三環系抗うつ薬(TCAs)

三環系抗うつ薬(TCAs)

① 薬効群の概要

化学構造中に三環構造を持つ抗うつ薬の総称。5-HTおよびNAの再取り込みを非選択的に阻害 し、シナプス間隙のモノアミン濃度を上昇させる。抗うつ効果は強力だが、抗コリン作用・H₁拮抗・α₁拮抗による 副作用が多い 。また過量投与で 心毒性 があり致死的となりうる。現在は第一選択ではなく、SSRI・SNRIが無効の場合や重症例に限定して使用される。

② 作用機序

  • シナプス前膜の 5-HTトランスポーターとNAトランスポーターを非選択的に阻害 → シナプス間隙の5-HT・NA濃度が上昇 → 抗うつ効果
  • 効果発現に 2~4週間 かかる(受容体のダウンレギュレーションに時間を要する)
  • 同時に以下の受容体も拮抗 → 副作用の原因
    • ムスカリンM受容体拮抗(抗コリン作用) → 口渇・便秘・排尿困難・眼圧上昇・認知機能低下
    • H₁受容体拮抗 → 眠気・体重増加
    • α₁受容体拮抗 → 起立性低血圧・めまい
    • Naチャネル阻害 → 心伝導障害・QT延長(過量投与で致死的)
    • けいれん閾値低下 → 特にクロミプラミン・マプロチリン

③ 代表薬

第三級アミン型(5-HT再取り込み阻害が優位)

代表薬(一般名)先発品例特徴
イミプラミントフラニール®5-HT再取り込み阻害が強い。うつ病・遗尿症に適応。過量で心毒性あり
クロミプラミンアナフラニール®5-HT再取り込み阻害が最も強い。うつ病・OCD・ナルコレプシーに適忚。点滴静注製剤あり。けいれん閾値低下に注意
アミトリプチリントリプタノール®5-HT・NA両方の阻害が強い。抗コリン作用が強い。うつ病・神経障害性疼痛・線維筋痛症・片頭痛予防にも使用

第二級アミン型(NA再取り込み阻害が優位)

代表薬(一般名)先発品例特徴
ノルトリプチリンノリトレン®NA再取り込み阻害が強い。うつ病・うつ状態に適忚。活性代謝物があり半減期が長い
アモキサピンアモキサン®NA再取り込み阻害が優位。抗コリン作用が比較的強い

その他

代表薬(一般名)先発品例特徴
ドスレピンプロチアデン®抗コリン作用が比較的少ない。小児の夜尿症にも使用

薬剤別の受容体親和性の比較

薬剤5-HT再取り込み阻害NA再取り込み阻害抗コリンH₁拮抗α₁拮抗
クロミプラミン++++++++++
イミプラミン+++++++++++
アミトリプチリン++++++++++++++
ノルトリプチリン+++++++++

④ 看護のポイント(観察事項)

  • 心毒性(最重要):Naチャネル阻害による QT延長・心伝導障害・不整脈過量投与で致死的 → 自殺リスクのある患者には大量処方を避ける。心電図モニタリング
  • 自殺リスク:投与初期のアクティベーションシンドロームに注意。過量投与による自殺手段となりうる → 処方日数・残薬管理に留意
  • 抗コリン作用
    • 口湇:水分摂取・口腔ケアの指導
    • 便秘:食事指導・緊下薬の使用も検討
    • 排尿困難・尿閉:特に高齢男性・前立腺肥大患者。前立腺肥大には禁忌
    • 眼圧上昇狭隅角紑内障に禁忌
    • 認知機能低下・せん妙:特に高齢者でリスク高い
  • 過鎮静・眠気:H₁拮抗による。転倒・誤嘆に注意。就寝前投与で管理
  • 起立性低血圧・めまい:α₁拮抗による。投与初期・増量時に転倒リスク評価
  • 体重増加:H₁拮抗・5-HT₂C拮抗による。特にアミトリプチリンで多い
  • けいれん閾値低下:特にクロミプラミン。てんかんの既往がある患者には慎重投与
  • セロトニン症候群:SSRI・MAOI等との併用でリスク上昇。MAOIとは併用禁忌
  • 中断症状(離脱症状):急な中止で悪心・不眠・不安・頭痛等 → 漸減中止が原則
  • 高齢者には注意:抗コリン作用・起立性低血圧・過鎮静・心毒性が高齢者ではより問題となる → SSRI・SNRIが優先

治療における位置づけ:

  • 現在のうつ病治療の第一選択は SSRI・SNRI に移行している
  • TCAは主に以下の場面で使用される:
    • SSRI・SNRIで無効の重症うつ病 → 抗うつ効果は強力
    • 神経障害性疼痛 → アミトリプチリン(低用量)が有用
    • 片頭痛予防 → アミトリプチリン
    • OCD(強迫性障害) → クロミプラミン(点滴静注も可)
    • 小児の遗尿症 → イミプラミン
  • 自殺リスクのある患者 → 過量投与の致死性から 大量処方を避ける。SSRI・SNRIの方が安全
  • 高齢者 → 抗コリン作用・心毒性・起立性低血圧のリスクから 原則として避ける