投与経路:注射

注射投与(注射,Injection)

注射投与とは、注射針やカテーテルを用いて薬剤を体内へ直接投与する方法である。経口投与に比べて効果発現が速い一方、投与経路(皮下・筋肉内・静脈内など)や製剤の取り扱いに注意が必要。

注射投与の特徴

メリット

  • 効果発現が速い:循環血液中へ直接(または速やかに)到達するため、急性期に有用
  • 吸収の個人差が小さい:消化管の影響(食事・pH など)を受けにくい(投与経路により例外あり)
  • 経口投与が困難でも使用できる:嚥下困難、意識障害、嘔吐などでも投与可能
  • 高いバイオアベイラビリティ:静脈内投与では 100%(原則)

デメリット

  • 侵襲的:疼痛、出血、血腫、感染、針刺し事故のリスク
  • 投与手技・器材が必要:無菌操作、希釈・溶解、投与速度管理などが求められる
  • 副作用が急速に出現しやすい:投与中止しても回収できない場合がある(特に静注)
  • 投与経路の制約:同じ薬でも投与可能な経路が製剤ごとに異なる(添付文書で確認が必須)
⚠️
注射剤は「薬剤名」だけでなく、投与経路(皮下・静注・点滴・硬膜外・髄腔内など)まで含めて適否を判断する。副片・電子添文で投与経路/希釈液/投与速度/配合変化を必ず確認する。

主な注射投与経路とポイント

投与経路特徴注意点(例)
皮下(SC)吸収は比較的ゆっくり。自己注射に用いられることもある(例:インスリン)。循環不全・浮腫で吸収が遅れることがある。局所の硬結や疼痛に注意。
筋肉内(IM)皮下より吸収が速いことが多い。出血リスク(抗凝固薬使用など)に注意。疼痛が強いことがある。
静脈内(IV)即効性。静注・点滴静注で使用。血管外漏出、投与速度、配合変化、ルート管理に注意。
点滴(IV drip)一定速度で投与できる。高濃度薬や持続投与に適する。滴下速度・ポンプ設定、フィルター適否、遮光、溶解後安定性に注意。
硬膜外/くも膜下(髄腔内)局所麻酔薬、オピオイド、抗がん薬など特定薬剤で使用。製剤・濃度・防腐剤の有無など要件が厳しい。誤投与は重篤。

注射剤の種類(製剤)と特徴

剤形特徴注意点
アンプルガラス容器。用時に開封して使用。開封時のガラス片混入、切創に注意。開封後は速やかに使用。
バイアル(粉末/液)ゴム栓。溶解・希釈して使用することが多い。溶解液の種類、溶解手順、泡立ち、溶解後安定性に注意。
プレフィルドシリンジあらかじめ注射器に充填。調製工程を減らせる。適応経路の確認(例:静注のみ等)。保管条件に注意。
輸液バッグ大容量。電解質・糖・アミノ酸・脂肪乳剤など。配合変化(白濁・析出)、ルート材質、遮光、滴下速度に注意。

注射剤取り扱い時の注意点(チェックリスト)

  • 副片・電子添文で確認:投与経路、用法用量、希釈液・最終濃度、投与速度、配合変化、遮光、フィルター、溶解後安定性
  • 調製前:包装破損、異物混入、変色・濁り、期限、保管条件(冷所・凍結禁止 等)
  • 調製時:無菌操作、薬剤取り違え防止(ダブルチェック)、必要な個人防護具(特に抗がん薬)
  • 投与時:患者確認、投与速度、ルート確保・閉塞、血管外漏出の早期発見
  • 投与後:残液管理、廃棄(感染性廃棄物/シャープス)、記録

看護のポイント

💡
  • 投与経路の確認(「静注可/点滴のみ/皮下のみ」など製剤ごとの差を要確認)
  • 投与速度の遵守:急速投与で副作用が増える薬がある(例:降圧、鎮静、抗菌薬など)
  • 血管外漏出の観察:疼痛、腫脹、発赤、逆血不良。抗がん薬など壊死性薬剤は特に注意
  • 感染予防:穿刺部の清潔、ルート管理、手指衛生
  • 安全な取り扱い:針刺し防止(リキャップ回避、シャープス容器の適切使用)
 

注射液と投与経路

  • 注射液は投与経路が決まっている
  • 投与部位ごとに、どのような薬液が投与できるか、特徴が異なる
例)
同じ「モルヒネ塩酸塩」の注射液でも、「硬膜外・くも膜下投与」(髄腔内投与)できる薬とできない薬がある
アンペック注
モルヒネ塩酸塩注射液
[皮] [静] [点滴] [硬膜] [くも膜]
モルヒネ塩酸塩注100mgシリンジ「テルモ」
本剤は、皮下又は静脈内注射にのみ使用すること(硬膜外及びくも膜下投与には使用しないこと)。
抗がん薬
 

注射剤取り扱い時の注意点

  • 確認事項:副片・電子添文を確認
  • 調製前の確認事項
    • 調製前に製剤に破損がないことを確認する
      • 包装に破損がないか
      • 脱酸素剤が色変していないか
        • 脱酸素剤
          14.1.4 インジケーター(酸素検知剤:ピンク色の錠剤)及び脱酸素剤は品質保持を目的に封入しているため、薬液に溶解しないこと。
          20.取扱い上の注意
          20.1 使用時までフィルム包装を開封しないこと。
          20.2 フィルム包装開封後は速やかに使用すること。
          20.3 フィルム包装が破損又は剥がれている時、インジケーター(酸素検知剤:ピンク色の錠剤)が青紫~青色に変色している時、フィルムの内面に水滴が認められる時は使用しないこと。
  • 溶解液
  • 投与速度
  • 管理医薬品