髄腔内注射(髄注)
髄腔内注射(髄注)とは、脊髄くも膜下腔(髄腔)へ薬液を直接投与する方法。血液脳関門(BBB)を迂回して中枢神経系へ確実に到達させられる。少量で高い局所濃度が得られる一方、感染・神経障害・誤投与などのリスクがあり、厳密な安全管理が必要。
- 投与部位:くも膜下腔(脳脊髄液:CSF)
- BBB通過:不要(BBBを迂回)
- 投与量:極少量(通常数mL以下)
| 髄腔内注射(IT) | 参考:静脈投与 | 参考:硬膜外投与 | |
|---|---|---|---|
| 主な到達部位 | CSF→中枢神経系 | 全身循環 | 脊髄神経根周囲 |
| BBBの影響 | 受けない | 受ける | 一部通過 |
| 投与の難易度 | 高い(医師手技) | 中 | 高い(医師手技) |
メリット
- BBBを通過しにくい薬でもCNSへ確実に到達
- 少量で高い局所濃度を得られる
デメリット
- 感染リスク(髄膜炎など)
- 神経障害のリスク
- 硬膜穿刺後頭痛(PDPH)
- 投与できる薬剤が限定的
| 適応 | 例 |
|---|---|
| 脊髄くも膜下麻酔 | ブピバカイン等 |
| 中枢神経系への化学療法 | メトトレキサート、シタラビン等 |
| 慢性疼痛・痙縮 | モルヒネ(防腐剤フリー等)、バクロフェン等 |
重要な注意事項(髄注は誤投与が致命的)
- 防腐剤フリー(preservative-free)であること(防腐剤は神経毒性のリスク)
- 無菌であること
- 原則として等張性(CSFの浸透圧に配慮)
- 「髄注用」と明記された製剤を使用する(静注用製剤を髄注してはならない)
- ビンクリスチン(オンコビン®)の髄腔内誤投与は死亡事故の報告あり → 取り違え防止が最重要
絶対に髄腔内投与してはならない薬剤(例)
- ビンクリスチン(オンコビン®)
- 防腐剤を含む製剤(ベンジルアルコール等)
- KCL(カリウム製剤)
- 体位保持の介助(施設手順に従う)
- 無菌操作の徹底、穿刺部の観察(出血・感染徴候)
- PDPH(起立で増悪・臥位で軽減する頭痛)の観察
- 麻酔目的なら血圧低下、徐脈、呼吸、尿閉などの観察
- 薬剤名・投与経路のダブルチェック(取り違え防止)