に HER2検査(IHC/FISH等) による陽性確認が重要
  • クラスとして 心機能低下(LVEF低下/心不全) が大きな論点(特に抗HER2抗体/ADCで)
  • ADCでは 間質性肺炎(薬剤性肺障害) など特有の毒性が問題になりやすい(薬剤差)

② 作用機序(主な分類)

  • 抗HER2抗体:HER2に結合しシグナル抑制+ADCC など
  • ADC(抗体薬物複合体):HER2抗体で腫瘍へ送達 → 細胞内で細胞毒(payload)を放出
  • HER2-TKI:細胞内チロシンキナーゼ活性を阻害(EGFRも抑える薬あり)

③ 代表薬(例)

分類代表薬(一般名)ポイント(例)
抗HER2抗体トラスツズマブ ペルツズマブ心機能低下に注意(LVEFモニタリング)。投与時反応にも注意。
ADCトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1) トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)T-DXd:間質性肺炎(ILD)に注意。T-DM1:血小板減少、肝機能障害など。
HER2-TKIラパチニブ ネラチニブ ツカチニブ下痢、肝障害など。薬剤によりEGFR阻害の影響が出やすい。

④ 観察・指導ポイント

  • 心機能:息切れ、浮腫、体重増加、動悸(LVEF低下/心不全の兆候)
  • 投与時反応(抗体薬):発熱、悪寒、発疹、呼吸困難、血圧低下(初回〜早期)
  • 間質性肺炎(特にT-DXd):咳、息切れ、SpO₂低下(早期発見が重要)
  • 下痢(TKIで重要):回数・性状、脱水兆候(口渇、尿量低下)
  • 肝機能障害:AST/ALT(TKI/ADC等)
  • 血液:血小板減少(T-DM1等)、骨髄抑制(レジメン依存)
⚠️
HER2阻害薬は、薬剤により毒性が異なるが、共通して 心機能低下 は重要。さらに T-DXdでは間質性肺炎 が重大リスク。咳・息切れ、SpO₂低下、急な体重増加/浮腫、強い下痢は早めに報告。運用は必ず施設プロトコル・レジメンに従う。