吸入剤

吸入剤

① 概要

吸入剤とは、薬物を霧状・粉末状にして気道から肺に吸入させる製剤。主に気管支喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患で用いられる。局所(気道・肺)に直接届けられるため、少量で高い効果が期待でき、全身性副作用の軽減にもつながる。

② 吸入の仕組みと投与経路の比較

  • 吸入された薬物は、気道・肺(気管支〜肺胞)に沈着して局所作用を発揮する(製剤・薬効により一部は全身吸収される)
  • デバイスや吸入手技により、肺到達率が大きく変わる
吸入投与参考:経口投与参考:静脈投与
投与部位気道・肺(気管支〜肺胞)口腔→消化管静脈内
作用の種類主に局所作用(気道・肺に直接到達)全身作用全身作用
効果発現速い(数分〜十数分)30分〜2時間即時
全身への影響少ない(局所投与のため全身性副作用が軽減)大きい最も大きい
初回通過効果受けない受ける受けない
投与の簡便さ自己投与可能だが、正しい吸入手技の習得が必要最も簡便医療者による投与

③ メリットとデメリット

メリット

  • 気道に直接薬物を届ける → 少量で高い局所効果
  • 全身性副作用が少ない(経口投与に比べてステロイドの副作用が軽減)
  • 効果発現が速い → 発作時の緊急対応が可能
  • 初回通過効果を受けない
  • 自己管理が可能(携帯して日常的に使用)

デメリット

  • 正しい吸入手技が必要(不適切だと薬物が肺に到達しない)
  • 吸入力が弱い患者(高齢者・小児・重症患者)では効果が不十分なことがある
  • 口腔・咽頭に薬物が沈着 → 吸入ステロイドでは口腔カンジダ症・嗄声の原因
  • デバイスの種類が多く、操作方法が製品ごとに異なる

④ 吸入デバイス(剤形)による分類

種類略称特徴代表例
加圧噴霧式定量吸入器pMDIボタンを押すと噴射剤で薬液が霧状に噴出。吸気との同調が必要サルタノール®インヘラー、フルタイド®エアゾール
ドライパウダー吸入器DPI患者自身の吸気力で粉末薬剤を吸入。同調不要だが十分な吸気力が必要タービュヘイラー®(シムビコート®)、ディスカス®(アドエア®)、エリプタ®(レルベア®)
ソフトミスト吸入器SMI噴射剤を使わず霧状のミストを発生。噴霧速度が遅く、同調が容易レスピマット®(スピリーバ®レスピマット)
ネブライザー薬液を機械で霧化し、マスクやマウスピースで吸入。吸気力不要ベネトリン®吸入液、パルミコート®吸入液
  • pMDI (pressurized Metered-Dose Inhaler) 加圧噴霧式定量吸入器
  • DPI (Dry Powder Inhaler) ドライパウダー吸入器
  • SMI (Soft Mist Inhaler) ソフトミスト吸入器

⑤ 吸入薬の主な分類(例)

分類薬効代表薬特徴
吸入ステロイド(ICS)気道の炎症を抑制フルチカゾン(フルタイド®)、ブデソニド(パルミコート®)喘息の長期管理の基本薬(発作予防)
短時間作用型β₂刺激薬(SABA)気管支拡張(速効性)サルブタモール(サルタノール®)、プロカテロール(メプチン®)発作時のレスキュー薬
長時間作用型β₂刺激薬(LABA)気管支拡張(持続性)サルメテロール、ホルモテロール通常ICSと併用
長時間作用型抗コリン薬(LAMA)気管支拡張(持続性)チオトロピウム(スピリーバ®)COPDの第一選択
ICS/LABA配合剤抗炎症+気管支拡張アドエア®、シムビコート®、レルベア®喘息・COPDの長期管理に広く使用

⑥ 看護のポイント(観察事項)

  • 初回処方時に実際のデバイスを使って手技を指導し、定期的に手技を確認・再指導する
  • 吸入ステロイド使用後はうがい(または飲水):口腔カンジダ症・嗄声の予防
  • pMDI:使用前によく振り、吸入と噴霧のタイミングを合わせる(同調が難しければスペーサー併用)
  • DPI強く速く吸い込む(吸気力が重要)。湿気に弱いため保管に注意
  • 発作時用(SABA)と長期管理用(ICS等)の区別を患者が理解できるよう支援する
  • SABAの頻回使用はコントロール不良のサイン → 受診・治療見直しを促す