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NK1 受容体遮断薬

NK1 受容体遮断薬

① 薬効群の概要

NK₁受容体遮断薬は、嘔吐中枢におけるサブスタンスP(SP)のNK₁受容体を遮断することで、強力な制吐作用を発揮する薬。特にがん化学療法(抗がん薬)による嘔吐(CINV)の予防に使用され、特に遅発性嘔吐(投与24時間以降)に対して優れた効果を示す。現在の制吐療法では、5-HT₃受容体遮断薬やデキサメタゾンとの3剤併用が標準となっている。
 

② 作用機序

がん化学療法による嘔吐(CINV)のメカニズム:
  • 抗がん薬投与 → 消化管粘膜のクロム親和性細胞からセロトニン(5-HT)が放出
  • 5-HTが求心性迷走神経の5-HT₃受容体を刺激 → 急性嘔吐(24時間以内)
  • 同時に、嘔吐中枢でサブスタンスPNK₁受容体を刺激 → 遅発性嘔吐(24時間以降)
 
NK₁受容体遮断薬の作用:
  1. 嘔吐中枢のNK₁受容体を遮断 → サブスタンスPによる嘔吐シグナルを抑制
  1. 特に遅発性嘔吐に対して優れた効果
  1. 急性嘔吐にも一定の効果あり(5-HT₃遮断薬との相加作用)
 
CINVの時相と制吐薬の対応:
嘔吐の時相時期主なメディエーター有効な制吐薬
急性嘔吐投与後24時間以内5-HT(セロトニン)5-HT₃受容体遮断薬(グラニセトロン等)
遅発性嘔吐投与後24時間~数日サブスタンスPNK₁受容体遮断薬(アプレピタント等)
予測性嘔吐投与前(心理的)不安・条件反射ベンゾジアゼピン系(ロラゼパム等)

③ 代表薬

代表薬(一般名)先発品特徴
アプレピタントイメンド®NK₁受容体遮断薬の第一世代。経口薬。高度催吐性リスクの抗がん薬(シスプラチン等)と併用。CYP3A4で代謝され、CYP3A4の基質・阻害薬でもある。デキサメタゾンの作用を減弱させる可能性がある(CYP2C9誘導)
ホスアプレピタントプロイメンド®アプレピタントのプロドラッグ。注射薬(点滴静注)。経口投与が困難な患者に使用
標準的な3剤併用レジメン(高度催吐性リスク):
  1. NK₁受容体遮断薬(アプレピタント) → 遅発性嘔吐に対応
  1. 5-HT₃受容体遮断薬(グラニセトロン、パロノセトロン等) → 急性嘔吐に対応
  1. デキサメタゾン(副腘皮質ステロイド) → 幅広い制吐効果

④ 看護のポイント(観察事項)

主な副作用:
  • 倔怠感・疲労 → 最も多い副作用
  • 食欲不振 → 制吐薬でありながら食欲に影響することがある
  • 便秘・下痢 → 消化器症状の観察
  • しゃっくり → まれに出現
  • 肝機能障害 → AST/ALTのモニタリング
服薬指導:
  • 抗がん薬投与1時間前に服用(アプレピタント)
  • Day 1は抗がん薬投与前、Day 2・3は朝服用(レジメンによって異なる)
  • 食事の有無にかかわらず服用可能
薬物相互作用:
  • アプレピタントはCYP3A4の基質かつ阻害薬 → 併用薬の確認が重要
  • ワルファリン:アプレピタントがCYP2C9を誘導 → ワルファリンの代謝促進 → 効果減弱の可能性 → PT-INRのモニタリング
  • デキサメタゾン:CYP3A4で代謝されるため、アプレピタントにより血中濃度が変動する可能性
患者支援:
  • がん化学療法中の患者は精神的にも輛い → 制吐薬の効果を伝えることで不安軽減につなげる
  • 嘔吐の程度とタイミングを記録 → 次サイクルの制吐薬調整に活用

制吐薬の中での位置づけ:

  • NK₁受容体遮断薬は、特に遅発性嘔吐に有効な制吐薬
  • 5-HT₃受容体遮断薬(急性嘔吐に有効)とは作用機序が異なる → 併用で相加効果
  • 高度催吐性の抗がん薬使用時には、NK₁遮断薬+5-HT₃遮断薬+デキサメタゾンの3剤併用が標準
  • 「嘔吐の時相(急性・遅発性・予測性)に応じた制吐薬の選択」が重要な考え方