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止瀉薬(止痢薬)

止瀉薬(止痢薬)

下痢を抑制・改善する薬物の総称

① 薬効群の概要

  • 止瀉薬は下痢の症状を緩和する対症療法薬の総称
  • 作用機序により、腸管運動抑制薬収斂薬吸着薬殺菌薬 などに分類される
  • 下痢の原因を鑑別することが最優先であり、安易な止瀉薬の使用は禁物
  • 特に感染性腸炎(細菌性・ウイルス性)では、止瀉薬の使用が症状を悪化させる場合がある
🚨
最重要原則:「止めてよい下痢」と「止めてはいけない下痢」がある
  • 血便・高熱・粘液便 を伴う下痢 → 感染性が疑われる → 安易に止めない
  • 排菌・毒素排出を抑制 → 感染の遷延・重症化のリスク

② 分類と代表薬

腸管運動抑制薬

一般名先発品名作用機序特徴・注意点
ロペラミドロペミン®腸管壁の末梢μオピオイド受容体に作用 → 蠕動↓+水分吸収↑+括約筋緊張↑BBBを通過しにくく中枢作用はほぼなし(鎮痛・依存性なし)。感染性腸炎には禁忌。イレウスに注意

セロトニン(5-HT₃)受容体拮抗薬

一般名先発品名作用機序特徴・注意点
ラモセトロンイリボー®5-HT₃受容体拮抗 → 腸管蠕動↓+内臓知覚過敏↓ → 下痢+腹痛を改善IBS-D(下痢型過敏性腸症候群)に第一選択。男女で用量が異なる。便秘に注意

収斂薬(しゅうれんやく)

一般名先発品名作用機序特徴・注意点
タンニン酸アルブミンタンナルビン®腸管粘膜のタンパク質と結合 → 粘膜表面に保護膜 → 炎症抑制・水分分泌↓牛乳アレルギー患者には禁忌(アルブミンはカゼインから精製)。作用は穏やか
次硝酸ビスマス次硝酸ビスマス収斂作用により腸管粘膜を保護長期使用でビスマス蓄積のリスク。便が黒色化する(無害)

吸着薬

一般名先発品名作用機序特徴・注意点
天然ケイ酸アルミニウムアドソルビン®腸管内の毒素・過剰水分・ガスを吸着 → 下痢を緩和他の薬剤の吸収も阻害する可能性 → 他剤と2時間以上あけて服用

腸内殺菌薬

一般名先発品名作用機序特徴・注意点
ベルベリン(塩化ベルベリン)フェロベリン®(ゲンノショウコエキス配合)、キョウベリン® など腸内の有害細菌に対する殺菌・静菌作用(イソキノリンアルカロイド)。腸管蠕動抑制作用・腸管内水分分泌抑制作用も併せもつ黄連(オウレン)・黄柏(オウバク)由来の生薬成分。腸管からほとんど吸収されず局所で作用 → 全身性副作用が少ない。感染性腸炎でも使用可能(排菌を妨げにくい)。OTC薬にも広く配合(正露丸糖衣A® など)

消化管運動調律薬

一般名先発品名作用機序特徴・注意点
トリメブチンセレキノン®オピオイド受容体に作用し、腸管運動を双方向に調節(亢進→抑制、低下→促進)IBS全病型に使用可能。副作用が少なく長期使用しやすい

便性状調整薬

一般名先発品名作用機序特徴・注意点
ポリカルボフィルカルシウムコロネル®/ポリフル®高分子重合体 → 腸管内で水分を吸収・保持 → 下痢時は便を固め、便秘時は便を軟化IBS全病型の第一選択。十分な水分とともに服用。制酸剤との併用で効果↓

③ 止瀉薬の使い分け

下痢の原因第一選択注意点
急性の非感染性下痢(ストレス・冷え・食事性など)ロペラミド(頓用)、収斂薬、吸着薬原因が明らかで短期間であればロペラミドが有効
IBS-D(下痢型)ラモセトロン(イリボー)+ポリカルボフィルCaロペラミドは急性増悪時の頓用にとどめる。腹痛にはラモセトロンが有効
感染性腸炎(細菌性・ウイルス性)止瀉薬は原則禁忌 → 補液+原因菌に応じた抗菌薬排菌を妨げ症状悪化。特にO157・赤痢・CDIでは絶対禁忌
抗菌薬関連下痢(CDI)ロペラミド禁忌 → 原因抗菌薬の中止+バンコマイシン内服等偽膜性大腸炎・中毒性巨大結腸のリスク
化学療法誘発性下痢ロペラミド(高用量療法)イリノテカンの遅発性下痢では早期介入が重要

④ 副作用の共通点

  • 便秘(効きすぎ → 用量調整が必要)
  • 腹部膨満感
  • イレウス(特にロペラミドで注意 → 蠕動抑制が過度 → 麻痺性イレウス)
  • 脱水の見逃し:止瀉薬はあくまで対症療法 → 補液・経口補水が優先
🩺

⑤ 看護師の観察ポイント

📋 投与前の確認(最重要)
  • 下痢の原因が感染性でないことを確認(血便・発熱・粘液便・抗菌薬使用後の下痢 → 要注意)
  • 止めてよい下痢か、止めてはいけない下痢か」を医師と共有
  • 便培養・CDトキシン検査の結果を確認

🩸 排便状況のモニタリング
  • 排便の回数・性状・量を毎日確認
  • 便秘への転換に注意(止めすぎ → 用量調整が必要)
  • 48時間使用しても改善なし → 効果なしと判断 → 医師に報告

⚡ 危険徴候の観察
  • 腹部膨満の増悪・腸蠕動音の消失イレウスの可能性 → 直ちに報告
  • 血便の出現・発熱の悪化 → 感染性腸炎の見逃し → 止瀉薬中止を検討

💧 脱水の評価(並行して最重要)
  • 下痢による脱水は止瀉薬だけでは解決しない → 補液・経口補水が優先
  • バイタルサイン・尿量・口腔粘膜の乾燥・皮膚ツルゴールを確認
  • 特に高齢者・小児は脱水が進行しやすい → 早期からの補液介入

💬 患者教育のポイント
  • 血便・高熱を伴う下痢では自己判断で止瀉薬を使用しない
  • 市販薬(ストッパ®等)でも安易に使用しない → 受診を勧める
  • 症状が改善したら速やかに服用を中止する
  • 水分・電解質の補充(経口補水液等)が最も重要