デキサメタゾン
デキサメタゾンは、副腘皮質ステロイド(合成糖質コルチコイド)であり、本来は抗炎症・免疫抑制薬として用いられるが、がん化学療法による嘔吐(CINV)の予防においても重要な制吐薬として位置づけられている。単独でも制吐効果を持つが、特に5-HT₃受容体遮断薬やNK₁受容体遮断薬との併用で制吐効果を増強する。高度催吐性リスクの抗がん薬使用時には3剤併用の一角として欠かせない存在。
制吐作用のメカニズム(完全には解明されていない):
- プロスタグランジン(PG)合成抑制 → PGは消化管粘膜でセロトニン放出を促進するため、PG抑制により5-HTの放出が減少
- 抗炎症作用 → 抗がん薬による消化管粘膜の炎症を抑制
- BBB透過性 → 中枢の嘔吐中枢にも作用する可能性
- 内因性エンドルフィン放出促進?(仮説) → 気分改善・食欲促進による間接的制吐効果
まとめ:
- 単一の受容体遮断ではなく、多面的な機序で制吐効果を発揮
- そのため、他の制吐薬(5-HT₃遮断薬、NK₁遮断薬)との併用で相加・相乗効果を発掮
| 一般名 | 先発品 | 剃形 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| デキサメタゾン | デカドロン® | 経口・注射 | 長時間作用型ステロイド。半減期約36~54時間。鉱質コルチコイド作用が最も少ないステロイドのひとつ |
標準的な3剤併用レジメン(高度催吐性リスク):
| 薬剤 | 主なターゲット | 役割 |
|---|---|---|
| NK₁受容体遮断薬(アプレピタント) | サブスタンスP / NK₁受容体 | 特に遅発性嘔吐を抑制 |
| 5-HT₃受容体遮断薬(グラニセトロン等) | セロトニン / 5-HT₃受容体 | 特に急性嘔吐を抑制 |
| デキサメタゾン | 多面的(PG抑制、抗炎症等) | 他の2剤の制吐効果を増強 + 単独でも制吐効果 |
催吐性リスク別の制吐薬選択:
- 高度催吐性(シスプラチン等):NK₁遮断薬 + 5-HT₃遮断薬 + デキサメタゾン(3剤)
- 中等度催吐性(カルボプラチン等):5-HT₃遮断薬 + デキサメタゾン(2剤)
- 軽度催吐性:デキサメタゾン単独または必要時のみ
主な副作用(ステロイド共通):
- 高血糖 → 糖尿病患者は特に注意。血糖値のモニタリング
- 消化性潰瘍 → PG合成抑制により胃粘膜保護が低下。NSAIDs併用でリスク増大
- 免疫抑制 → 感染症のリスク増大。発熱・炎症反応がマスクされることがある
- 不眠・興奮 → 夜間投与を避け、午前中の投与が望ましい
- 浮腫・体重増加 → ナトリウム貯留作用(デキサメタゾンは少ない方だが)
- 骨粗髆症 → 長期使用時に注意(CINV予防では短期のためリスクは低い)
服薬指導:
- CINV予防では短期間(数日間)の使用 → 長期副作用のリスクは低い
- Day 1:抗がん薬投与前に投与、Day 2~4:継続投与(レジメンにより異なる)
- アプレピタント併用時は、CYP3A4阻害によりデキサメタゾンの血中濃度が上昇 → 用量調整が必要(通常の半量に減量することが多い)
その他の観察:
- がん患者ではステロイドによる食欲促進・気分改善効果があり、QOL向上にも寄与
- 連用後の急な中止は副腘不全のリスク → CINV予防の短期使用では通常問題ないが、注意は必要