髄腔内注射(髄注)

髄腔内注射(髄注)

① 概要

髄腔内注射(髄注)とは、脊髄くも膜下腔(髄腔)へ薬液を直接投与する方法。血液脳関門(BBB)を迂回して中枢神経系へ確実に到達させられる。少量で高い局所濃度が得られる一方、感染・神経障害・誤投与などのリスクがあり、厳密な安全管理が必要。

② 投与の仕組みと投与経路の比較

  • 投与部位:くも膜下腔(脳脊髄液:CSF)
  • BBB通過:不要(BBBを迂回)
  • 投与量:極少量(通常数mL以下)
髄腔内注射(IT)参考:静脈投与参考:硬膜外投与
主な到達部位CSF→中枢神経系全身循環脊髄神経根周囲
BBBの影響受けない受ける一部通過
投与の難易度高い(医師手技)高い(医師手技)

③ メリットとデメリット

メリット

  • BBBを通過しにくい薬でもCNSへ確実に到達
  • 少量で高い局所濃度を得られる

デメリット

  • 感染リスク(髄膜炎など)
  • 神経障害のリスク
  • 硬膜穿刺後頭痛(PDPH)
  • 投与できる薬剤が限定的

④ 適応・薬剤の例(代表)

適応
脊髄くも膜下麻酔ブピバカイン等
中枢神経系への化学療法メトトレキサート、シタラビン等
慢性疼痛・痙縮モルヒネ(防腐剤フリー等)、バクロフェン等
⚠️
重要な注意事項(髄注は誤投与が致命的)
  • 防腐剤フリー(preservative-free)であること(防腐剤は神経毒性のリスク)
  • 無菌であること
  • 原則として等張性(CSFの浸透圧に配慮)
  • 「髄注用」と明記された製剤を使用する(静注用製剤を髄注してはならない)
  • ビンクリスチン(オンコビン®)の髄腔内誤投与は死亡事故の報告あり → 取り違え防止が最重要
⚠️
絶対に髄腔内投与してはならない薬剤(例)
  • ビンクリスチン(オンコビン®)
  • 防腐剤を含む製剤(ベンジルアルコール等)
  • KCL(カリウム製剤)

⑤ 看護のポイント(観察事項)

  • 体位保持の介助(施設手順に従う)
  • 無菌操作の徹底、穿刺部の観察(出血・感染徴候)
  • PDPH(起立で増悪・臥位で軽減する頭痛)の観察
  • 麻酔目的なら血圧低下、徐脈、呼吸、尿閉などの観察
  • 薬剤名・投与経路のダブルチェック(取り違え防止)