性差

なぜ性差が重要なのか

同じ医薬品でも、生物学的な性差により、薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄)や薬力学(薬の効き方・副作用の出方)に男女差が生じることがある。
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日本で使用可能な医療用医薬品 1,679成分のうち、添付文書に性差情報が記載されているのは 約4.5% にとどまる。

薬物動態における性差の主な要因

要因男女差の傾向
体重・体脂肪率女性は体脂肪率が高く、脂溶性薬物が蓄積しやすい
体水分量女性は体水分量が少なく、水溶性薬物の血中濃度が高くなりやすい
代謝酵素(CYP等)一部のCYP活性に性差あり(例:CYP3A4は女性で活性が高い傾向)
腎クリアランス女性で低い傾向があり、薬物の消失が遅くなる場合がある
性ホルモンの影響エストロゲン・プロゲステロンが薬物動態・薬力学に影響

副作用における性差

医薬品/薬効分類副作用の性差機序
抗菌薬、抗アレルギー薬、向精神薬、抗不整脈薬女性で薬剤性不整脈の発生率と重症度が高い思春期以降の女性で、性ホルモンの影響によりQT延長を来しやすい
抗凝固薬(ワルファリン、ヘパリン)女性で効果は強いが、出血傾向も大きい女性で体重あたり投与量が多い
アセトアミノフェン女性で肝障害が多い女性で代謝酵素が飽和しやすい
ゾルピデム女性で翌朝までの持ち越し作用が強い女性でクリアランスが低い
ACE阻害薬女性で空咳・血管浮腫の頻度が高い女性で咳反射の感度が高い
DHP系Ca拮抗薬女性でふらつき・顔面紅潮・浮腫などの血管拡張性副作用が多い内皮由来過分極因子を介した血管拡張作用が若年女性で大きい
フルオロウラシル女性で腫瘍抑制効果が強いが、毒性も強い女性ではDPD活性が低い
ピオグリタゾン女性で作用は強いが、浮腫も多い女性ではPPARγ発現量が多い

性別により用量が異なる医薬品

ピオグリタゾン(アクトス)

  • 浮腫が比較的女性に多く報告されている
  • 女性に投与する場合は、1日1回 15mg から投与を開始することが望ましい(男性より少ない用量から開始)

ラモセトロン(イリボー)

  • 男性:5μg を1日1回(最高 10μg/日)
  • 女性2.5μg を1日1回(最高 5μg/日)
  • 女性では便秘の副作用が起こりやすく、同じ用量での血中濃度が男性の約2倍になる

ヒドロキシクロロキン(プラケニル)

  • 理想体重に基づく用量設定に性別で異なる係数を使用
    • 女性:(身長 cm − 100)× 0.85
    • 男性:(身長 cm − 100)× 0.9

デスモプレシン(ミニリンメルト)

  • 夜間多尿による夜間頻尿の効能は男性のみに適応
  • 女性では有効性の証明が不十分と判断されたため

効能効果に性別が明記されている医薬品の例

医薬品名(一般名)効能効果
ザガーロ(デュタステリド)男性における男性型脱毛症
プロペシア(フィナステリド)男性における男性型脱毛症の進行遅延
ミニリンメルトOD錠 25μg・50μg(デスモプレシン)男性における夜間多尿による夜間頻尿
加味逍遙散体質虚弱な婦人の冷え症・月経不順・更年期障害等

看護における注意点

⚠️
  • 薬歴管理・初回アンケートで性別の確認が重要
  • 性別によって用量が異なる薬剤では、処方量の妥当性を確認する
  • 女性患者では、浮腫・便秘・QT延長・出血傾向などの副作用モニタリングに特に注意が必要
  • 妊娠可能年齢の女性では、催奇形性のある薬剤(フィナステリド等)の取り扱いにも注意

与薬時の注意点:フィナステリド

服薬介助者が直接触れないように注意書きがある薬剤
⚠️
  • 妊娠可能年齢の女性では、催奇形性のある薬剤(フィナステリド等)の取り扱いにも注意
  • フィナステリド(プロペシア)は経皮吸収されるため、破損・粉砕した錠剤に素手で触れてはならない
  • 男子胎児の外性器の発育に影響を及ぼすおそれがあるため、妊婦または妊娠の可能性のある女性は特に注意
  • 錠剤はコーティングされており、割れていなければ通常の取り扱いでは問題ない
  • 取り扱い後は必ず手を洗うこと
 

参考

  • 上野光一 他:日本臨牀, 81:1000-1005, 2023
  • 一宮市立市民病院 DI News 2024年4月号「性差医学・医療と医薬品について」
  • 日本性差医学・医療学会誌