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てんかん

てんかん

てんかんとは

脳の神経細胞の 過剰な電気的発火(異常放電) により、反復性の痙攻発作 をきたす慢性神経疾患。人口の約1%に発症。発作型に応じた抗てんかん薬の選択が重要であり、約6〜7割の患者が薬物療法で発作がコントロールされる。

発作型の分類

💡
てんかん発作は大きく 部分発作(焦点性)全般発作 に分類される。発作型により第一選択薬が異なるため、正確な分類が治療の鍵。
大分類発作型特徴
部分発作(焦点性)単純部分発作意識清明のまま、焦点に応じた症状(運動・感覚・自律神経等)
複雑部分発作意識障害 を伴う。自動症(口をモグモグ、手をまさぐる等)がみられることが多い
二次性全般化発作部分発作から全身に波及→全般性強直間代発作へ移行
全般発作強直間代発作(大発作)意識消失+全身の強直(硬直)→間代性痙攻(ガクガク)。最も重篤
欠神発作(小発作)数秒〜数十秒の意識消失。痙攻なし。小児に多い。ボーッとして見える
ミオクロニー発作瞬間的な筋肉のピクッという収縮。意識は保たれることが多い

薬物治療:抗てんかん薬

作用機序の分類

抗てんかん薬の作用機序は主に以下の3つに大別される:
  • Naチャネル阻害:神経の過剰発火を抑制(フェニトイン・カルバマゼピン・ラモトリギン等)
  • GABA作用増強:抑制性神経伝達を強化(ベンゾジアゼピン系・バルプロ酸・ガバペンチン等)
  • Caチャネル阻害:神経伝達物質の放出を抑制(エトスクシミド等)
  • 複数の作用機序を持つ薬剤も多い

発作型と第一選択薬

発作型第一選択薬備考
部分発作(焦点性)カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム最も多い発作型。Naチャネル阻害薬が有効
強直間代発作(全般)バルプロ酸、ラモトリギン、レベチラセタムカルバマゼピンは全般発作には不適切な場合あり
欠神発作バルプロ酸、エトスクシミドカルバマゼピン・フェニトインは 欠神発作を悪化 させる可能性あり
ミオクロニー発作バルプロ酸、クロナゼパム
てんかん重積状態ジアゼパム静注(セルシン®)緊急治療。呼吸抑制に注意

主な抗てんかん薬

一般名先発品例主な作用機序適応特記すべき副作用・注意点
フェニトインアレビアチン®Naチャネル阻害部分発作・強直間代歯肉増殖・多毛・小脳失調・催奇形性。血中濃度モニタリング必要。欠神発作には不適
カルバマゼピンテグレトール®Naチャネル阻害部分発作の第一選択SJS・無顎粒球症・自己誘導(CYP3A4)・低ナトリウム血症。血中濃度モニタリング必要。欠神発作には不適
バルプロ酸Naデパケン®GABA増強・Naチャネル阻害・HDAC阻害全般発作の第一選択、欠神発作、ミオクロニー肝障害・催奇形性(妊娠可能年齢禁忌)・体重増加・脱毛・振戦。血中濃度モニタリング必要
ラモトリギンラミクタール®Naチャネル阻害・グルタミン酸放出抑制部分発作・強直間代SJS・TEN → 漸増投与必須。バルプロ酸併用で血中濃度↑
レベチラセタムイーケプラ®SV2A結合(シナプス小胞蛋白2A)部分発作・強直間代精神症状(易怒性・抑うつ)に注意。薬物相互作用が少ない
エトスクシミドザロンチン®、エピレオプチマル®T型Caチャネル阻害欠神発作の第一選択消化器症状・眠気・頭痛
ガバペンチンガバペン®電位依存性Caチャネルのα₂δサブユニットに結合部分発作(補助的)眠気・めまい・末梢性浮腫。神経障害性疼痛にも使用
クロナゼパムリボトリール®、ランドセン®GABA作用増強(BZ系)ミオクロニー・小児てんかん眠気・依存性。BZ系のなかでは抗てんかん作用が強い
ジアゼパムセルシン®、ダイアップ®GABA作用増強(BZ系)てんかん重積状態の緊急治療呼吸抑制に注意。静注・直腸投与

重要な注意点

⚠️
発作型と薬剤のミスマッチに注意
  • カルバマゼピン・フェニトインは 欠神発作を悪化 させる可能性がある
  • 全般発作にはバルプロ酸が広く使用される
血中濃度モニタリングが必要な薬剤
  • フェニトイン、10〜20 μg/mL
  • カルバマゼピン、4〜12 μg/mL
  • バルプロ酸、50〜100 μg/mL
催奇形性に注意
  • バルプロ酸:妊娠可能年齢の女性には原則禁忌
  • フェニトイン:催奇形性あり(口唇裂・口蓋裂等)
  • カルバマゼピン:催奇形性あり

てんかん重積状態

⚠️
てんかん重積状態(status epilepticus):痙攣が5分以上持続、または意識回復なく反復する状態。緊急対応が必要(脳障害・死亡のリスク)。
  • 第一選択:ジアゼパム静注(セルシン®)または ミダゾラム口腔用液
  • 呼吸抑制に注意(気道確保・モニタリング)
  • 不応例ではフェニトイン静注・ホスフェニトイン静注へ移行

看護のポイント(観察事項)

🩺

発作時の対応:

  • 安全確保:転倒・外傷予防(頭部保護、周囲の危険物除去)
  • 気道確保:側臥位。口腔内に物を入れない(舌を噃まない)
  • 発作の観察記録:開始時刻・持続時間・痙攻の部位・種類・意識状態
  • 5分以上持続 → てんかん重積状態の可能性 → 緊急通報

服薬管理:

  • 服薬アドヒアランス:自己判断での中断を避けるよう指導(急な中止で発作が誘発される)
  • 血中濃度モニタリング:フェニトイン・カルバマゼピン・バルプロ酸は定期的に測定
  • 副作用の観察
    • フェニトイン:歯肉増殖(口腔ケア指導)・多毛・小脳失調
    • バルプロ酸:肝機能・体重・脱毛・催奇形性
    • カルバマゼピン:SJS・無顎粒球症・低ナトリウム血症
    • ラモトリギン:皮膚症状(SJS/TEN)→ 発疹が出たら直ちに報告

生活指導:

  • 睡眠不足・過度のアルコール・ストレス は発作の誘因 → 生活リズムの整備
  • 入浴・運転・高所作業 などの発作時のリスクを考慮した指導
  • 妊娠計画 がある場合は主治医と相談(催奇形性のある薬剤の変更等)