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下剤

下剤

下剤とは、排便を促進する薬物の総称。便秘の種類や病態に応じて、定時薬(ベースとして毎日使用)レスキュー薬(排便がないときに頓用)を組み合わせて使用する。

定時薬とレスキュー薬の考え方

💡
定時薬=「便を出しやすい状態をつくる」→ 毎日継続して服用し、便の性状を整える
レスキュー薬=「出ないときに出す」→ 排便がない日に頓用で追加する
🕐 定時薬(ベース)🆘 レスキュー薬(頓用)
目的便を軟らかくし、排便しやすい状態を維持排便がないときに腸を刺激して排便を誘発
使い方毎日定時に服用(用量調整あり)○日排便がなければ使用(医師指示による)
作用緩やかに便の水分量・体積を増やす腸蠕動を直接刺激して排便を促す
代表薬酸化マグネシウム、ルビプロストン、リナクロチド、ラクツロース 等センノシド、ピコスルファート、ビサコジル坐剤、グリセリン浣腸 等
耐性起こりにくい(長期使用可能)連用で耐性・習慣性のリスクあり

下剤の分類と代表薬

🕐 定時薬として使う下剤

分類代表薬作用機序特徴・注意点
塩類下剤(浸透圧性)酸化マグネシウム(マグミット®)腸管内の浸透圧↑ → 水分を引き込み便を軟化安価で汎用。腎機能低下例では高Mg血症に注意。制酸作用もあり
糖類下剤(浸透圧性)ラクツロース(モニラック®)腸内で分解されず浸透圧で水分保持。腸内細菌による有機酸産生→腸蠕動↑肝性脳症にも使用(NH₃↓)。小児にも安全
上皮機能変容薬ルビプロストン(アミティーザ®)小腸のClC-2チャネル活性化 → 腸管内への水分分泌↑慢性便秘症。妊婦禁忌。悪心が出やすい(食後服用で軽減)
グアニル酸シクラーゼC受容体作動薬リナクロチド(リンゼス®)GC-C受容体活性化 → cGMP↑ → 腸管内への水分分泌↑+痛覚過敏↓便秘型IBS。腹痛改善効果あり。食前投与
胆汁酸トランスポーター阻害薬エロビキシバット(グーフィス®)回腸での胆汁酸再吸収↓ → 大腸に胆汁酸流入↑ → 水分分泌↑+蠕動↑食前投与(胆汁酸分泌のタイミングに合わせる)。腹痛・下痢に注意
膨張性下剤カルメロース(バルコーゼ®)水分を吸収して膨張 → 便の体積↑ → 腸管を機械的に刺激十分な水分摂取が必要。効果発現まで数日かかる。最も生理的
ポリエチレングリコール(PEG)マクロゴール4000(モビコール®)浸透圧性。PEGが腸管内で水分を保持し便を軟化小児にも使用可。電解質配合で安全性が高い。水に溶かして服用

🆘 レスキュー薬として使う下剤

分類代表薬作用機序特徴・注意点
アントラキノン系(大腸刺激性)センノシド(プルゼニド®)、センナ大腸の腸内細菌で活性体に変換 → アウエルバッハ神経叢刺激 → 蠕動↑効果発現:8〜12時間後(就寝前服用→朝排便)。連用で耐性大腸メラノーシス
ジフェニルメタン系(大腸刺激性)ピコスルファート(ラキソベロン®)大腸で活性化 → 蠕動↑+水分吸収↓液剤は滴数で用量調整しやすい。効果発現:7〜12時間後。術前・検査前にも使用
ビサコジル坐剤(直腸刺激性)ビサコジル(テレミンソフト®坐薬)直腸粘膜を直接刺激 → 排便反射を誘発効果発現:15〜60分。速効性。経口摂取困難な患者にも使用可
浣腸グリセリン浣腸直腸を機械的に刺激+浸透圧で水分を引き込み排便誘発効果発現:数分〜15分。最も速効。直腸穿孔に注意(挿入は5〜6cm、左側臥位)
炭酸水素ナトリウム坐剤新レシカルボン®坐剤直腸内でCO₂を発生 → 腸管を伸展刺激 → 排便反射刺激が穏やか。高齢者や術後に使いやすい

