アプレピタント
使用時の注意
⚠️ 作用機序の特徴
- 延髄の嘔吐中枢およびCTZのニューロキニンNK₁受容体を遮断
- 抗がん剤により放出されるサブスタンスPがNK₁受容体を刺激→嘔吐を引き起こす経路をブロック
- 特に遅延性嘔吐(抗がん剤投与24時間以降)に有効 → 5-HT₃拮抗薬だけでは抑えきれない嘔吐をカバー
- D₂受容体やセロトニン受容体にはほとんど作用しない → 錐体外路症状のリスクが低い
💡 CINVの3剤併用療法での位置づけ
- 高度催吐性リスク(HEC)の抗がん剤に対して、標準的な制吐療法は3剤併用:
- NK₁受容体拮抗薬(アプレピタント)→ 主に遅延性嘔吐
- 5-HT₃受容体拮抗薬(パロノセトロン、グラニセトロン等)→ 主に急性嘔吐
- デキサメタゾン(副腘皮質ステロイド)→ 両方の嘔吐を補助
- 4剤目としてオランザピン(非定型抗精神病薬、D₂+5-HT₂拮抗)を追加するレジメンもある(→ 糖尿病患者は禁忌)
🚨 CYP3A4による相互作用(最重要)
- アプレピタントは CYP3A4の基質であり、かつ阻害薬でもある
- CYP3A4で代謝される薬剤の血中濃度↑:デキサメタゾン、ベンゾジアゼピン系、イリノテカン等
- CYP3A4誘導薬(リファンピシン、フェニトイン等)との併用でアプレピタントの効果↓
- CYP2C9も阻害 → ワルファリンのINR上昇に注意(出血リスク↑)
- デキサメタゾンの作用増強 → 併用時はデキサメタゾンの用量を半量に減量することが多い
⚠️ 主な副作用
- しゃっくり(最も多い)
- 便秘・食欲不振
- 倒怠感・頭痛
- 重大な副作用はまれだが、アナフィラキシー、スティーブンス・ジョンソン症候群の報告がある
🚫 禁忌
- ピモジド(オーラップ)との併用禁忌(CYP3A4阻害によりピモジドの血中濃度↑ → QT延長・不整脈リスク)
- 本剤の成分に対し過敏症の既往のある患者
看護師向け:観察事項
💧 制吐効果の観察
- CINVの種類を意識:急性(24時間以内)と遅延性(24時間以降)の嘔吐を区別して観察
- 悪心・嘔吐の頻度・程度・タイミングを記録
- 予期性嘔吐(抵がん剤投与前から出現)にも注意
💊 服薬指導のポイント
- 1日目:125mg、2・3日目:80mg → 用量が日によって異なることを確認
- 抗がん剤投与の 1時間前 に服用(1日目)、2・3日目は午前中に服用
- 食事の有無にかかわらず服用可能
- 嘔吐が強く経口困難な場合 → ホスアプレピタント(プロイメンド)の点滴を検討
⚠️ 相互作用の確認(極めて重要)
- ワルファリン併用患者 → INRのモニタリング強化(アプレピタント投与期間中+投与後2週間)
- デキサメタゾンの用量 → 併用時は半量に減量されているか確認
- CYP3A4に関わる併用薬 → 免疫抑制薬、抗真菌薬、ベンゾジアゼピン系などに注意
- ピモジド(オーラップ)との併用は禁忌
🤢 副作用の観察
- しゃっくり:最も多い副作用。脱水につながらないか水分出納を確認
- 便秘:排便状況の確認、必要時は下剤の使用を検討
- 食欲不振・倒怠感 → 抗がん剤の副作用との鑑別が必要
- アナフィラキシーの徴候:皮疑、呼吸困難、血圧低下など(稀だが重大)
📝 CINV制吐療法の全体像
- アプレピタントは単剤では使用しない → 5-HT₃拮抗薬、デキサメタゾンとの3剤併用が基本
- 制吐療法のレジメンは抗がん剤の催吐性リスク分類(HEC / MEC / LEC / minimal)によって決まる
- HEC(シスプラチン等)にはNK₁拮抗薬が必須、MECでは症例により追加