吸入剤
吸入剤とは、薬物を霧状・粉末状にして気道から肺に吸入させる製剤。主に気管支喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患で用いられる。局所(気道・肺)に直接届けられるため、少量で高い効果が期待でき、全身性副作用の軽減にもつながる。
- 吸入された薬物は、気道・肺(気管支〜肺胞)に沈着して局所作用を発揮する(製剤・薬効により一部は全身吸収される)
- デバイスや吸入手技により、肺到達率が大きく変わる
| 吸入投与 | 参考:経口投与 | 参考:静脈投与 | |
|---|---|---|---|
| 投与部位 | 気道・肺(気管支〜肺胞) | 口腔→消化管 | 静脈内 |
| 作用の種類 | 主に局所作用(気道・肺に直接到達) | 全身作用 | 全身作用 |
| 効果発現 | 速い(数分〜十数分) | 30分〜2時間 | 即時 |
| 全身への影響 | 少ない(局所投与のため全身性副作用が軽減) | 大きい | 最も大きい |
| 初回通過効果 | 受けない | 受ける | 受けない |
| 投与の簡便さ | 自己投与可能だが、正しい吸入手技の習得が必要 | 最も簡便 | 医療者による投与 |
メリット
- 気道に直接薬物を届ける → 少量で高い局所効果
- 全身性副作用が少ない(経口投与に比べてステロイドの副作用が軽減)
- 効果発現が速い → 発作時の緊急対応が可能
- 初回通過効果を受けない
- 自己管理が可能(携帯して日常的に使用)
デメリット
- 正しい吸入手技が必要(不適切だと薬物が肺に到達しない)
- 吸入力が弱い患者(高齢者・小児・重症患者)では効果が不十分なことがある
- 口腔・咽頭に薬物が沈着 → 吸入ステロイドでは口腔カンジダ症・嗄声の原因
- デバイスの種類が多く、操作方法が製品ごとに異なる
| 種類 | 略称 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 加圧噴霧式定量吸入器 | pMDI | ボタンを押すと噴射剤で薬液が霧状に噴出。吸気との同調が必要 | サルタノール®インヘラー、フルタイド®エアゾール |
| ドライパウダー吸入器 | DPI | 患者自身の吸気力で粉末薬剤を吸入。同調不要だが十分な吸気力が必要 | タービュヘイラー®(シムビコート®)、ディスカス®(アドエア®)、エリプタ®(レルベア®) |
| ソフトミスト吸入器 | SMI | 噴射剤を使わず霧状のミストを発生。噴霧速度が遅く、同調が容易 | レスピマット®(スピリーバ®レスピマット) |
| ネブライザー | — | 薬液を機械で霧化し、マスクやマウスピースで吸入。吸気力不要 | ベネトリン®吸入液、パルミコート®吸入液 |
- pMDI (pressurized Metered-Dose Inhaler) 加圧噴霧式定量吸入器
- DPI (Dry Powder Inhaler) ドライパウダー吸入器
- SMI (Soft Mist Inhaler) ソフトミスト吸入器
| 分類 | 薬効 | 代表薬 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 吸入ステロイド(ICS) | 気道の炎症を抑制 | フルチカゾン(フルタイド®)、ブデソニド(パルミコート®) | 喘息の長期管理の基本薬(発作予防) |
| 短時間作用型β₂刺激薬(SABA) | 気管支拡張(速効性) | サルブタモール(サルタノール®)、プロカテロール(メプチン®) | 発作時のレスキュー薬 |
| 長時間作用型β₂刺激薬(LABA) | 気管支拡張(持続性) | サルメテロール、ホルモテロール | 通常ICSと併用 |
| 長時間作用型抗コリン薬(LAMA) | 気管支拡張(持続性) | チオトロピウム(スピリーバ®) | COPDの第一選択 |
| ICS/LABA配合剤 | 抗炎症+気管支拡張 | アドエア®、シムビコート®、レルベア® | 喘息・COPDの長期管理に広く使用 |
- 初回処方時に実際のデバイスを使って手技を指導し、定期的に手技を確認・再指導する
- 吸入ステロイド使用後はうがい(または飲水):口腔カンジダ症・嗄声の予防
- pMDI:使用前によく振り、吸入と噴霧のタイミングを合わせる(同調が難しければスペーサー併用)
- DPI:強く速く吸い込む(吸気力が重要)。湿気に弱いため保管に注意
- 発作時用(SABA)と長期管理用(ICS等)の区別を患者が理解できるよう支援する
- SABAの頻回使用はコントロール不良のサイン → 受診・治療見直しを促す