去痰薬
去痰薬は、気道内の分泌物(痰)の性状を変えたり、線毛運動を促進して、痰を出しやすくする(喀痰喀出を促進する)薬。主に湿性咳嗽(痰がらみの咳)で、症状緩和のために用いる。
- 痰が多い・粘いと、気道のクリアランス(線毛運動による排出)が低下し、咳が長引いたり感染が遷延しやすい。
- 去痰薬は、以下のいずれか(または複数)で喀痰排出を助ける。
- 粘液溶解:痰の粘稠性を下げる
- 粘液修復・分泌調整:痰の「量」と「粘り」を整える
- 気道分泌促進/線毛運動促進:痰を動かしやすくする
1. 気道粘液修復薬
気道粘膜の杯細胞の過形成を抑制し、粘液の組成を正常化することで痰の性状を改善する。
| 一般名 | 先発品例 | 作用機序・特徴 |
|---|---|---|
| カルボシステイン | ムコダイン® | 粘液構成成分(シアル酸/フコース比)を正常化。杯細胞の過形成を抑制し、粘液の粘稠度を低下させる。滲出性中耳炎・慢性副鼻腔炎にも適応あり |
| フドステイン | クリアナール®/スペリア® | 杯細胞の過形成抑制に加え、ムチンの過剰分泌を抑制。COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪抑制にも期待 |
カルボシステインは痰の質を変える薬。粘液の組成を正常化し、サラサラにして出しやすくするイメージ。
カルボシステインは滲出性中耳炎・副鼻腔炎にも使われるため、耳鼻科領域での処方にも注意
2. 気道粘液分泌促進薬(気道潤滑薬)
気道の漿液性分泌を促進し、粘液層の潤滑性を高めることで痰の喀出を容易にする。
| 一般名 | 先発品例 | 作用機序・特徴 |
|---|---|---|
| アンブロキソール | ムコソルバン® | 肺サーファクタント分泌促進・気道液の分泌増加・線毛運動亢進。ブロムヘキシンの活性代謝物。経口・吸入・注射剤あり |
| ブロムヘキシン | ビソルボン® | 気道腺からの漿液性分泌を促進・粘液溶解作用。体内でアンブロキソールに代謝される(プロドラッグ的) |
アンブロキソールは肺サーファクタント(肺表面活性物質)の分泌を促すのが大きな特徴。痰を滑りやすくして排出を助ける。
3. 粘液溶解薬
痰の中のムチンや膿のジスルフィド結合(S-S結合)を切断して、痰の粘稠度を直接低下させる。
| 一般名 | 先発品例 | 作用機序・特徴 |
|---|---|---|
| アセチルシステイン | ムコフィリン® | SH基(チオール基)がS-S結合を開裂し、粘液を低粘稠化。吸入で使用。アセトアミノフェン中毒の解毒薬としても使用 |
| エチルシステイン | チスタニン® | 同様にS-S結合を開裂。経口投与 |
アセチルシステインは痰のS-S結合をハサミで切るイメージ。粘り気の原因を直接分解する。
まとめ
| 分類 | 代表薬 | 作用の特徴 | キーワード |
|---|---|---|---|
| 気道粘液修復薬 | カルボシステイン、フドステイン | 粘液の組成を正常化 | シアル酸/フコース比正常化、杯細胞過形成抑制 |
| 気道分泌促進薬 | アンブロキソール、ブロムヘキシン | 漿液性分泌↑、サーファクタント↑ | 肺サーファクタント、線毛運動亢進 |
| 粘液溶解薬 | アセチルシステイン、エチルシステイン | S-S結合を切断し粘稠度↓ | SH基、ジスルフィド結合開裂 |
- 咳のタイプ確認:湿性咳嗽(痰あり)か/乾性咳嗽(痰なし)か
- 痰の観察:量、粘稠度、色(黄緑・悪臭)、血痰の有無(感染・出血の示唆)
- 水分摂取・加湿:去痰は薬だけでなく、補水や加湿で効果が出やすい
- 鎮咳薬との使い分け
- 湿性咳嗽では、咳反射を抑えすぎると痰が出にくくなることがある(必要時のみ短期間)
- 服薬状況の確認
- 痰が改善しない/増悪する場合は原因疾患(喘息、COPD、肺炎、後鼻漏、GERDなど)の再評価が必要
- 受診勧奨の目安:呼吸困難、喘鳴、高熱、血痰、胸痛、咳が長引く(例:8週以上)
- 排痰援助:体位ドレナージ・ハフィングなどの排痰法を併用すると効果的
- アセチルシステイン吸入後は口腔内の不快感が出ることがある → うがいの指導