経皮吸収型製剤(TTS)
経皮吸収型製剤(TTS: Transdermal Therapeutic System)は、皮膚から薬物を吸収させ、全身循環へ送達する製剤。貼付剤(パッチ剤)として皮膚に貼り、薬物を持続的かつ一定速度で放出する。初回通過効果の回避や持続的な血中濃度維持が可能であり、服薬コンプライアンスの向上にも寄与する。
- 薬物は皮膚の角質層を透過して真皮の毛細血管に到達し、全身循環に入る
- 主な透過経路:
- 細胞間脂質経路(角質細胞間の脂質二重層を通過)← 主要経路
- 経付属器官経路(毛嚢・汗腺を通過)
- 薬物の皮膚透過性は分子量が小さく、脂溶性が高いほど良好
- 製剤にはマトリックス型(薬物を基剤に分散)とリザーバー型(薬物貯蔵層+放出制御膜)がある
メリット
- 初回通過効果を回避 → 肝代謝を受けにくく、経口投与より少量で効果が得られる場合がある
- 血中濃度の持続的維持 → 急激なピークや谷が少なく、副作用軽減・効果安定
- 服薬コンプライアンス向上 → 貼るだけで済み、嚥下困難な患者や高齢者にも適する
- 投与中止が容易 → 剥がせば薬物吸収を停止できる(ただし即座にゼロにはならない)
- 消化管障害の回避 → 胃腸への直接刺激がない
デメリット
- 皮膚刺激・接触性皮膚炎 → 発赤・かゆみ・かぶれが起こりうる
- 吸収速度の個人差 → 皮膚の状態(厚さ・含水量・温度・血流)により変動
- 適用可能な薬物が限定的 → 分子量が大きい薬物や水溶性の高い薬物は透過しにくい
- 効果発現が遅い → 経口剤と比較して最高血中濃度到達まで時間がかかる
- 貼付部位の制約 → 体毛が少なく平坦で、衣服との摩擦が少ない部位を選ぶ必要がある
| 薬物(一般名) | 製品例 | 適応・用途 |
|---|---|---|
| ツロブテロール | ホクナリンテープ® | 気管支喘息・COPD(β₂刺激薬) |
| フェンタニル | デュロテップMTパッチ®、フェントステープ® | がん性疼痛・慢性疼痛(オピオイド) |
| ニトログリセリン | ミリステープ® | 狭心症(硝酸薬) |
| エストラジオール | エストラーナテープ® | 更年期障害・骨粗鬆症(HRT) |
| リバスチグミン | イクセロンパッチ®、リバスタッチパッチ® | アルツハイマー型認知症(ChE阻害薬) |
| ビソプロロール | ビソノテープ® | 高血圧(β₁遮断薬) |
| ロチゴチン | ニュープロパッチ® | パーキンソン病(ドパミンアゴニスト) |
| ニコチン | ニコチネルTTS® | 禁煙補助 |
- 貼付部位の選択と管理 → 上腕・胸部・背部・腹部など、体毛が少なく清潔で乾燥した皮膚に貼付。毎回貼付部位を変える(皮膚障害予防)
- 皮膚症状の観察 → 発赤・かゆみ・水疱・かぶれの有無を確認。症状が持続する場合は医師へ報告
- 貼付方法の指導 → しわや折れなく密着させる。入浴後は十分に皮膚を乾かしてから貼付。剥がれた場合の対応(新しいものを貼る or 補強テープ)を説明
- 温度による吸収変動 → 入浴・電気毛布・カイロなどで貼付部位の温度が上昇すると吸収促進 → 過量投与のリスク。特にフェンタニルなどオピオイドでは重大な呼吸抑制の危険
- 剥がし忘れ・重複貼付の防止 → 特に高齢者・認知症患者では、古いパッチを剥がさずに新しいものを貼ってしまうリスクがある。貼付日時・部位の記録を指導
- 使用済み製剤の廃棄 → 残存薬物があるため、接着面を内側に折りたたんで廃棄。小児やペットの誤用防止
- MRI検査時の注意 → アルミニウム等の金属を含む製剤は、やけどの原因となるためMRI前に除去が必要
特別な例)
フェンタニル・・高温になると吸収が増大して、血中濃度↑↑のため副作用につながる
特に注意が必要な薬剤!
- 背部への貼付不可