刺激性下剤(センノシド/ピコスルファート等)の「適否」チェック

適(使ってよい・むしろ必要になりやすい状況)
  • レスキュー薬として:浸透圧性下剤だけで排便が得られないとき
  • オピオイド誘発性便秘(OIC):浸透圧性だけでは不十分になりやすく、刺激性下剤の併用(定時化)を検討
  • ベッド上安静・活動性低下で蠕動が落ちているとき(医師指示のもと)
否(避ける/慎重にする状況)
  • 原因不明の腹痛、腸閉塞疑い、急性腹症の疑い
  • 連用(漫然投与):耐性・習慣性、腹痛、下痢、電解質異常(低Kなど)のリスク
  • 脱水リスクが高い(高齢者、利尿薬併用、発熱・摂取不良など)では下痢→脱水に注意
  • 刺激で腹痛が強く出る体質/痙攣性便秘が疑われる場合は用量調整・薬剤変更を検討

オピオイド誘発性便秘(OIC)への対応

🚨
オピオイド使用時はほぼ全例で便秘が発生し、耐性が形成されないため、オピオイド開始と同時に下剤を開始する。
役割薬剤ポイント
定時薬酸化マグネシウム + センノシド(併用が基本)OICでは浸透圧性だけでは不十分なことが多く、刺激性下剤も定時で使用する
レスキューピコスルファート液(追加)、ビサコジル坐剤、グリセリン浣腸3日排便がなければレスキュー使用
末梢性μ受容体拮抗薬 末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(PAMORA) ナルデメジン(スインプロイク®)オピオイドの鎮痛効果を減弱させずに腸管のμ受容体を選択的に拮抗 → OICに特異的
OICでは一般的な便秘と異なり、刺激性下剤(センノシド等)も定時薬として併用することがポイント。
 
特に注意すべき状況

① 便塞栓(fecal impaction)

便秘が長期間続くと、
直腸に巨大な硬便が詰まる。
その状態でセンノシドを使うと、
腸は押し出そうと激しく収縮するが、
出口が塞がれているため
  • 強い腹痛
  • 吐き気
  • 下痢様便漏れ
が起こる。
高齢者では非常に多い。
[CHECK]便塊を触知するか?

② 麻痺性イレウス

オピオイドは
  • 腸蠕動低下
  • 腸内容物停滞
を起こす。
もし
  • 腹部膨満が強い
  • 嘔吐
  • 排ガス停止
があれば、
刺激性下剤を追加する前に医師へ報告が必要である。

③ オピオイド誘発性便秘(OIC)

OICでは
「腸が動いていない」
ことが本質である。
センノシドは腸を無理やり動かすため、
腹痛だけ増えて効果が乏しいこともある。

看護師の観察ポイント

📋
排便アセスメント(毎日確認)
  • 排便の有無・回数・量
  • 便の性状(ブリストルスケールで評価:目標はType 3〜5)
  • 腹部症状:膨満感・腹痛・悪心・腸蠕動音
  • 患者の自覚症状(残便感・排便困難感)
薬剤管理
  • 定時薬の服用タイミング(食前指定のものに注意:リンゼス®、グーフィス®)
  • レスキュー薬の使用基準を医師指示で確認(例:「2日排便なければセンノシド使用」)
  • ピコスルファート液は滴数の指示を正確に(10滴=0.5mL)
  • 酸化Mg服用中の腎機能チェック(高Mg血症:嘔気・徐脈・筋力低下)
非薬物療法との併用
  • 水分摂取の促進(1日1,000〜1,500mL以上)
  • 離床・腹部マッサージ(時計回り)の促し
  • トイレ環境の整備(前傾姿勢、足台の使用)