軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤

皮膚に直接塗布する外用製剤。基剤の違いにより、使用感・適用部位・薬物の吸収性が異なる。

作用部位による分類:局所作用と全身作用

外用製剤は作用部位により局所作用全身作用の2つに大別される。
局所作用全身作用
定義薬物が塗布部位(皮膚・粘膜)に留まって効果を発揮薬物が皮膚を透過し血中に移行して全身で効果を発揮
目的皮膚疾患の局所治療経皮的な薬物の全身投与
吸収表皮〜真皮に作用(全身循環への移行は少量)皮膚を透過 → 真皮の毛細血管から全身循環へ
代表的な薬剤ステロイド外用薬、抗真菌薬、NSAIDs外用薬、保湿剤 など女性ホルモン剤 など
剤形の例軟膏・クリーム・ゲル・ローションゲル剤
⚠️
注意:局所作用の薬でも全身性副作用は起こりうる
  • ステロイド外用薬の広範囲・長期使用 → 皮膚から吸収され副腎抑制などの全身性副作用
  • NSAIDs外用薬(ボルタレンゲルなど) → 少量でも吸収され喘息誘発の可能性(アスピリン喘息の患者では注意)
  • 局所作用が目的でも、塗布面積・使用期間・皮膚の状態(損傷皮膚は吸収↑)に注意する
ゲル剤の中には、全身作用を目的とするものもある。

4剤形の比較

軟膏剤クリーム剤ゲル剤ローション剤
基剤油脂性基剤(ワセリン等)水と油の乳化基剤(O/W型 or W/O型)水溶性高分子のゲル基剤液状基剤(水性・アルコール性)
外観・性状半透明〜白色、べたつきあり白色、伸びが良い透明〜半透明、さっぱり液体、さらさら
皮膚保護作用強い(油膜で覆う)中程度弱い弱い
保湿性高い中程度低い低い
皮膚への浸透性低い(緩やかに吸収)中程度〜高い高い高い
使用感べたつく比較的良好さっぱり・べたつかない最もさっぱり・速乾性
適した皮膚の状態乾燥・びらん・潰瘍(刺激が少ない)広範囲・体幹部・慢性期有毛部・頭皮被髪頭部に適する頭皮・広範囲・有毛部に最適
じくじくした患部使用可刺激あり(界面活性剤を含む)刺激あり刺激あり(アルコール含有の場合は特に強い)
洗い流しやすさ落ちにくい比較的落ちやすい落ちやすい非常に落ちやすい

各剤形の特徴

軟膏剤(Ointment)

  • 油脂性基剤(白色ワセリン・プラスチベースなど)が主体
  • 皮膚を油膜で覆い保護・保湿効果が高い
  • 刺激が最も少ない → びらん・潰瘍・乾燥した皮膚にも使用可能
  • べたつきがあり、衣服への付着が気になることがある
    • 落ちにくい→オリブ油などを使う場合もある (ガーゼに医療用オリブ油をつけて、拭き取る)
  • 代表例:ゲンタシン軟膏®リンデロン-V軟膏®アズノール軟膏®

クリーム剤(Cream)

  • 水と油を乳化剤(界面活性剤)で混合した基剤
    • O/W型(水中油型):水が多くさっぱり → 一般的なクリーム
    • W/O型(油中水型):油が多くしっとり → コールドクリームなど
  • 伸びが良く広範囲に塗布しやすい
  • 界面活性剤を含むため、びらん面には刺激になることがある
  • 代表例:リンデロン-Vクリーム®ヒルドイドクリーム®

ゲル剤(Gel)

  • 水溶性高分子のゲル基剤(カルボキシビニルポリマーなど)
  • 透明でべたつかず、使用感が良い
  • 有毛部(頭皮など)に適する → 毛髪への付着が少ない
  • 水溶性のため洗い流しやすい
  • 代表例:ボルタレンゲル®(ジクロフェナク)、ディフェリンゲル®(アダパレン)

ローション剤(Lotion)

  • 液状の外用製剤(水性・アルコール性など)
  • 全剤形中最もべたつきが少なく、速乾性がある
  • 頭皮・有毛部に最も適する → 液状のため毛髪の間にも行き渡りやすい
  • 広範囲にも塗布しやすい
  • アルコール含有製剤はびらん面・傷口に強い刺激がある
  • 代表例:リンデロン-Vローション®(ベタメタゾン吉草酸エステル)、ヒルドイドローション®(ヘパリン類似物質)、デルモベートスカルプローション®(クロベタゾールプロピオン酸エステル)

使い分けの原則

💡
基本的な考え方
  • 急性期・びらん面・乾燥肌 → 刺激の少ない軟膏剤を選択
  • 慢性期・広範囲 → 塗りやすいクリーム剤を選択
  • 有毛部・頭皮 → べたつかないローション剤またはゲル剤を選択

看護師向け:観察事項

  • 塗布量の目安:FTU(finger tip unit)= 人差し指の先端から第1関節まで押し出した量 ≒ 約0.5 g → 手のひら2枚分の面積に塗布
  • 塗布後の皮膚の状態変化(発赤・かゆみ・刺激感)を観察
  • ステロイド外用薬の場合:長期使用で皮膚萎縮・毛細血管拡張に注意
  • 患者の塗り方を確認(すり込みすぎない → 皮膚への刺激)

服薬指導のポイント

  • 塗る順番:保湿剤 → ステロイド外用薬(広く保湿した後に局所へ塗布)
  • 軟膏剤のべたつきが気になる場合 → クリーム剤への変更を医師に相談
  • 入浴後の塗布が効果的(皮膚が清潔で水分を含んでいる状態)
  • 使い残しの外用薬は変質の可能性があるため、長期保存を避ける